郵政票の総動員でも惨敗した民主党
「100万票」の郵政集票マシンは健在だったが

 11日の第22回参院選で予想を大きく上回る惨敗を喫したことを理由に、連立政権の組み替えを取り沙汰する議論が盛り上がりをみせている。

 しかし、菅直人首相には、そのような連立論議より前に対峙しなければならない問題がある。小沢一郎前民主党幹事長のグループを中心に高まっている惨敗の責任を問う声への対応だ。

 打開策として俎上に上っているのは、小沢グループへの幹事長ポスト奉還説である。

 枝野幸男幹事長の更迭によって大敗の責任を明確にし、その後任を小沢氏本人かその側近から選ぶ人事があり得るという。

 当の首相は、早々と自身の続投の意欲を表明しただけでなく、枝野氏ら側近も擁護する構え。だが、小沢グループとのディールが成立しないと続投は難しい。

 鳩山由紀夫前首相の民主党代表職の任期を引き継いだ菅さんの任期は9月に満了で、代表選が行われる予定のため、小沢グループとのガチンコの闘いが避けられなくなるという。

 いずれにせよ、民主党では党内の権力闘争が始まっている。なんとも皮肉だが、民主党が掲げた「国民の生活が第一」というマニフェストは早くも風前の灯だ。

 「1人区はほとんど当確ラインに滑り込ませることができたのではないか」――。

 投票日の3日前のこと。散発的ながら苦戦を伝える報道が目立ち始める状況だったにもかかわらず、筆者に対して、民主党の選挙に強い手ごたえを感じると明かした人物がいた。この人物は、日本郵政グループの2つの集票マシーン(全国特定郵便局長会とJP労組)の支援を担当する人物。

 それぞれの組織が締め付けを順調に進めており、支援する候補者に自分たちが持つ組織票をきっちりと流し込める目途がついたと胸を張って語ったのだった。

 その言葉にウソや脚色はなかった。裏付けは、比例区の得票結果である。国民新党の比例区候補の長谷川憲正・総務政務官は、40万6302票の獲得に成功した。ちなみに、国民新党は、同党と7人の候補で合計99万8797票を得ている。「100万票」と言われた全特の集票マシーンとしての健在ぶりを見せつけた。

 また、JP労組も、同労組の役員経験者である難波奨二氏に14万4668票を獲得させている。これは、全部で16人が当選を果たした民主党の比例区の候補者の中で、7位という高い位置での当選である。

 だが、当落という結果では、この郵政関係者の予測は大きく外れた。

 一人目の当選に党全体で100万票を超える得票が必要という「比例の壁」に阻まれて、国民新党は1議席も獲得できなかった。民主党も改選議席を10も下回る44議席しか確保できなかったからである。

ハラキリと笑われた温暖化対策基本法

 この郵政関係者の読み違いが象徴しているのは、選挙のプロたちにも予想ができないほど、民主党政権への有権者の批判が高まっていたという事実である。

 その背景には、首相が自分でも「唐突だった」と認めた消費税の引き上げ論議を始めとした、様々な幼稚で稚拙な論議が影を落とした感は否めない。

 鳩山前首相の米軍普天間基地の移転を巡る一連の発言や、前原誠司国土交通大臣の日本航空(JAL)実質国有化は、そのさいたるものだ。

 鳩山内閣が提出した日本郵政を国策会社化する郵政改革基本法、米紙にハラキリと揶揄された地球温暖化対策基本法、そして歳出の削減に繋がらない公務員制度改革法など一連の法案では、菅政権誕生のドタバタに紛れこませて、先の通常国会における強行採決が先送りにされ、昂然と争点隠しが行われてしまった。

 民主党政権は、そうした杜撰な事例に事欠かない。小沢前幹事長のサイドにも、「政治とカネの問題」で民主党政権の基盤を危うくした責任が存在するし、各地の「2人区」で強引に2人の候補を立てながら2人の当選を果たせなかった(3人区や5人区を除く)問題など、参院選を難しくした問題は少なくない。

 それだけに首相サイドには、小沢グループへの譲歩を潔しとしない面が残っているのかもしれない。

 事態打開のボールは菅首相の手元にある。このままでは、他党との連立の追加・組み替え交渉に辿り着く前に、民主党が分裂・瓦解するリスクさえはらんでいる。

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