フランスの「コアビタシオン」に日本の政治は何を学ぶか
第五共和制も悩んだ「ねじれ」

 7月30日から8月6日まで、参議院選挙後の国会が開かれる。予算委員会も開催される。菅総理大臣にとっては、初めての予算委員会での審議となる。

 参議院選挙後の国会の最大の特色は、衆議院と参議院が完全にねじれていることである。三年前の参議院選挙の後は、ねじれ国会とはいえ、自公政権が衆議院で三分の二の多数を制していたので、再議決によって法案を通す最終的な担保はあった。安倍内閣には私も厚生労働大臣として入閣したが、この担保ゆえに安心できた。

 テロ特措法は、これを使って通した。しかし、今回は、この担保すらない。

 国民新党の亀井静香代表は、社民党と統一会派を組んで、何とか与党で三分の二を確保しようと画策しているが、今のところ成功していない。これから、野党を巻き込んでの連立政権構想が試みられるであろう。

 民主党にとってみれば、何としても安定した政権基盤を築きたいのであろうが、連立の相手となると、みんなの党をはじめ、ハードルを高くしているので、連立協議は容易ではあるまい。

 しかしながら、このねじれ状態では、憲法で衆議院の優越が定められている首班指名、予算、条約以外のすべての政府提出法案が国会で成立しないということになりかねない。

 これは、国権の最高機関である国会が機能不全で仕事をしないということになり、由々しき事態である。

 私は、若い頃フランスに留学し、彼の地の政治を研究していたが、フランス第五共和制憲法もまた、政治の機能不全を内包しており、大きな問題となってきた。当時のパリで、政治学者や憲法学者の間で喧々囂々の議論を交わしたものである。

 フランスでは、行政権の長として、大統領と首相の二人がいる。大統領は、直接国民の選挙で選ばれる。首相は、大統領に任命されるものの、議会の多数派の代表でなければならない。基本的には、議会の多数派という要件が優先する。

 そこで、社会党のミッテラン大統領の下で、保守派のシラク首相、あるいは、逆に、保守派の大統領の下で社会党の首相という組み合わせが実際に生じた。これをフランス語でcohabitation(コアビタシオン)という。「同棲」という意味である。日本語では、保革共存と訳されている。

 フランスの場合、大統領は国会元首でもあり、外交・安全保障といった国の根幹に関わる問題は大統領が、内政上の問題は首相が、といった棲み分けが出来て、コアビタシオンはそれなりに機能した。

 フランスの場合、核武装、アメリカとの一定の距離感、アフリカや中東への影響力の保持、原発の推進などといった国家の基本政策では、与野党を超えて一致しており、そのためコアビタシオンが上手くいったのである。

9月の民主党代表選までは心身を労っておく

 ひるがえって日本の場合、国の基本政策について、与野党間の距離が大きすぎる。普天間問題に見られるように、日米安保体制については見解が一致せず、アジア政策、原発などについても合意は容易ではない。

 しかしながら、自民党と民主党の政策はさほど違わないし、何よりも両党に属する議員たちの間ではあまり大きな意見の相違はないともいえる。私たち新党改革、そして、たちあがれ日本やみんなの党、公明党なども、自民、民主と大きな政策距離があるとは思えない。

 国会を機能させねばならない。そのためには、党派を超えて議論しなければならないような問題、つまり外交・安全保障、税制、社会保障、経済戦略、選挙制度改革などについては、与野党間でじっくりと話し合い、国民的合意を形成する努力が必要であろう。その過程で政界再編もまた構想していかねばならない。

 しかしながら、まずは9月の民主党の代表選挙である。ここで、どのような動きが出てくるのか、菅代表の続投はあるのか。他党のことなので、こちらはじっと見ているしかないが、この民主党代表選挙が終わってからしか、本格的な政治の動きは出てこないであろう。

 それまでは、緑陰で歴史書でも繙きながら、しばし心身を労っておきたい。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら