中村繁夫[アドバンスト マテリアル ジャパン社長]54歳でリストラの危機から、レアメタルで年商340億円へ

 AMJの社長室は透明のガラス張りになっている。社長の席からは社員の顔が丸見えだ。

「社員の表情を見ていると、ああ、こいつ悩んでるなあ、と分かる。
  するとリスク回避につながるんです。
  向こうは向こうで、こっちを檻の中のトラみたいに見ている(笑)」

 「山師」という言葉をご存知だろうか。イチかバチかを狙ってハイリスク・ハイリターンに賭ける「現代の山師」のようなイメージで、レアメタル専門商社を率いる中村繁夫氏に会うと、イメージを裏切られる。ユーモアたっぷりな前向きな理論家の話を聞いていると、彼が掘っていけばきっと「鉱脈」にぶちあたるような気さえしてくる。勇気が湧いてくるのだ。

 彼の言葉はチャンスをものにするキーワードに溢れている。

「俺たちは沈みゆくタイタニック号を捨て、大きな宝を探す海賊船に乗り換えるんだ」

 これは2002年当時、大阪の中堅商社「蝶理」のレアメタル部門の部長を務めていた中村繁夫氏が十数名の部下を前にして発した宣言である。危機感、気負い、勇気、ロマン・・・それらが混ざり合った印象深い言葉だ。

 会社がレアメタル部門の切り売りを選んだとき、中村氏は「会社に残るか、辞めるか」の二者択一の選択を迫られた。それは事実上のリストラ勧告だった。サラリーマンにとって、これほどのピンチはない。

 このとき54歳。会社に残って定年退職まで待てば、退職金をもらって悠々自適の生活ができる。こちらが一般には安易な道だ。

 ところが、「岐路に立ったら困難な道を選ぶことにしている」という中村氏は、迷わず会社を出ることを決意した。リストラ勧告を「チャンス」と受けとめたからである。

なかむら しげお
アドバンスト マテリアル ジャパン代表取締役社長。
1947年、京都府生まれ。静岡大学農学部木材工業科大学院卒。大学院在学中、世界放浪の旅へ出る。ヒッピーのような生活で35ヵ国を放浪。
中堅商社「蝶理」に26歳で入社。約30年勤務し、レアメタル関連部門での輸入買い付け業務にほぼ従事。54歳でリストラ勧告。
レアメタル事業をMBOで引き継ぎ、2004年、日本初のレアメタル専門商社アドバンスト マテリアル ジャパンの社長就任。著書に、『2次会は出るな!』『放浪ニートが、340億社長になった!』、雑誌「ウェッジ」連載『プラネティストが行く』など 〔PHOTO〕タネイチ(以下同)