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「大量被曝者は100人を超えている!」
4000ミリシーベルトの地獄

東電の勝俣会長は、本誌カメラマンを一瞥。酒席の後だったのか、左手に持った高級中華料理店の紙袋で顔を隠すようにしながら自宅の中へ入った〔PHOTO〕船元康子

 東電社員2人の250ミリシーベルト以上の被曝が明らかになったが、実態はそんなものではない!福島第一で働いた7800人のうち6000人の内部被曝量を「把握できていない」と東電も認めた

 東京電力(以下、東電)が衝撃の事実を公表したのは、6月3日のことである。

 3月11日~15日の間、3、4号機の原子炉建屋や中央制御室などで作業をしていた東電の男性社員2人が、福島第一原発の事故の緊急作業で国が定めた被曝限度量の250ミリシーベルトを超える放射線を浴びていたことが明らかになったのだ。

 調査をした放射線医学総合研究所(千葉県)によると、2人の推定被曝量は内部と外部を合わせると、最大で650ミリシーベルトにも及ぶという。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「2人以外にも250ミリシーベルトを超えた作業員がいる可能性がある」と認めたが、彼らと同じ期間に同じ場所で仕事をしていた作業員は約130人もいるのだ。原発の労災に詳しい、関西労働者安全センターの片岡明彦事務局次長が呆れる。

厚労省が昨年作成した、労災が認められた原発作業員の被曝量。10人中9人が100ミリシーベルト以下で発症している

「マスクの装着を徹底していなかったなど、内部被曝に対する対策が不十分だったと思います。厚生労働省の資料によると1976年以降、白血病や多発性骨髄腫にかかり労災が認められた原発作業員は10人いますが、そのうち9人の被曝量が100ミリシーベルト以下(右表)、おおむね70ミリシーベルトほどです。

 250ミリシーベルトという被曝量が、どれほど危険な数字か分かるでしょう。3月15日に引き上げた被曝限度量を、国は100ミリシーベルトに戻すべきです」

 これほど凄まじい放射線を浴びる現場にもかかわらず、東電の作業員への被曝対策は杜撰(ずさん)極まりない。現在、福島第一で働いている東電の協力会社の社員・中山秀幸氏(仮名、40代)が明かす。

1号機原子炉建屋1階に、新たな圧力計を設置する作業員。5月30日には、東電の女性社員2人が女性の限度量5ミリシーベルトを超える被曝をしていることが判明し、厚労省から是正勧告を受けた(東京電力提供)

「元請け(親会社)や東電からは、特に何も言われていません。毎朝、作業前に元請けの所長から携帯用の放射線測量計を渡されるのですが、事故前なら警報が鳴るとすぐに作業は中止になっていました。線量が1ミリシーベルトを超えると『ピー』という短い警報が、5ミリシーベルトを超えると、その警報が鳴り続けるんです。でも最近では警報が鳴っても、誰も作業を中断しようとしない。仲間内では『最初は怖かったけど慣れたな』と話し合っています。以前はうるさくチェックしていた東電も、見て見ぬふりです」

 さらに中山氏は、大半の作業員が「内部被曝量を知らされていない」と続ける。

「現場で2~3時間作業すれば、10ミリシーベルトほどの放射線を浴びていることは承知しています。でも内部被曝量は、東電から教えてもらったことがありません。1ヵ月以上1F(福島第一の通称)で働いている作業員は数百人いますが、250ミリシーベルト以上浴びている人は100人を超えていると思います。マスクを外して寝泊まりする免震棟の内部でさえ、数ミリシーベルトの放射線量が測定されているんですから。先日も休みの日に作業員同士で酒を飲んだ際に、自虐的にこんな話をしたんです。『あと5年もしたら、俺たち全員がんに冒されてるべ』と」

マスクを外す作業員も

 厚生労働省の発表によると、事故発生から3月末までに福島第一で仕事をしたことのある作業員約3700人のうち、2300人が内部被曝量を未測定。5月23日までに広げると、約7800人のうち実に6000人が未測定だというのだ。東電に問うと、「(大半の内部被曝量を)把握できていない」と認めた。

「福島第一にも『ホールボディカウンター』(内部被曝量を計測する機器)はありますが、安全に検査できる放射線量の低い場所がありません。そのため小名浜コールセンター(福島県)で検査を行っているのですが、一人一人の検査にも時間がかかり、多くの作業員を測定できていないんです。福島第一のホールボディカウンターを、『Jヴィレッジ』(福島県内にある事故対応の前線基地)に移そうと考えています」(広報部)

3号機原子炉建屋の西側で、毎時12ミリシーベルトの放射線を放つ瓦礫が発見され、注意書きがされる(東京電力提供)

 事故発生から、すでに3ヵ月が過ぎた。なぜもっと早く移設できないのか。作業員の命を本気で守ろうとする気があるとは、到底思えない。

 作業現場では、さらに恐ろしい事実が明らかになっている。東電は6月4日に、1号機の原子炉建屋内の配管付近から、毎時4000ミリシーベルトの湯気が噴出していると発表したのだ。これは事故後に観測した最大の値で、広島に原爆が落ちた時の爆心地から1kmほどの放射線量と同等、一度に被曝すると半数の人が死に至るという数値である。

「免震棟には『サーベイマップ』と呼ばれる、1Fの200ヵ所以上の地点で観測した放射線量を記した地図が貼られているのですが、更新されるたびに数百ミリシーベルト以上の高い数値が次々と書き加えられているんです。作業員たちは『今さら対策を考えても仕方ねぇ』と、開き直っています。6月に入り気温が上昇してからは、屋外での作業中にマスクを外す人までいるんです。東電社員は、注意もしません」(前出の作業員・中山氏)

 こうした状況に警鐘を鳴らすのは、多くの原発作業員を診察してきた虎の門病院の谷口修一・血液内科部長だ。

「大量の放射線が放出される場所で、マスクを着けないで作業するなど論外です。東電は、作業員の全身完全防護を徹底しなければなりません。大量被曝した作業員は、まず生殖機能が破壊され骨髄機能がダメージを受ける。さらに放置していると、5~10年後には白血病、悪性リンパ腫を発症する人が続出するでしょう」

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