菅首相は民主党を道連れにする前に、AKB48前田敦子に見習ったらいかがか
「私のことを嫌いでも、AKBのことを嫌いにならないでください」
AKB48を論じるつもりは毛頭ないが、第3回総選挙を戦った前田敦子さん(19)が第1位の座に返り咲いた〔PHOTO〕gettyimages

 今や「AKB48選抜総選挙」は国民的一大イベントになった感がある。筆者はもちろん、立候補したアイドルたちの名前すら知る者ではないが、6月9日、熾烈な第3回総選挙を戦った前田敦子さん(19)が13万9892票を獲得して第1位の座に返り咲いたというニュースには接した。ここでAKB48を論じるつもりは毛頭ない。

 だが、一点だけ言及したいことは、その前田さんのスピーチでの発言である。彼女は、次のように語ったのだ。「私のことを嫌いでも、AKBのことを嫌いにならないでください」---。この「私」を菅直人首相に、そして「AKB」を民主党に置き換えてもらいたいのである。

 良く言えば、国会会期を最大90日程度の大幅延長→約2兆円規模の11年度第2次補正予算案の緊急編成(所謂、1・5次補正)指示→6月20日の復興基本法案成立を受けての小幅内閣改造説を打ち上げるなど計略を相次いで繰り出しての政権維持に固執する菅首相の二枚腰には感嘆させられた。他方、財界サイドを含め民主党内外からの早期退陣の声に抗してかくも首相の座に執着するのは想像の外だ。「内閣不信任政局」を辛うじて乗り切った菅氏は、今度は「退陣政局」を正面突破する腹積もりのようである。

「反原発」で解散・総選挙という説も

 菅氏周辺からは、ご本人は首相退陣の時期を8月末と想定しているフシが濃厚だという情報が漏れ伝わってくる。なぜ、8月いっぱい首相の座に留まりたいのか。その理由は、8月6日の広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式と同9日の長崎原爆犠牲者慰霊・平和祈念式典に出席することに拘っているからだという。首相として菅氏は両式典で高らかに「脱原発」を宣言、日本が率先して自然エネルギーへの転換政策を推進すると国内外に発信し、戦後政治史に自分の名前を残したいというのである。

 6月12日午後、菅首相出席のもと官邸で自然エネルギーに関する有識者懇談会が開かれた。フランス・ドービルで開催された主要8ヵ国首脳会議(G8サミット)での菅首相演説の草稿を書いた田坂広志内閣官房参与(多摩大学大学院教授)の助言による有識者懇談会だ。

 出席者は司会の藤沢久美ソフィアバンク副代表、孫正義ソフトバンク社長、枝廣淳子・環境ジャーナリスト、小林武史ap bank代表(音楽プロデューサー)、岡田武史元サッカー日本代表監督、坂本龍一・ミュージシャン(ビデオ参加)の6人である。実態がよく分からないコンサルタント会社・ソフィアバンクの代表でもある田坂氏は、今や菅首相の最側近である福山哲郎官房副長官ともども「官邸関係者」として出席している。

 このラインアップからすると、「反原発」とまで言わないまでも「脱原発」で括れる立ち位置にいることが理解できる。

 菅氏はこの有識者懇談会に先駆けて世界的な作家・村上春樹氏が9日のスペインのカタルーニャ国際賞授賞式で「私たち日本人は核に対する『ノー』を叫び続けるべきだった」と語ったことにも勇気づけられたに違いない。そして菅首相は、09年4月のオバマ米大統領が核兵器廃絶を求めた「プラハ演説」に匹敵する「広島・長崎演説」にしたいと考えているのかもしれない。

 今週になってから永田町で密かに囁かれているのは、菅首相が8月に「脱原発」をシングルイシューにした衆院解散・総選挙に打って出る可能性である。筆者は、現在の政治力学からいってもリアリティが感じられない、首相周辺が流したブラフでしかないと判断している。

 それよりもむしろAKB48の前田さんの発言である。直近の各社世論調査を見ると、自民党も低迷しているが民主党の政党支持率は低落基調にあり、その理由が一連の「辞めろ、辞めない」の党内ゴタゴタにあるのは明白である。

 このまま菅氏が首相(民主党代表)の座に居座って、自らの政権下での特例公債法案の成立に固執し、さらに被災地の復旧・復興に必要な約12兆円規模の11年度第3次補正予算の骨格づくりまで担いたいと言いかねない。となると、その次は、間違いなく9月初旬にワシントンで予定されるオバマ大統領との日米首脳会談にも出席すると言い募るはずだ。

 政権党の民主党が国民からこれ以上嫌われないためには、菅首相に早めの引き時を決断して頂く他にない。もし菅さんが潔いのであれば、AKB48の前田さんのように「第1位」奪回が期待できるかも。

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