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税務署は狙っている! ある朝、マルサがやってきた(後編)
田園調布にある中内家の豪邸と、故・功氏の邸宅跡

第3部 こんな「会社、商店、個人」が狙われる

 朝日新聞の国税担当記者だった落合博実氏は、'80年代はじめ、東京国税局の幹部からある「内部文書」を見せられたという。

「重要事案管理対象者名簿というタイトルで、文書右肩には『極秘』のスタンプが押してありました。直税部(現課税部)資料調査課(通称リョウチョウ)がマークしている著名人、重要人物のリストでした」(落合氏)

極秘リストにあった有名人

 そこには、
・小佐野賢治・国際興業社主
・小針暦二・美福社長
・岡田茂・三越社長

  の名前があった(肩書は当時)。

 名前の下には、「札幌で6億円の別荘を物色中」「大量の保有株を譲渡」「仮名口座で株取引」など、リストアップした理由が詳細に記されていたという。

「当時、『課税処分が終わるまでは絶対に記事にしない』という約束で見せてもらったものですが、いまでもこの種の名簿は作成されているはずです。政治家、有名芸能人、スポーツ選手、オーナー企業社長らをターゲットに長期間にわたって情報を収集・蓄積し、いよいよ脱税の疑いが濃厚と判断すると税務調査に着手するわけです」(落合氏)

 国税のターゲットになる人・会社・商店とは、どういうところか。

 昨年11月、脳科学者の茂木健一郎氏が、東京国税局から3億数千万円の申告漏れを指摘され、1億数千万円の追徴課税を受けた。また10月にボクシングの亀田興毅・大毅兄弟と、所属していた亀田プロモーションが8000万円の申告漏れを指摘されている。

「頻繁にテレビに出たり、著作がベストセラーになっている人の納税は、確実にマークされます。茂木氏レベルだと申告漏れの額はそれほど大きくありませんが、世間に『あの茂木さんも』と思わせる効果が大きいので、リークされて大々的に報じられる。芸能人もそうですが、一罰百戒的な効果を狙っている面が大きいのです」(元東京国税局調査官・久保憂希也氏)

 同じく元調査官の高木重利氏は、国税局内でターゲットをランク分けし、管理していると話す。

「政治家や著名人は、国税局のリョウチョウがすべて管理しています。それ以外は、所得に応じたランク付けが行われています。

 普通のサラリーマンで普通の生活をしている人が目を付けられるとすれば、住宅など大きな買い物をしたときくらいです。住宅の場合、所得税、贈与税が発生してくる可能性が高い。登記簿に変更があると、その情報はすべて税務署に入りますからね。

 相続についても、生前から確定申告をしているような富裕層の方が亡くなれば、相続税が発生する可能性が高いですから、生前からしっかりとデータを集めています」

 6月3日、さいたま地検はダイエー創業者の故・中内功氏の次男・中内正容疑者を相続税法違反の容疑で逮捕した。中内正容疑者は自宅としていた東京・田園調布の土地の一部を父・功氏から贈与されていたにもかかわらず、贈与税を支払っていなかったという。

 これには、「脱税コンサルタント」として知られる八木宏之被告の指南があった。八木被告の税務調査で押収された資料から、中内容疑者の名前が浮かび、査察部が内偵していたのである。

「居住用財産の特別控除制度を利用して、実際には住んでいないのに登記簿上自分のものとし、住民票も移して、郵便物も届くようにする。電気やガス、水道なども定期的に使いっぱなしにして使用実績を作っておく。節税のためにそこまでする人もいますが、違法行為ですからいずれ税務署にバレますよ」(税理士・北田朝雪氏)

 一時富裕層の間で、香港など海外に口座をつくり、資産を移すことが流行したことがあったが、昨年から制度が変わり、100万円以上の海外送金はすべて税務署に報告されることになった。当然、多額の資産を移せば、あっという間にマークされることになる。

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