野田も仙谷も自民党も迫力不足
土俵際で菅政権が生き残り、政界再編も大連立も消えた

残る焦点は「大増税」
〔PHOTO〕gettyimages

 与野党を巻き込んで展開された「菅降ろし」の策謀は、ひとまず失敗に終わったようだ。肝心の菅直人首相が驚異の粘り腰を見せる一方、攻める側が土壇場で腰が引けてしまい、攻めきれないでいるからだ。

 このままなら2011年度2次補正どころか、秋から本格化する12年度予算編成さえも菅の手に委ねかねない展開である。

 菅は6月15日夜、亀井静香国民新党代表と会談し、亀井から内閣改造の進言を受けた。おそらく菅は改造をめざすだろう。政権が窮地に陥ったとき、内閣を改造して求心力を取り戻そうとするのは常套手段である。

「次は、あんたが大臣だ」とささやかれれば、たいていの政治家はとたんに腰砕けになって、忠誠を誓ってしまう。菅は攻撃に回ると強い。「どうせ、オレと本気になって刺し違える覚悟のある奴はいない」と見切って、相手の弱みにつけこんでくるはずだ。

 逆に菅降ろしをめざす側は、これがラストチャンスになる。

 菅が一本釣りで狙った議員に声をかけても、だれもが次々と「総理、もうお辞めください。潮時です」と拒否できれば、菅は内閣改造もできない政権であることが明々白々になって、再びピンチに陥る。

 そうなれば、内閣にとどまっているほうがみっともない。閣僚の中から「私は菅政権についていけない。辞任する」という動きが相次いでもおかしくない。

 仮に閣僚が総辞職しても総理がすべて兼任できなくもないが、そこまで行けば、さすがに政権は立ちゆかない。そんな度胸のある政治家が民主党に何人いるのか。

 野田佳彦財務相が特例公債法案を可決成立させられるなら、自分の首を差し出す意向を表明した背景には、そんな思惑もあっただろう。だが、菅にしてみれば、タイミングが早すぎて、かえって好都合だったのではないか。

 もしも政局が緊迫して、のるかそるかという局面で劇的な「野田辞任」ともなれば、菅に打撃となったはずだが、これでは「なんだ、野田は早くもポスト菅に色気を見せたのか」と政争劇を見る側はシラけてしまう。

 仙谷由人官房副長官が周辺に辞意を漏らしたという話も同じである。

 仙谷の揺さぶり作戦であることが、みえみえなのだ。逆に手詰まり感すら印象づけた。もともと「仙谷と野田は菅降ろしで連動している」とみられてきた。仙谷の暗躍については、与党内でも「菅政権の官房長官、官房副長官と日の当るポストに就いていながら、なんだ」という反発がある。

 そんな2人が辞めたところで、菅には痛くも痒くもないだろう。仙谷が政権中枢から消えて行くのはかえって好都合くらいに見ているのではないか。

「仙谷の関係者がいつも同席していた」

 菅は土俵際一杯まで攻めこまれていたのに、どうしてこうなってしまったのか。

 元をただせば、鳩山由紀夫元首相が民主党を分裂させたくない一心で、内閣不信任案に反対する姿勢に転じたところで勝負が決まった。

 もしも鳩山と小沢一郎元代表の連携が最後まで崩れずにいたら、おそらく不信任案は可決成立し、民主党は分裂、政界は一挙に再編へとなだれ込んでいた可能性が高い。だが、いまとなっては後の祭りである。鳩山が菅をペテン師とののしっても、半分、そうと知ったうえでの騙されたふりに違いないから、ばかばかしいだけだ。

 鳩山が心変わりする理由になった退陣表明の筋書きを書いたのは、北沢俊美防衛相と鳩山側近の平野博文元官房長官である。だが、ある閣僚経験者は「平野と北沢の会合には、仙谷の関係者が常に同席していた」と私に語った。

 つまり、いま菅降ろしの急先鋒に見える仙谷も退陣表明が玉虫色であるのを初めから承知しながら、菅の自発的退陣に期待していたのだ。このあたりに降ろす側に、詰めと覚悟の甘さがあった。

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