菅と小沢訣別のとき
愛と憎しみの民主党政権
どちらかが消えるほかない

 公衆の面前で罵声を浴びせられる菅総理。もはや続投の頼みの綱は「表紙をまた替えるのはみっともない」という消極的な支持だけ。弱った獲物を猛獣・小沢氏は見逃さない。大政局が始まろうとしている。

もはや内戦状態

「菅首相は民主党に所属する人間だけではなく、国家に対して腹を切って詫びるべきだ。国民に対して、詫びるべきなんだ。それを、反省することもなく、今度もまた代表選に出ますとは、なんだッ!! 参院選は誰のせいで負けたと思っているんだ。責任を取れっていうんだよ!」

 怒りのあまり体を震わせながら、本誌にこうぶちまけるのは、民主党の小泉俊明国会対策副委員長だ。

 自民党政権時代にも、時の首相を、身内の自民党議員があえて批判することはままあった。だが、実名でここまで公然と自党の党首を罵倒する議員が出るのは極めてまれだ。小泉氏は、
「菅首相は万死に値する」
  とまで言い切る。

両院議員総会で批判を浴びても続投を宣言。代表選出馬を明言した

 鳩山前首相が国民の信を失って辞任を余儀なくされてからわずか2ヵ月あまり。後を継いだ菅首相の迷走により、民主党は分裂・内紛状態に陥り、もはや政権の体をなしていない。

 首相が国民の信も、党内での求心力も失ったいま、政局の焦点は「誰が菅を引き摺り下ろすのか」に移っている。

 7月29日午後4時30分。民主党の両院議員総会では、菅首相ら党執行部に対する批判が止まなかった。

「幹事長、選対委員長が責任を取るのは当然。首相自らも、責任を取るべきだ」(中津川博郷代議士)

「戦争(参院選)で大敗北を喫した。最高司令官が責任を取るのは当たり前」(川上義博参院議員)

「もはや内閣を総辞職していただく以外ない」(川内博史代議士)

 飛び交う罵声の中、菅首相は悄然とした様子で聞き入っていたが、首相自身はもちろん、枝野幸男幹事長、安住淳選対委員長からも、進退に関する発言はなし。

「苦しい中での再スタートが、のちに新しい政治の地平を開いたと評されるよう、死力を尽くしたい」

 などと述べ、今後も政権を担っていく意思を示した。これが批判者たちの怒りに火を注ぐことになったのは言うまでもない。

 前出・小泉氏のボルテージも上がる。

「いまの政治をサッカーにたとえれば、自民党は一度もボールに触っていない。相手は何もしていないのに、菅が勝手に自殺点を叩き込み、多くの仲間を"殺した"(落選させた)んだ。
  参院選に負けたということは、民主党政権を不安定にしただけではない。法案が国会で一本も通らない状況を作ってしまった。法案が通らないというのは、国家が一ミリも動かない状況を作ったということだ。法案が通らなければ、国債も発行できない。
  予算の執行もできない。このままでは、日本の国家機能が停止するんだよ。その重い責任を、菅や仙谷、枝野はどう思っているのか」

 政権の末期症状を象徴する事件のひとつが、2011年度予算の概算要求基準(シーリング)を巡るドタバタだ。菅首相は7月26日に予算編成に関する関係閣僚委員会を開き、概算要求基準の原案について議論。「政治主導で原案を決めた」と党内外にアピールしようとした。

 ところがこの苦肉の策は、池田元久財務副大臣が報道陣に漏らしたホンネによって、すべてパーになる。

「形の上で政治主導を見せるというか・・・」

 結局のところ、概算要求基準は自民党時代と同じく、財務省に丸投げで作られ、政治主導など見せかけに過ぎないということが、よりによって財務副大臣の一言でばれたのだ。

 そもそも概算要求基準は、当初、7月23日に発表される予定だったが、政府の都合で26日に延びていた。池田副大臣は、オフレコの場でその理由にも触れ、「官邸が作文しているから」と漏らしている。つまり、財務省が作成した原案を、官邸にいる首相側近がいじって一部文面を変えることで、表面的な政治主導を演出する。その作業に3日かけたと池田氏は暴露したのだ。

 民主党・小沢グループに所属する中堅議員の一人は、こうした菅首相の稚拙なパフォーマンスをあざ笑う。

「自民党時代も、財務省が各省庁に対して一律に予算の上限を設定し、シーリングをしてきた。今回、菅政権は『一律10%の予算削減』を指示したが、まさに自民党時代と同じ、財務省任せの予算編成そのもの。国家戦略室の縮小も、予算編成権限を手放したくない財務省の思惑通り。自民党時代にもなかったような、"官政権"だね」

 民主党国対副委員長の笠浩史代議士も、菅政権に対する厳しい姿勢を隠さない。

「消費税の問題が象徴的ですが、これまで『開かれた政党を目指す』と言っていたはずの人たちが、党内で何の手続きも議論もなく、問題を持ち出した。誰が、どこで決めているのか。国家戦略室(の縮小)だって、それで菅首相が政治主導をやりやすくなる、というならまだ分かる。
  ところが実際は、『法案が通らないから』なんて理由では、話にならない。国家戦略室は、われわれが昨年の総選挙のマニフェストで示したシンボルでしょう?」

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