田中秀征×田崎史郎 「愚かな菅直人、不気味な小沢――それにしても幼稚な民主党よ」
この大政局をズバリ読み切る

田崎 今回の参院選で民主党が突きつけられた、改選議席54に対し獲得議席44という結果は大惨敗といっていい数字です。

たざき・しろう 1950年生まれ。時事通信解説委員。著書に『政治家失格 なぜ日本の政治はダメなのか』などがある

 逆に自民党は13議席増やして51議席を獲得しましたが、これは自民党が勝ったというより、民主党が一方的に負けた選挙といえます。まさに昨年夏の衆院総選挙と正反対の結果です。

田中 自民党の勝利は民主党への鉄槌ですよ。自民党の支持団体が息を吹き返したりしたわけではないと思いますが、1人区の地方を中心に、自民党には人材が多く、そこでの圧勝が今回の結果につながっている。

田崎 1人区の全29選挙区で、自民党は21勝8敗。前回'07年は民主系の23勝6敗ですから、ここでも正反対の結果が出ました。

やり方がズルすぎる

田中 原因は民主党が危機感を持てば持つほど、労組を中心とした組織固めをやり、労組側も民主党にすがりつこうと必死になったことへの反発でしょう。

 その最たるものが、自民党やみんなの党の公務員制度改革や人員削減方針を恐れた公務員組合です。

たなか・しゅうせい 1940年生まれ。元経企庁長官。菅氏とは35年以上の付き合いで菅氏に政界入りを勧めた人物でもある

 県庁や市役所で役人たちがこぞって民主党支持に動けば、民間の組織が反発するのは当然です。

 政権政党というのは国民全体を代表する党ですから、その中であまりに特定の団体が力を誇示すると、他の団体の票が逃げてしまう。民主党にはそれがわかっていなかった。

田崎 そういわれると確かに頷ける点がありますね。

 私が思うに、今回の敗北は菅政権の責任ではなく、民主党政権そのものの責任でしょう。菅さんの消費税発言が敗因になったという分析も多くありますが、消費税増税を打ち出した直後は賛否が拮抗した感じでしたから。

 ただその後、年収によっては全額還付する案などを口にしたり、今度は逆に引っ込めたりしたことで、「中身があやふやなまま話しているな」と受け取られた。そういう政権の体質が見透かされたのだと思います。

田中 いや、民主党そのものの責任といいますが、実は民主党のそうした状況主義的体質を象徴的に持っているのが菅さんなんです。菅さんは選挙と政局を、政略だけで乗り切ろうとした。そのズルさを有権者は見抜いているんですよ。

 鳩山政権の末期、菅さんは次の首相を睨んで2番手で順番待ちをしていた。そういう姿勢も有権者はちゃんと見ている。首相という立場は、本人の意識していないようなところまでさらけ出してしまうポストで、政治のプロではない人ほど澄んだ目で見るから、菅首相がどういう人物か見えてしまう。

 だいたい、消費税増税のせいで負けたといいますが、議席を増やした自民党だって、同じことをいっているんです。

田崎 確かにそうです。

田中 田崎さんがおっしゃるように、菅さんが消費税発言をした直後に強い反発が出なかったのは事実です。しかしそれは突然のことに有権者が戸惑ってしまったからで、菅さんの説明を聞くにしたがって腹が立ってきた。はっきりいって、有権者の多くは増税の必要性を理解していますよ。

 私だってそうだ。でも「増税の前にやることがあるだろう」というのが有権者の気持ちです。有権者が反発したのは消費税を持ち出したことよりも、それを口にした菅さんに対する不信感があったからです。

田崎 菅さんがなぜ消費税増税を打ち出したのかを忖度すると、財務省の意を汲んだということもあるでしょうが、対自民党の争点をなくすという意図があったんではないでしょうか。

 あちらがいうなら、こっちもいっておこうという。また増税というインパクトで政治とカネ、普天間問題を吹っ飛ばそうという思惑もあった。その感覚は、ある種のゲーム感覚です。

 つまり本質的に、「いま消費税が最大の課題だ」という覚悟を決めて打ち出しているのではなく、対自民、対世論とのゲームをする感覚で打ち出した論点だった。そう思うんですね。

田中 私は菅さんが首相になるときに大きな心配をしていたんです。それは彼には世論が全く読めないということです。

 最近、ある新聞が報じていましたが、鳩山政権時に菅さんは、鳩山さんに消費税増税を勧めていたそうです。「消費税を上げれば参院選で勝てる」とね。おそらく本気でそう思っていたのでしょう。

 だから首相になった直後に支持率をさらに引き上げるため、進んで消費税増税に踏み込んだ。別に勇気ある行動でも何でもなく、計算ずくの政略です。でも、それが全く外れて、世論が読めないという、首相としての資質に関わる問題まで露呈してしまった。

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