「更生計画案 決着へ」記事など茶番! もはやJALは「清算」か「解体」が適当だ
プレパッケージ型再生の失敗が明らかに

 はっきりさせておこう。

 日本航空(JAL)の再建問題で今、ないがしろにされているのは、
(1)公的資金(税金)の回収を危うくされてきた国民(納税者)、
(2)損失というシワ寄せの拡大を押しつけられた銀行とその株主、
(3)名ばかりの「本邦初のプレパッケージ(事前調整)型の更生計画」を担保に、問題先送りに一役買って権威を傷つけられた裁判所――の3者である。

 先週、JALとその管財人の企業再生支援機構、及び、その背後に控える民主党政権は、8月末に期限が迫った同社の更生計画提出へ向けて情報戦に打って出た。

 そして、その作戦はまんまと成功を収めつつある。更生計画策定のための銀行団との交渉が順調に進んでおり、再建には何の障害も存在しないかのようなムードが演出されているからだ。

 しかし、実態は大変深刻だ。1兆円を超す公的資金が浪費され回収できなくなるリスクにさらされている。加えて、これ以上の先送りはさらに事態を悪化させることに他ならない。

 そもそも論から言えば、JALと機構が今年1月19日、東京地裁に申請した会社更生法の適用申請の内容は、両者の言い分に反して、米政府がゼネラル・モーターズ(GM)で目指したような「プレパッケージ型の法的整理」とは似ても似つかないものだった。

 というのは、GMの例と異なり、JALのケースでは、内容を伴わないお題目が並んでいただけ。具体的なコスト削減策やビジネスモデルの再構築策が示されなかった。加えて、主要行から新たな融資を得る約束さえ取り付けられなかったのだ。つまり、資金繰りの目途さえ立っていなかったのである。

 案の定、その後のより具体的な更生計画作りは迷走を続けた。

 最初に躓きが明らかになったのは、6月末に設定されていた計画の提出期限を、いきなり2ヵ月ジャンプしたときである。7月の参議院議員選挙を控えて、計画作りの難航を糊塗するため、この措置がとられたのだった。

 7月半ばから本格化したJALと機構、主要銀行との更生計画作りの交渉は、のっけから不信の応酬となった。

 何よりJALと機構が反発を買ったのは、今年1月の更生法の適用申請時に確定したはずの「プレパッケージ」の柱を安易に変更しようと試みたことだ。航空機の処分費用が予想以上に膨らんだのが原因で債務超過額が膨らんだとして、銀行に一段の金融支援を迫ったのである。当初83%で決着したはずだった債権カット率を、一方的に、90%に引き上げるように迫ったことが明らかになっている。

 併せて、JALと機構は今後、機構が実施する予定になっているJALへの資本注入の金額を拡大する(当初の3000億円の予定を、3500億円に増やす)ことや、銀行に求める新規融資額の減額を打ち出した。

 しかし、予想以上に、JALが深刻な資本不足に陥っていたという事実は、過去数年にわたって繰り返されたJAL再建策の計画倒れを改めて想起させるものであり、主要行のJAL不信を高める結果に繋がった。

 そんな中で、ここへきて、ようやく債権カット率の見直し問題で合意ができるかもしれないとの機運が出てきている。

 JALと機構が要求を90%から87.5%に引き下げたため、厭戦気分の強い一部のメガバンクから「これでJALとの縁が切れるなら、過去に実施した融資の回収率が低下するのはやむを得ない」との声があがり始めているというのである。

 JALと機構、そして民主党政権は、このチャンスを見逃さなかった。債権カット率引き上げを実現できそうなムードを精一杯大きなニュースとしてリークしたという。

 この話題を特に大きく扱ったのは日本経済新聞だ。7月23日付夕刊の1面トップで、「日航更生計画案 決着へ」「債権放棄額5216億円に」などとの見出しを付けて、「銀行団に配慮して債権カット率の圧縮も盛り込んだ。

 主要債権者も同意する方向で、計画案は決着する方向だ」などと報じたのである。この記事は、JALと機構を除く、ほとんどの関係者の間で大変な顰蹙を買った。

 というのは、更生計画には、債権カット率を拡大して過去の債務超過の処理を行う問題だけでなく、他にももっと重要なポイントがいくつか残っているからだ。

 ちなみに、その第一は、「更生計画の要」である、今後の資金繰りをどうつけるかという問題だ。

 この点で「(主力銀行団が求められた3192億円の)新規融資を断固拒否する姿勢を崩していない」(メガバンク)という大きく深い溝が残っている、

 また、銀行団は、他の更生計画の根幹の部分についても「実現性が乏しい」(メガバンク)「(計画全体が)信用できない」(同)と冷ややかだ。

 具体的には、「今後5年で4400億円の営業コストを削減する」としているリストラ策や、再建計画の最終年度にあたる2015年3月期に「1331億円の営業利益を確保する」としている収益立て直し策などが信用できないという。背景にある人員削減策や資産の売却、増収策などにほとんどこれといった根拠がないからだ。

 余談だが、一連の交渉過程で、本件を担当する東京地裁も、「本邦初のプレパッケージ型の更生手続きと銘打っていたにもかかわらず、債権カット率の変更など事前調整の対象だった根幹部分が安易に変更されることは遺憾だ」と強く不快感を示していたとされる。

 こうした中で、なによりも大きいのは、過去の債務超過処理を含む資本増給策として、機構が予定していた増資額を当初予定より500億円多い3500億円に積み増した問題があげられる。というのは、この3500億円はもちろん、機構が更生計画決定までのつなぎ資金として融資した資金(融資枠は上限6000億円)も両方とも公的資金、つまりは血税だからである。

 今後、銀行が新規融資に応じなければ、この公的資金の回収が端から困難になるとみられている。

これ以上の先送りは血税をドブに捨てるだけ

 JALと機構は、今年に入ってからの営業収支を根拠に「経営は着実に改善しており、再建は可能だ」との主張を繰り返している。

 その根拠の数字をあげると、1月178億円の赤字(前年は208億円の赤字)、2月122億円の赤字(同208億円の赤字)、3月16億円の黒字(同26億円の赤字)、4月103億円の赤字(同328億円)といった具合である。また、7、8月の予約も順調だという。

 しかし、一昨年秋のリーマンショックの影響が大きかった昨年の前半と比べて、今年の方が業績が改善するのは当たりまえである。また、3月や7月、8月は春休み、夏休みに相当し、本来、世界の航空会社にとって稼ぎ時なのだ。

 むしろ、その時期の稼ぎにおいて、「内外のライバル各社との格差が拡大傾向にあることこそ憂慮すべき問題だ」(ライバルの航空会社)とされている。

 そして、昨年9月の民主党政権発足以来のJAL問題の混迷を見れば、先送りが、より深刻な事態を招くことも明らかだ。

 今回、JALや機構の言い分を鵜呑みにして、債権カット率の拡大だけを柱にした更生計画の策定を許すとすれば、とんでもない誤りである。

 繰り返されてきた失敗で明らかなように、時間を与えれば、JALという企業グループを小手先のリストラによって再生できるというのは、幻想に過ぎない。これ以上の機構や政府系金融機関による支援強化(本格的な国有化)や、先送りは許されない段階に来ているのだ。

 JAL、機構、政府の3者は今度こそ、それぞれのこれまでの再建混迷の責任を明確にする義務がある。また、残された選択肢は、清算か、解体処理の2つに1つと肝に銘じるべきだろう。

 筆者が最初にJALの実質債務超過転落を指摘したのは、講談社の「週刊現代」(2006年10月14日号)に寄稿した記事「調査報道スクープ JALは『隠れ破綻』している」においてである。

 改めて強調しておくが、あれから4年近くの時間が経過した。この間、JALは何度も経営再建計画を出しながら、いまだに実現できていないのだ。

 財政健全化という世界的な命題が浮上する中で、これ以上、労働分配率の低下などに苦しむ納税者の血税を、放漫経営ひとつ是正できないような企業に注ぎ込み続ける行為が国民のコンセンサスであるわけがない。

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