「国家戦略局断念」で露呈した菅政権内での「権力交代」
参院選で惨敗直後の安倍政権とそっくり

 7月16日、朝日新聞以外の扱いは小さかったが、あれっと驚く記事が朝刊に出ていた。閣内の政策調整を担ってきた国家戦略室の機能を縮小し、首相に政策提言や情報提供を行う「助言機関」とする方針を固めたというのだ。

 ちょっと待てほしい。惨敗した参院選用の民主党マニフェスト2010で国家戦略室の設置は【実現したこと】の二番目にあがっていた。それをもうやめるというのはいかがなものか。

 国家戦略「局」は、昨年政権交代した民主党の脱官僚の目玉政策だった。本来であれば、いの一番に内閣法等の法律改正して設置すべきであった。ところが、鳩山政権は、どんな理由が知らないが、法律改正せずに、国家戦略「室」でスタートした。

 法律改正がないので、国家戦略室の位置づけや権限関係も曖昧である。これは官僚に一杯食わされたなとみていた。官僚は法律によってガバナンスされるのを嫌い、法律がない状態で事実上の権限行為することを好む。

 その後、民主党は政治主導確立法案を先の国会で提出したので、遅ればせながらやっとやるのかと思っていたところ、今度の菅政権でもうやめたというのである。政治主導のためには、国家戦略局のような組織は必要だ。これを事実上なくすということは、官僚依存に戻るということである。

 さらに言えば、荒井聡国家戦略相は「助言機関」の大臣として歳費をもらうのだろうか。落選したにもかかわらず居座り続ける千葉景子法務相といい、こうした身内に甘い「ムダ」を省かない民主党は国民からそっぽを向かれるだろう。蓮舫行革刷新相、これでいいのでしょうか。

ちょっと思い返すと、私が官邸にいた2007年の参院選挙後と似た状況なのに気がついた。

 2007年7月の参院選は、今と全く逆の状況で、自民党が大敗を喫し、衆参のねじれになった。当時の安倍晋三総理は続投したが、8月に内閣改造を行なった。そこで、官房長官は塩崎恭久氏から与謝野馨氏に代わったのである。

 その結果、総理の健康問題も大きな理由だったのだろうが、与謝野官房長官が官僚グループのサポートを得て、官邸内の主導権を急速に握っていった。

 官房長官は、権力と情報が集中する枢要ポストだ。だから、官房長官秘書官(事務)は財務省、外務省、警察庁、内閣府から出すのが慣例になっていた。そこに、与謝野官房長官は、経産省からの秘書官(政務)を加えた。

 官僚側にとっても、官房長官秘書官ポストに人を出すことは大きなメリットがある。官房長官に権限と情報が集まれば集まるほど、官房長官は時間的に忙しいのですべてに目配せができず、結果として官僚側に好都合になるからだ。

 一方で、官房長官は、官僚のサポートを受ければ、権限の集中で、事実上の実権を握ることができる。

財務省が菅首相を見切った

 この観点から見ると、国家戦略室を縮小するということは、官邸内で仙谷由人官房長官の権限を拡大することになる。一方、本来国家戦略室が行うとされていた予算の基本方針などは財務省が行うこととなる。

 そもそも荒井聡国家戦略相や平岡秀夫国家戦略室長は菅グループの腹心である。彼らを予算編成から外すというのは、菅政権において、菅直人総理は裸状態になったのだ。

 これは、財務省がすでに菅直人総理を見切り、仙谷由人官房長官をサポートし、同氏を実質的な権力者にしたてつつあることを意味している。もはや菅総理は死に体であり、菅政権が仙谷管理内閣に移行しているのだ。

 もちろん、この流れはあくまで反小沢で固まっている菅政権の内部での話だ。

 民主党全体まで広げてみれば、小沢一郎氏の動きが気に掛かる。

 前回のこのコラム(みんなの党「10議席獲得」で「ねじれ国会」はマーケットの好材料になる)で書いたように、弁護士の郷原信郎さんによれば、東京第5検察審査会の補助弁護士が今はいないという。となると、7月末に出るといわれていた2回目の議決が8月以降先送りされて、9月の民主党代表選後になるかもしれない。

 このまま、9月の代表選に菅総理は出馬できず、なし崩し的に菅政権から仙谷政権になるのか、また菅総理が巻き返すのか、それとも、検察審査会の2回目の議決をみながら、小沢一郎氏本人かその周辺から出てくるのか

 3年前は、結果として安倍総理は9月12日に退陣を表明した。今回も参議院は「直近の民意」であるので、負けた総理が居残るのはかなり難しいだろう。それが、国家戦略室の格下げ・縮小ではっきり見えてきた。

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