新聞社と通信社がテレビ市場に参入
[韓国]広告収入の低迷で採算の確保が課題

朝鮮日報内の放送スタジオ

 韓国で朝鮮日報などの大手新聞社と通信社が株主となる五つの事業者が今年末、ケーブル網を通じて全国に番組を発信するテレビ放送市場に参入する。新聞社の放送事業進出は長く禁じられてきたが、関連法が改正され可能になった。広告収入の激減に苦しむ新聞、通信各社はテレビ事業進出で活路を見いだしたいとしているが、放送広告の市場は限られており、既存の地上波3局(KBS、MBC、SBS)を交えた激しい競争が繰り広げられている。

 新規のケーブルテレビ事業者は、韓国の放送通信委員会が昨年12月31日に選定した。ドラマやニュースなど多様なコンテンツが提供可能な総合編成チャンネルに中央日報、朝鮮日報、東亜日報と毎日経済新聞をそれぞれ大株主とする4事業者と、報道専門チャンネルには通信社の聯合ニュース主体の1事業者が選ばれた。

 同国の新聞とテレビの両業界は、歴史的に政治に翻弄されてきた。1980年5月に起きた韓国で最大の民主化闘争とされる「光州事件」を鎮圧した全斗煥将軍が大統領に就任すると、韓国のメディアは一斉に政権批判を強めた。批判の封じ込めを図る全政権は、地方紙を各道(日本の県に相当)1紙に規制し、放送局を公営のKBS(韓国放送公社)と半官半民のMBC(韓国文化放送)の2局に統合。

 さらに、新聞社と放送局の事業兼営を禁止するメディア規制策を断行した。その後、新聞統合の枠は緩和され90年代のSBS(ソウル放送)誕生で民間放送は復活したが、新聞の放送事業への参入規制は継続されてきた。

 08年に発足した李明博政権は、メディア市場を活性化するとして規制緩和に乗り出し、09年に新聞社や大企業による放送事業参入を認める「メディア関連法」の改正を進めてきた。その結果、報道や娯楽、教養など総合的な番組を制作・放送する「総合編成局」と、ニュース報道を専門にする「報道専門局」の新規参入が決まり、事業者を募集していた。

 新規に選定されたのは、総合編成局に参入申請した6社のうち、▽CSTV=朝鮮日報社など、資本金3100億ウォン(約230億円)▽jTBC=中央日報社、中央メディアネットワークなど、同4220億ウォン(約312億円)▽チャンネルA=東亜日報社など、同4076億ウォン(約302億円)▽毎日経済TV=毎日経済新聞社など、同3950億ウォン(約292億円)の4事業者。

 報道専門局に参入申請した5社からは、聯合ニュースTV=聯合ニュースなど、同605億ウォン(約44億8000万円)が選ばれた。

 新規の5社は、今年末の開局で足並みをそろえることに合意しており、現在は職員募集を進めながら放送機材の整備、さらに放送コンテンツ(番組プログラム)の制作準備を進めている。

 韓国でも日本と同様に、テレビ広告市場は厳しい現状が続いており、採算が確保できる総合編成テレビ局は既存の地上波3局に加えて1~2社が限度ではないかとみられていた。ところが韓国政府は総合編成局で一気に4社の参入を認めたことから、新規参入事業者が発表された際にはメディア関係者からは驚きの声が出たという。

放送業界に過当競争の懸念

 これに対して、新規参入を決めた各社も強気の反応を示している。中でもCSTVに出資した朝鮮日報社の幹部は「後発局の我々は報道、ドラマ、ドキュメンタリーなど、すべての部門で、先行する地上波テレビ局より高品質の番組作りを目指す」とアピールする。さらに「これまで地上波3社の市場独占で、外部プロダクションやフリーの人たちが腕を振るう機会は限られていた。こうした有能な人材を発掘していきたい」と話し、競争が韓国のテレビ界に好結果をもたらすと肯定的だ。

 既存テレビ局のMBCで、03年9月から04年3月まで放送された「宮廷女官チャングムの誓い」などのテレビドラマは「韓流ブーム」の先駆けとなり、日本だけでなくアジア各国で放送された。韓国の放送業界には、有能な人材が埋もれており、彼らの活用で番組の質はいっそう向上し、海外市場での競争力も強化できるという見方だ。

 しかし、テレビの広告市場の伸びが低迷している中で、過当競争を心配する声は根強い。韓国の地上波放送と有料放送を合わせたテレビ広告市場は、年間3兆ウォン(約2220億円)程度で推移している。日本の10分の1程度の規模で、韓国の国内総生産(GDP)や人口に比べても小さいとされる。

 韓国の民間研究機関「メディア未来研究所」は「欧米では広告収入の減少からテレビ局が統廃合されている。韓国でもいずれ欧米と同じような既存の地上波テレビ局を含めた統廃合が始まる可能性がある」と分析し、新旧交えた広告獲得競争の激化を予測している。

 今回のメディア関連法の改正は09年に、韓国で大きな政治の争点となった。国民に影響力が大きい放送局の社長は、政権交代に伴ってたびたび交代させられてきた経緯があり、保守派を基盤に当選した李大統領も就任後に、「進歩派寄り」といわれたテレビ局社長の解任手続きを取った。

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