無策の日銀「金融政策決定会合」直後に始まる「強烈円高」の可能性
政治家も日銀も動かない日本の為替が狙われる

  長期金利の指標とされる新発10年債利回りは8月4日、0.995%まで低下し、2003年8月14日以来の低水準を付け、マーケットで話題になっている。

 なにしろ、これまでの10年金利の推移をみると、10年金利が1%を割れた局面は、1998年9月~11月、2002年12月~03年7月の2回経験があるのだが、1回目は長期信用銀行の破綻、2回目はりそな銀行の破綻と、ともに金融システムが動揺したときだ。今回は幸いにも、そうした金融システムの不安は今のところない。

 では本当に大丈夫なのか。日本と欧米の金利の動きをみてみよう。

 日本の金利低下は、参院選後から顕著である。参院選前の7月9日、10年国債金利は1.15%だったが、選挙後低下し、8月4日に0.995%になっている。ところが、同じ期間の欧米の10年国債金利をみると、米国では3.07%から2.98%、英国では3.56%から3.53%と、それほど変化がない。(下図参照)

日米の金利差は参院選後の7月以降、大きく動き始めている。

 日本における長期金利の1%割れは、いい話ではない。
というのは、長期金利は、将来の短期金利を反映して形成されるからだ。将来の短期金利が上がらないとみると長期金利が低下する。将来の短期金利はそのときの経済状況を反映し、景気が良くなっていれば上昇しているはずだが、不況であれば上がらない。この点からいえば、長期金利の1%割れは、景気の先行き不透明を意味しているというわけだ。
参院選後から、菅政権の体たらくをマーケット関係者はいやというほどわかった。
そこで、日本では、欧米に比べて景気の二番底になる可能性が高くなっていると思われているのではないだろうか。菅政権は、その二番底に対応できないとマーケットにみなされているのだろう。

 ただし、米国でも悪い話がでている。
6日、米労働省は7月の雇用統計を発表した。それによれば、民間部門雇用者数が7万1000人の増加にとどまり、エコノミストが予想していた9万人を下回った。
その結果、10日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和するのではないかという見方が出ている。住宅などその他の経済指標も芳しくないことも、金融緩和への動きをサポートしている。

 こうした中、日本の状況はお寒い。

 本来であれば政治の指導力を発揮すべきとの意見もあり、夏休みを返上してでも景気対策を行っていい。ところが、はやばやと臨時国会は閉会してしまった。与野党ともに夏は選挙区に帰り何件の盆踊りを梯子できるかが政治家の仕事になっている。
ただし、こうした経済政策については、ヘタに政治が動くより中央銀行が行うのが世界の常識だ。特に変動相場制になっている先進国では、1999年にノーベル経済学賞を受賞したマンデル教授が唱えたマンデル=フレミング理論により、マクロ経済政策として金融政策のほうが財政政策より効果が大きいことが示されている。だから、ここは日銀の出番である。

 9日と10日に日銀の金融政策決定会合が開かれる。
しかし、日銀は、9月の民主党代表選の様子見で、今の時点で行うべき金融政策をやらないだろう。この時点で何か行っても、民主党代表が誰かによってさらに追加策を求められるかもしれないので、その時に備えて「弾」をとっておくというスタンスだ。マーケット関係者やマスコミもそうみている。

 もし今の時点で、仮にインフレ目標があったとすれば、今は物価上昇率がマイナスのデフレであるので、当然金融緩和策が必要になる。リーマンショック後に各国中銀が行ったように、少なくとも20兆円規模の量的緩和になるだろう。その金融緩和はデフレ対策になる。

動けない、動かないニッポンは狙われる

 しかしながら、インフレ目標について、民主党は、デフレ脱却議連がいろいろと活動しているが、党のマニフェストには盛り込まれておらず、今のところ民主党内部の運動でしかない。菅政権は、インフレ目標に消極的である。

 一方、自民党も、マニフェストには盛り込まれているが、谷垣禎一党首、石破茂政審会長が否定するなど党の方針として定まっているとはいいがたい。

 このように、米では金融緩和の動きがある中で、日本は動かないし、動けないという状況では何が起こるだろうか。

 為替アタックである。こうした状況で、円を買っておいて損はない。となると、ひょっとして、さらに強烈な円高が起こっても不思議ではない。こうしたことが、10日の日銀政策決定会合の後に起きる可能性がある。

 もともと日米の物価上昇率の差について、最近20年間において2~3%もあり、米国のほうが高い。ということは、購買力平価の考え方から、米国ドルは日本円に対して安くなるので、為替レートは20年間で5割程度円高になって不思議でない。常に円高圧力を受けているとも言える。何かの拍子に円高になりやすい。

 せめて、日本で2%程度のインフレ目標を設定すれば、そうした円高圧力がなくなり、日本経済に好ましいだろう。

 ここは、本来の姿ではないが、政治に頼りたくなる。民主党も、自民党も、それとインフレ目標を公約にしているみんなの党らが、超党派で頑張らないと、日銀だけに任せておいては心許ない。

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