独占インタビュー ノーベル賞経済学者 P・クルーグマン 「間違いだらけの日本経済 考え方がダメ」

2010年08月20日(金) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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クルーグマン 今年後半でしょう。基本的に景気刺激策は下火となり、在庫循環も終わりました。新規需要の増加を見込めるような、これといった要因がないのです。

―不安定な状況から、われわれはいつ脱出できますか。

クルーグマン 正直言ってその状態がいつ終わるのか私にはわかりません。新しいイノベーション(技術革新)のような経済成長の巨大要因でも浮上しない限り、この悪い状態は長期にわたるかもしれません。

いい話はまったくない

―かつての自動車の発明から最近のクラウド・コンピューティングまでイノベーションの規模もいろいろですが、「技術革新」というと、具体的にはどのようなイメージですか?

クルーグマン 当面は過剰な設備投資になろうとも、GDP数%分の新規投資を生むような、十分な規模の技術革新が必要です。

 ある意味では、ITが押し上げる役割を果たした1990年代がそうでした。アメリカの場合、多くの人々がパソコンを買ったせいではなく、テレコム(長距離通信企業)が光ファイバー敷設等に投資したことが大きかったのです。これがおそらく、GDP2%ほどの企業投資の増加につながった。それぐらいの規模の技術革新が目下、必要とされているのです。

 翻って、現在のiPadでは明らかに規模が不足するし、クラウド・コンピューティングでも不十分です。なぜかというと、これらは大規模な新規インフラを必要としないからです。

 例えば、今以上に燃費が著しく向上し、人々が環境保全やハイブリッドカーに真剣にお金を使いたくなるような、そんな技術革新が必要なのです。しかし今はその気配もありません。いい話はまったくないのです。

―マクロ経済学的には打つ手はもはやないと?

クルーグマン いや、まだまだあります。実は、日本の不況の原因は、マクロ経済学がやるべきだと説いていることを実行しないことにあるのです。

 まず必要なのは、経済を回復軌道に乗せうる、大型の財政刺激策です。これはアメリカではまだ行われていないし、日本でもまだまだです。1990年代を通して、少しずつやったに過ぎません。

 また金融政策面では、日銀自体にやる気がないので大変難しいことですが、インフレ・ターゲット政策を採用させる必要がある。本当に人々が今後、年間1・5%でなく、4%の物価上昇率になると信じれば、景気回復に向かう可能性が大きいからです。4%はほぼ市場の期待値でもあります。

―教授は、'98年に発表した「復活! 日本の不況と流動性の罠」と題する論文の中でも、4%のインフレ・ターゲット政策を15年間続けることを提案しています。

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