3年で富士山 は噴火する そのときに備えたほうがいい

2012年09月01日(土) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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「火山灰が降っても、携帯電話は使えるんじゃないかと思っている人がいるかもしれませんが、それは間違いです。携帯電話の中継システムは、高層ビルなどに備え付けられていますが、この中継を行う機器に濡れた火山灰が付着すれば、システムが機能不全を起こして携帯電話も使用不能になってしまいます」

 先述した'04年の損害推計は、まだネットや携帯が爆発的に普及する前に作成されたものだ。もしもいま、電子機器を含めて損害額を算出すれば、その数字は2兆4000億円の何倍、あるいは何十倍にも膨らむだろう。

 ただ、それだけで済むならむしろ被害は少ないほうだ。降灰によって、首都圏が大停電に見舞われる可能性があるからだ。空気中の水を吸った火山灰は電気を通してしまい、電線に降れば高圧線が漏電・ショートして、停電を起こしてしまうのだ。実際、桜島の噴火ではたった1ʘの降灰で停電が起こった。この停電を未然に防ぐのは、ほぼ不可能とされている。

 また、産業技術総合研究所の山元孝広主幹研究員は、高圧線のショートよりも、火山灰によってエネルギー供給源そのものが停止してしまう可能性を危惧している。

「もっとも恐ろしい事態が、東京湾周辺に位置する火力発電所が、降灰によって停止してしまうことです。ガスタービン式の火力発電は、外からの空気を取り込むことで燃料を燃やして発電するのですが、取り込んだ空気に火山灰が混じっていると、タービンの中に灰が入り込んで、タービンに故障が生じてしまう。ジェット機が飛べなくなるのと同じ原理です」

 東日本大震災以降、東京電力管内の原発はすべて停止しており、電力供給のほとんどを火力発電が担っている。原発事故のリスクは格段に低下したが、反対に噴火による停電リスクが急激に高まった、と山元氏は指摘する。

「火力発電が停止すれば、それに代わってエネルギーを供給する手段がない。火山灰を前に為す術なし、となるのです」(山元氏)

 首都圏で大停電が起これば、その被害は「甚大」の一言ではすまされない。未曾有のパニックが首都圏で発生することになるだろう。

「まず、金融機関のATMが使えなくなりますので、企業はもちろん、一般市民の経済活動も停滞してしまいます。停電によって証券取引も不可能になり、日本経済が大打撃を受けることになる。たったの一秒で大きく値が動く現在の証券市場において、何日も取引が不可能な状況が続けば、どれだけの損害となるかわからない」(前出・高橋教授)

 停電に備えて各金融機関は非常用の電源を用意しているが、「非常用電源が持つのはせいぜい数時間。噴火による停電が起これば、その復旧には1ヵ月、少なくとも一週間はかかるため、ほとんど意味をなさない」と高橋教授は続ける。

「金融機関だけをとっても、これほどの被害が予測されるのです。防衛の問題も深刻ですし、身近な問題として病院などでは手術できなくなり、生命維持装置も停止する。信号も動かないので、交通も大混乱となります。降灰が予想される地域に首都機能が集中している日本は、驚くほど噴火や災害に弱いということを再度認識しなければ、本当の危機は見えてきません」

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