日本相撲協会は総会屋との縁切りに苦労した上場企業の改革に学べ
やはり無理があった名古屋場所開催

 大相撲名古屋場所は、7月25日に千秋楽を迎えたが、やはり、この場所の開催には無理があったのではないか。

 外部理事を中心とするとはいえ、身内で構成された当別調査委員会が、力士・親方の自己申告をもとに審査して、処分を出してお茶を濁そうとする処置の信頼性にははじめから無理があった。

 大関琴光喜と大嶽親方の解雇を中心とする甘い処分で名古屋場所の開催を前提とした理由作りをしているとしか見えなかった。苦労された当事者には申し訳ないが、もともと信用など出来るものではなかったのである。

 案の定、場所中に、新たな問題が続出した。

 三日目には相撲部屋からの押収物に暴力団関係者の名刺が含まれていたことが報じられるとともに、佐野山親方(元大関千代大海)が賭博問題で再聴取を受け、六日目、七日目には、貴乃花親方が過去に暴力団幹部と同席していた問題が発覚。

 一一日目には、今度は松ヶ根部屋の大阪場所宿舎問題が明らかになり、特別調査委員会が佐野山親方に対して新たに裏カジノ疑惑での調査に着手した。

 そして、一三日目には、特別調査委員会の山口弘典委員が維持員席の暴力団関係者への譲渡に関わっていた疑惑が浮上。同日、委員を解任された。何と、特別調査委員会自体が問題含みだったのだ。

 一四日目には、出羽の海事業部長(元関脇鷲羽山)が、山口委員の問題を武蔵川理事長に報告していなかったことが発覚した。これは、千秋楽に開かれた理事会で、武蔵川理事長により理事長代行の指名を受けた出羽の海事業部長が不適任とされて、村山弘義理事長代行の続投が決まる理由の一部ともなった。

 これらの問題には、後に十分吟味してみた結果「シロ」と結論される問題が含まれている可能性がある。このことは記しておかなければなるまい。

 しかし、同時に、まだ報じられていない「クロ」の事実が多々あるのではないかという心証を持たせるに十分な問題噴出ぶりだった。協会関係者は口先では「膿を出し切る」などというが、本当に出し切った場合、膿でないものがどの程度残っているのだろうか。

 一方、不祥事は盛りだくさんだったが、取り組みは低調だった。横綱白鵬の連勝記録と相撲内容は立派だったと思うが、幕の内に解雇・謹慎が大関を含めて七名もおり、しかもこれだけ混乱した場所中の勝利では、全勝優勝も連勝も記録の価値に疑問符が付く。白鵬が優勝しながら悔し涙を流したのも無理はない。

 大関は、二人が一〇勝五敗、一人は八勝七敗のやっと勝ち越し(途中休場一名)、関脇・小結は全員が負け越しという低調ぶりで、白鵬に続く力士の育成が出来ていないことがいつもの場所以上に露わになった。相撲協会は、自身のガバナンスの問題だけでなく、大相撲の取り組みというコンテンツ自体の魅力が衰えていることも認識すべきだろう。

 こうした中で、NHKが名古屋場所の生中継放映を中止したことは評価したい。相撲協会は放映権料の受け取りを自粛するらしいから、見識としても、経営的意思決定としてもこれは良かった。この英断を下した会長は、外部から招聘された福地茂雄氏だった。

武蔵川理事長の更迭を急げ

 日本相撲協会を、そして日本の相撲ビジネスを、これからどうしたらいいのだろうか。

 これだけの問題を起こしたのだから、文部科学省は相撲協会の公益法人資格を剥奪し、相撲ビジネスは、例えば株式会社組織による興行として行えばいいとする意見もある。

 しかし、厳密には世論調査でも実施してみなければ分からないが、相撲を日本の伝統の一つとして「特別扱い」し、公益法人にふさわしい興行且つビジネスとしてリニューアルして続けていきたいと思う国民が少なくないのではないだろうか。筆者個人は、この形でも良いと思うが、その場合、相撲協会が「すっかり変わる」ことが前提条件になる。

 現在の公益法人認定を受けた財団法人の形を維持するにせよ、組織の形態を変えるにせよ、急ぐべきは、武蔵川理事長の交代だ。あたかも体調不良が理由であるかのような謹慎を続けつつ、理事長としての実権を手放さず、辞任せずに事を済ませようとする氏の企みを相撲協会及び文科省はいつまでも許しておくべきではない。

 武蔵川理事長については、常習性のある高額の賭け麻雀の疑惑が週刊誌で報じられている。この件を別としても、野球賭博問題での謹慎力士を部屋から出していることの指導責任問題、さらには、角界全体の賭博や反社会勢力との関わりに関する指導監督責任がある。

 賜杯もNHKテレビの放映権料も辞退せざるを得ない場所を招いた経営責任もある。理事長の辞任は当然だろう。

 たとえば、維持員席の不正提供問題だけで部屋が取りつぶされて二階級降格の処分を受けた木瀬親方との処分のバランスがどのようなものになるのかが興味深い。これで武蔵川氏が理事長更迭を免れるとすると、相撲協会には自浄能力がないと判断せざるを得ない。

 賭博蔓延の原因を作ったとも疑われる人物が理事長の職に留まるというのでは、泥棒が自ら求刑と判決を行うと共に警察も指揮するようなものだ。

 出羽の海事業部長を理事長代行に指名しようとしたのも、全くおかしい。相撲界全体が世間から信用されていないことにもっと留意すべきだろう。

 弟子の麻薬問題で辞任した前任の北の湖理事長もそうだったが、死に体の理事長が土俵際で粘るのは困った伝統だ。武蔵川氏は、現役時代(大関三重ノ海時代)に、その横綱北の湖に「猫騙し」を仕掛けたような人物だから、自分の目的のためにはなりふりを構わない人なのかも知れない。

 しかし、ビジネスとしての大相撲の立場から考えるなら、早急に組織のイメージを一新する必要がある。何はともあれ、彼の理事長辞任を急がなければならない。

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