G20首脳会議、米紙が1面トップで報じる抗議デモを黙殺する日本の大新聞
まるで政府広報紙

 厳重な警備が敷かれるなか、世界20ヵ国・地域(G20)の首脳会議(サミット)が開かれ、世界経済について議論している。会議場周辺では、アメリカ主導のイラク戦争や中国の人権抑圧などに抗議する非政府組織(NGO)がデモ行進している。

ワシントンポスト

 さて、あなたが新聞の編集者なら、1面に使うサミット関連写真をどう選ぶか。首脳が笑顔で一堂に会している写真か。それともデモ隊と警察が対峙している写真か。どちらの写真を使うかで、ジャーナリストとしての根源的な価値観を問われる。

 G20首脳は「サミットが成功している」との印象を与えたい一方で、NGOは「サミットは間違っている」と訴えたい。単純化すると、G20首脳の写真を使う新聞は「権力寄り」、NGOの写真を使う新聞は「市民寄り」と色分けできる。

 その意味で、サミットをめぐる報道はリトマス試験紙として使える。その結果は? 日本勢は「権力寄り」、アメリカ勢は「市民寄り」だ。

 6月にカナダ・トロントで開かれたG20サミット報道を点検してみよう。サミットが閉幕したのを受け、同月28日付のワシントン・ポスト(上写真)は1面全6段のうち3段を使い、抗議デモの写真を掲載。写真の中では、ヘルメットをかぶった警官とバンダナで顔を覆ったデモ参加者がにらみ合っている。

サミット首脳の記念写真を無視したニューヨーク・タイムズ

   カメラに向かってバラク・オバマ大統領がG20首脳と一緒に手を振っている写真は、中面に追いやられていた。ここからは「G20サミットを象徴する写真は笑顔の大統領ではなく、怒りのデモ参加者」という編集上の判断が読み取れる。

ロサンゼルス・タイムズ(上)ニューヨーク・タイムズ(下)

 対照的に、日本では抗議デモを1面ニュースとして取り上げた主要紙は皆無だった。

 6月28日付の朝刊で、読売、朝日、毎日、日本経済の各紙は中面で抗議デモの様子を写真とともに伝えていたものの、地元メディアの報道を「転電」する程度だった。転電とは、「地元メディアによると」などと他紙の報道を引用する記事のことだ。

 これよりも鮮明に"日米格差"が出たのが昨年9月のG20サミットだった。アメリカ・ピッツバーグに世界各地からNGOが集合し、数千人規模のデモ行進に出た。アメリカの主要紙は破格の扱いでこれを報じた。

 サミットが閉幕した翌日の9月25日付の紙面で、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズといった有力紙がそろって1面に使う写真として抗議デモを選んだ。

 ニューヨーク・タイムズとロサンゼルス・タイムズは題字のすぐ下、つまり一番目立つ位置に写真を載せた。全6段のうち4段ぶち抜きで、新書がすっぽり収まるほどの大きさだった。

 1面で「隊列を組む警察隊」の写真を載せたニューヨーク・タイムズは国際面でもサミット報道を展開。国際面では「警察から催涙ガスを投げつけられるデモ隊」と「ガラス窓が割られる商店街」の2点を使った。国際面の「催涙ガス」は1面の「警察隊」よりも大きかった。

 オバマ大統領も含め、ピッツバーグに集合したG20首脳の写真はどこに載ったのか。1面にも国際面にもどこにもなかった。サミット閉幕は、G20首脳が一緒にカメラの前でほほ笑む記念写真を使う絶好のタイミングであるのに、ニューヨーク・タイムズは無視したのである。

 1面で「マスクをかぶって警察隊の前で抗議するデモ参加者」の写真を載せたロサンゼルス・タイムズは、オバマ大統領を完全に無視することはなかった。別刷りの「ビジネス」セクションの1面で「G20首脳の晩餐会に向かうオバマ大統領夫妻」という写真を採用した。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら