「衆参のねじれ」こそ政策論争を通じ「ちゃんとした政治家」を育てるチャンス
Webで政策選挙を実施

 今回の参議院選挙では、二大政党の「政策」の違いがすっかり分からなくなった。

最大の争点だった「消費税」で、菅総理が「自民党の政策を参考に」と表明した。そうかと思えば、民主党内でも「消費税増税反対」を標榜する候補もいる状態だったであった。

「政策」に基づく政党選択は、およそ不可能になった。

だから、選挙戦では、自民党は「いかに民主党は信頼できないか」を説き、民主党は「菅総理はサラリーマンの息子」と強調した。「政策」の代わりに、「信頼感」や「生い立ち」が主戦場になったのだ。

なぜこんなことになったかというと、政党の色分けと主義主張(政治哲学、政策の方向など)の色分けがずれているからだ。特に民主党と自民党の場合、党派を超えて同種の主義主張の持ち主がいるかと思えば、同じ党内で水と油のような議員たちもいる。

「衆参のねじれ」以前に、そもそも「政党自体のねじれ」が問題だったのだ。

党派をバラバラにしてみると、現在の主要政治勢力の本当の色分けは、以下の4党と考えたら分かりやすい。
少し誇張して戯画的に“政界再編”してみると、こんな感じだ。

(1)「組織の声を聞く党」
<支持層> 組織票狙い。
<党是> 一定の組織票を集めてくれる組織・団体の要望ならば、何でも聞き入れます。
<公約>(例)
・選挙で票を集めてくれる地域には、公共事業を誘致します。
・郵便局関係者の嫌がることはやりません。
・公務員労組は強力な支持母体なので、公務員の給与は決して下げません。

(2)「夢の国党」
<支持層> 「変革志向」の浮動票狙い。
<党是> 我々が政権をとったら、世界は夢の国に。
<公約>(例)
・公共料金はすべて無料にします。年金支給額は倍増します。財源はきっと出てきます。
・米軍基地は国外に移転。自分の国は自分で守ります。
・公務員は全員クビ、天下り官僚は国外追放します。

(3)「日本官僚党」
<支持層> 「安定志向」の浮動票狙い。
<党是> 政治主導は、普天間問題はじめ、大変な混乱を招いただけでした。やはり、日本国を統治すべきは官僚です。
<公約> 政策はプロの官僚に任せます。したがって、正直なところ、公約はどうでもよいので、「ほかの党と同じ」で構いません。

(4)ちゃんとした政治家
以上の「3党」とは異なり、国益のためを考えて政策を唱える人たち。


現状では、民主党にも自民党にも、これら4勢力が入り乱れて散らばっている状態だ。

もちろん濃淡はある。

自民党は、「組織の声を聞く党」と「日本官僚党」の色合いが濃かった。つまり、「族議員」と「官僚依存」をブレンドしてできたようなものだ。

これに対し、民主党は、昨年夏の衆院選では、「夢の国党」的マニフェストを唱えて勝利した。しかし、選挙が終わると、マニフェストは実行できず、徐々に「組織の声を聞く党」への変質が加速した。

そして、菅内閣になると、今度は「日本官僚党」が党内最有力勢力に急浮上した。内閣発足当日に「官僚との宥和」路線を閣議決定するなど、官僚主導に急速に回帰したのだ。


こうして見ると、「政権交代」は、実は、すでに閉幕していたわけだ。

長らく権勢を誇ってきた「組織の声を聞く党」=「日本官僚党」連立政権は、昨年夏にいったん政権を明け渡したものの、参院選を前に早くもカムバックした。

参院選で「政策」の争点がなくなったのは、当然のことだ。

4つの勢力の中で、最も影が薄いのが「ちゃんとした政治家」だ。

理由は簡単で、「組織の声を聞く党」や「夢の国党」の立場をとった方が、選挙ではるかに有利だからだ。このため、「ちゃんとした政治家」の資質や志を持ちながら、これら党に流れてしまう人たちが少なくない。

しかし、「ちゃんとした政治家」が少数派にとどまる限り、いかなる軸で政界再編をやり直そうと、政治は良くならない。

党派を超えた「徹底した政策論争」を

「ちゃんとした政治家」が政界の大多数を占め、その中で、主義主張の異なる人たち同士が政策論争を繰り広げるような政治を実現できないものだろうか。

突破口があるとすれば、「衆参のねじれ」だ。

ねじれをテコに、党派を超えた「徹底した政策論争」を喚起するのだ。

国民の前に議論をさらして政策論争を深めれば、各党の政策の真贋は自ずと明らかになる。政策論争に堪えない政党や議員をあぶり出し、誰が「ちゃんとした政治家」かを見極めることもできる

こうした視点で、「政策論争」を喚起する仕掛けの一つとして、緊急プロジェクト「国民がどんな『政策』を求めているのか」をご紹介しておきたい。このサイト上で、①どの政策が大事と考えるか、②それぞれの政策テーマごとに、どの政党の掲げる政策が妥当と考えるか、を投票する「政策選挙」を実施している。

「政策論争」を喚起するためには、まず、国民の側が、「政策」に関心を持ち、発信していくことだ。
逆に、国民が「政策」に無関心であれば、それだけ、政党間の数合わせや党利党略だけで「政策」が決まっていく可能性が高まる。

原英史/はら・えいじ
1966年東京都生まれ。
東京大学法学部卒、米シカゴ大学ロースクール修了。1989年通商産業省(現・経済産業省)入省。
内閣安全保障・危機管理室などを経て、2007年 から安倍・福田内閣で渡辺喜美行政改革担当大臣の補佐官を務める。
その後、国家公務員制度改革推進本部事務局を経て、2009年7月退官。
株式会社政策工 房を設立し、政策コンサルティング業を営む。
大阪府人事委員会特別顧問、政策研究大学院大学客員准教授も務めている。
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