暴力団の反撃に
頭を悩ます相撲協会の「現実」

 開催すら危ぶまれた大相撲・名古屋場所は「生中継なし・天皇賜杯なし」でとりあえず始まったが、水面下で協会幹部は、暴力団の「影」に怯える日々を送っている。

 相撲協会の外部理事、理事長代行を務め、名古屋場所初日に協会を代表して挨拶した村山弘義氏の東京・世田谷の自宅には、脅迫めいた電話が入っていたことは報じられている。

 村山氏の夫人が語る。

「あれは月曜日(7月5日)でした。自宅の電話が鳴り、私がいつもどおりに出たところ、男の声で相撲協会の対応について一方的に不満を言ってきたんです。『外部理事がなぜ理事長代行なんだ』とか、『琴光喜をなぜ解雇しなきゃいけなかったんだ』とか、そういった内容だったと記憶しています。
  私は、『お引き取り願います』と応対しました。夕方ごろ世田谷署に相談して、パトロールしてもらうことになりました。被害届は出していません。お騒がせして申し訳ありません」

 その後、昼夜問わず村山氏の自宅の周囲を約30分おきにパトカーが巡回しているようだ。

 相撲協会の旧弊な体質にメスを入れ、改革を進めようとしている村山氏を脅迫する行為は、卑劣というほかない。

 村山氏とともに外部から協会に入り、監事を務める吉野準氏の自宅にも、「異変」があった。

「08年秋に監事を引き受けた直後、自宅に猫の死骸を投げ入れられたことがあったんです」(協会関係者)

 当時からすでに、協会には弟子殴打殺人事件など不祥事が相次いでいた。外部理事、監事に対する嫌がらせ行為は、「真相究明」に抵抗しようという闇の勢力の仕業なのか。

「(吉野氏の自宅に猫の死骸が投げ入れられた事件については)それも聞いたことがあります。私たちも、最近はそういうことを注意して過ごしています。警察も周囲をパトロールしてくれています」(村山氏の夫人)

 名古屋場所自体にも、協会幹部は暴力団の影を感じているようだ。

 名古屋場所初日となった7月11日、会場の愛知県体育館には11人の制服警官のほか、一般の客に交じって多数の私服警官が配備されていた。

 入り口にはカメラが設置され、暴力団関係者がいないかどうか、捜査員が監視した。捜査員は名古屋場所担当部長である二所ノ関親方に対し、

「今日は来てないよ」

 と話したという。もちろん、暴力団関係者を指してのことである。

 山口組の中核組織である弘道会のお膝元で行われる名古屋場所は、「厳戒態勢」で始まったのである。

「今回の相撲界の"不始末"に、暴力団幹部は苛立ちを強めています。野球賭博は、古くからの伝統的なバクチ。きれいに遊んでいれば何の問題もなかったものを、アホな力士のせいで大ごとになった。警察に付け入るスキを与えたんです」(野球賭博にかかわる飲食店店主)

 6月24日に逮捕された元力士・古市満朝容疑者は、野球賭博の胴元について、

「1年前に亡くなった弘道会の元幹部」

 と供述しているというが、警察は当然この供述に納得していない。今後厳しい取り調べがつづき、仮に古市容疑者が「別の名前」を出せば、暴力団側の怒りはさらに激しいものになるに違いない。

「今回謹慎処分を免れている親方、力士のなかにも、暴力団と何らかのつながりのある者は数多くいる。今後、暴力団側がどのような行動に出るか予想がつかない。すでにいくつかの週刊誌に大物力士、親方と暴力団幹部のツーショット写真や交際の事実が出ているが、今後も暴力団側の反撃が予想されます」(スポーツ紙相撲担当記者)

 賭博、タニマチ、飲み食いの世話―さんざん暴力団に世話になった「心当たり」のある力士、親方はいま、胆を冷やしているはずだ。