希代のヒットメーカーが挑むメディカル・エンタテインメント VOL.5
『陽の鳥』 著者:樹林伸

『陽の鳥』
著者:樹林伸
講談社
定価1,680(税込)

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◎担当編集者よりの紹介◎

 「生命倫理と家族愛」をテーマに、希代のヒットメーカーが挑むメディカル・エンタテインメント大作!

 関東大学畜産学部の沖田森彦は医師免許を持つ霊長類クローンの研究者。妻を亡くし、高いIQを持つ小学生の息子・有基と二人で暮らしている。1999年、沖田は助手の名嘉城数矢とともに、世界で初めてヒト・クローン胚の樹立に成功していた。科学の歴史に新たに名を刻む、世紀の発見。しかしその発表を間近に控えた矢先、息子の有基が突然の事故に遭い、この世を去ってしまう。

 悲嘆に暮れる沖田が下したある決断---それは、助手の名嘉城と共謀し、生命科学のタブーであるヒト・クローン技術によって、息子を「復活」させることだった・・・!!

「昨日研究室を訪ねた時に、沖田君は、近々大きな発表があるようなことを言っていた。きみも当然知ってることなんだろう」

 話を元に戻し、数矢に向けて缶ビールを差し出した。数矢は会釈してグラスを掲げて杯を受け、
「ええ、もちろんです」

 と、キッチンで聞き耳を立てている様子の春花にも見えるように大きく相槌を打った。
「きっと、先生にも喜んでいただけると思います。なにしろこれからの日本の、いや世界の医療に大きな足跡を残すことになる発表ですから」

 医療に、という一言に力を込めた。畜産学部系の研究室ではあるが、それは実験の便宜のためであり、プロジェクト・チーフである沖田も医学部の出身なのだ。霊長類のクローン胚、ES細胞の開発。ここで言う霊長類とは、人間のことだ。アカゲザルやカニクイザルによる実験は通過点にすぎない。

 つまりはお義父さん、あなたのためです。

 そんなニュアンスを仄めかし、数矢は壮一の手から缶を受け取って、
「どうぞ、先生ももう一杯」