アメリカでこの秋公開の映画『ウェイティング・フォー・スーパーマン(スーパーマンを待ちながら)』は、アカデミー受賞作『不都合な真実』の監督として知られるデイヴィス・グッゲンハイム氏による、全米の公立学校の教育問題を浮き彫りにしたドキュメンタリー作品です。

9月24日の封切りを前に、非常にユニークなマーケティングプランが目を惹きます。
なんと、公式オンラインサイト上で「観る」と宣言するだけで、それが一定数に達するごとに全米の子供たち、先生、学校に寄付がされる、というしくみです。
宣言が3万件に達すると一人5ドル相当のギフト・カードが教育系NPO「ドナーズ・チューズ」上に登録している先生達に、4万件に達すると全米約1000人の選ばれた先生にオフィス用品販売大手「オフィス・マックスから1000ドル相当の文房具が、そして5万件に達すると、別のNPO「ファーストブック」から25万冊の本が全米の教室に寄付されるのです。
どうやったらこのようなプロモーションが可能になるのでしょうか?
まずこの映画の制作会社である「パーティシパント・メディア」の社会的課題解決に対する一貫した姿勢が、多くのスポンサー企業、NPOを惹きつけています。この会社は2004年にインターネットオークションサイトeBayの初代社長、ジェフ・スコール氏が私財を投じて設立した会社です。
過去の作品には『不都合な真実』の他に最近日本での上映を巡って話題になったイルカ漁を告発する『ザ・コーヴ』、核廃絶を訴える『カウントダウン・トゥー・ゼロ』等があります。
IT業界出身のスコール氏がハリウッドで映画制作会社を設立し、元副大統領の環境問題への取り組みを扱った作品がアカデミーを受賞する等、幅広い分野でのネットワークを誇っている会社です。今回の映画の中にはマイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏も登場します。
アメリカ国内でも深刻な教育問題を取り上げることで、企業である「オフィス・マックス」にしてみれば企業ブランドのイメージアップを図り、文房具を購入してくれる大切な顧客である教師、子供たちにポジティブなメッセージを伝えることが出来ます。
またそれぞれ卓越したNPOとして知られる「ドナーズ・チューズ」、「ファーストブック」からの負担というのは、実はそれぞれのサイトを通じて寄せられる個人・法人からの寄付によって成り立っています。こうした話題作品に対してのパートナーシップを得ることで、より効率的に寄付参加者を募ることが可能になります。
映画作品というひとつのメディアをきっかけに共感が伝播し、そしてそこから発生する「人、モノ、お金」の循環は今後も様々な形で生み出されることと思います。
その際に漫然と寄付を募るではなく、目標数を設定しながら、ソーシャルメディアのチャンネルを通じていかに多くの人にメッセージを伝えられるか、今回のプロモーションは挑戦しているように思えます。
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