政局
もはや閣僚・党役員「総辞任」しかないが
それでも居直る菅首相を
誰が辞めさせられるのか

官邸に入った市民ゲリラ
19日夜の官邸会談でも結局、辞任する気はみせずじまい  【PHOTO】Bloomberg via Getty Images


「立つ鳥 跡を濁さず」―。

 中学卒業が近づくと、担任の先生から厳しくこう言われ、教室の掃除、整理整頓などをきちんとするよう厳しく命じられた。「立ち去る時は、跡を見苦しくないようによく始末すべきである。また、退き際はいさぎよくあるべきである」(「広辞苑」)という意味だ。
なぜこんなことわざを思い出したかと言えば、退陣表明後の首相・菅直人の言動があまりに異常で、怒りすら覚えたからである。インターネットの「ことわざデータバンク」には対義語も出ていて、「後は野となれ山となれ」「旅の恥はかき捨て」となっていた。なるほど、いまの菅の姿にピタリと当てはまる。

 退陣表明直後から「菅は辞める気はまったくないようだ。いまだに意気軒昂だ」という話がじわじわと広がっていた。しかし、そうはいっても退陣表明したのだから、一時的に気が高ぶっているだけだろうという常識が働き、そんなはずはないという結論に落ち着いていた。

 そんな常識が通じないと分かったのは、15日夜、「再生可能エネルギー促進法成立!緊急集会」に出席した時の発言だった。席上、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取る、この法案について、満面に笑みを浮かべ次のように語った。

「何としても通したい。通さないと政治家としての責任を果たしたことにならない」「菅の顔だけは見たくないという人も結構いるんですよ、国会の中には。本当に見たくないのか! 本当に見たくないのか! 本当に見たくないのかって! それなら早いこと、この法案を通した方がいいよと。この作戦でいきたい」

 この発言を報じるテレビニュースを見て、与野党の幹部はいきり立った。
「菅はなめている。国民を、野党を、与党をなめ切っている。菅は気が狂ったんじゃないか」

引き際の美学とは無縁

 そりゃ、そうだろう。退陣表明する前なら、あるいはもっと早い時期なら、この発言は理解できる。だが、菅が再生可能エネルギーに力を入れ始めたのはつい最近のこと。この法案は3月11日に閣議決定され、国会に提出されている。3カ月間もほったらかしにしていたのに、退陣表明後になぜ「通さないと責任を果たしたことにならない」という決意になるのか。

 この集会の前日の閣僚懇談会では、菅は今年度第2次補正予算案の編成を財務相・野田佳彦に指示している。露骨な延命策と野党が批判するのは当然だろう。

 菅の立ち振る舞いは政界、あるいは多くの日本人の常識とかけ離れている。そんな菅の心境を知るには、9日付毎日新聞朝刊に掲載された夫人・菅伸子の長文のインタビューが役に立つ。

「これまで首相がいともあっさり、簡単に辞めちゃった方が不思議ですよ。日本は、男の引き際だとか、男の美学だとかってすごく好きでしょ。江戸時代の切腹がそう。よくない」

「菅さんの原点はゲリラ、市民ゲリラだってこと、もっと思い出してもらわなくちゃ。昔の菅さんを知る支持者のみんなからさんざん言われるの。あと少ししかないなら、何かやってくれなきゃ。面白くないよって。私もそう思う」

 菅は引け際の美学とは無縁であり、その原点が「市民ゲリラ」なのだ、と言う。市民ゲリラが国を統治する最高権力者になったというわけだ。このことに、もっと早く気付くべきだった。

 こうした菅に対し、民主党執行部や一部閣僚は降ろそうと本気になってきた。だが、内閣不信任決議案が2日に否決されてしまった以上、不信任案を再提出することは今国会中は事実上できない。同一会期内に同種の法案、決議案は提出できないという「一事不再議の原則」が働くからだ。つまり、今国会の会期が延長されると、国会はその間、首相を強制的に辞めさせる手段を失う。

 効果があるのは、閣僚や党役員が一斉に抗議辞任することぐらいか… その場合でも、菅が全部を兼務するか、入れ替えれば、続投は可能だ。

 それなら、いっそのこと、政治が機能不全に陥ろうとも、菅がやりたいだけ続けさせたらどうか。そして、退陣表明しても退陣しなかった首相として、菅が大好きな「歴史」に「菅直人 立つ鳥 跡を濁す」と刻み込めばいい。(敬称略)

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