消滅に向かう消費者金融の救世主になるか? 橋下大阪府知事の「貸金業特区構想」
人気知事が打ち出した意外な一手

 私的整理への道を選んだアイフルはもちろん、独立系の武富士も、背後にメガバンクが控えるプロミスもアコムも、消費者金融業という業態自体が、消滅しようとしている。そんな中、業界にさした一筋の光明となったのが、橋下徹大阪府知事の貸金業特区構想だった。

 大阪府が正式提案したのは7月6日だ。その情報が流れた5日の証券市場は、消費者金融株が久々に活気づき、株価は急伸した。

 自見正三郎金融・郵政担当相は、「出資法の上限金利を上回る貸し付けは刑罰の対象。地域で刑罰が異なるのは法の公共性に反する」と、早くも牽制する。

 もともと中央集権の「霞が関」と「永田町」にとって、地方自治の旗を掲げてマスコミと府民に人気が高い橋下知事は面白くない存在だ。それだけに「貸金特区」の実現までには難航が予想される。

 しかし、ひとつの産業が国の政策で取り潰されようとする時、「利便性」と「必要性」の観点から、地方公共団体が横並びの規制に抗して「構造改革特区」を利用するのは、悪いことではない。

 6月18日に完全施行された改正貸金業法は、上限金利を年20%とし、個人の借入総額を年収の3分の1に制限、専業主婦には配偶者の同意を必要とするなど規制を強化した。約1200万人の消費者ローン利用者のうちの半分が借入を断られ、「サラ金難民」となることが予想されている。

 貸金特区構想は、中小零細事業者や小口利用の個人の"救済"を目的としている。

 大阪府の提案によると、1年以内の中小事業者向けの融資と、20万円以内の個人向け融資は上限金利を29.2%に戻し、総量規制は緩和、専業主婦については上限50万円の少額貸付を認める。

 現実的な提案だろう。明日の手形を落とす為に「つなぎ融資」を求める業者にとって、上限金利や総量規制で借入を阻まれるのは死活問題である。次の給与までのつなぎを消費者金融でつける主婦もいれば、連休の家族旅行を賄う一家もある。

 そうした多様性を「多重債務対策」の一点で奪い、消費者金融という業態を追い込んだのが、金融庁と「クレジット・サラ金問題」に取り組む弁護団に連帯した政治家だった。

 貸金業法は改正され、業界は窮地に立ち、それに輪をかけたのが裁判所。グレーゾーン金利を認めないという最高裁判決は、過払い金返還請求の山となって、大手4社といえども経営は立ち行かなくなった。

 だが、これが「正しい行政」「正しい司法」の在り方だとはとても思えない。ひとつの産業を、「法」の力で追い込み、潰してしまったのでは、「サラ金」の時代から四半世紀をかけて正常化、認知されてきた無担保小口金融の歴史が無意味となる。

 私は、1980年代前半、玄関先や電話口で怒声を浴びせかける「無法の回収」の時代から、この業界の取材を続けてきた。

 無法は長続きしない。やがてマスコミを挙げてのサラ金批判が始まり、「サラ金二法」によって、行政に組み入れられると批判は徐々に収まった。「ティッシュ配り」や「深夜枠に限ったテレビCM」で業界は無担保小口をアピール、「消費者金融」と名を換える頃には末端金融として認知された。

 その後、大手が次々に上場、経団連にも迎え入れられ、金融業者としての存在感を示すようになった。この四半世紀は、まさにひとつの無法の業態が、「産業」となる歴史だった。

 もちろん健全な道をストレートで歩んだわけではない。暴力団関係者が関与した上場、オーナーの故・武井保雄元会長が引き起こした盗聴事件など、最大手の武富士に象徴される"裾の汚れ"はあった。しかし、それは無担保小口金融というビジネスに関するものではなかった。

9月末に落としどころをを探る

 「消費者ローン依存症」とでもいうべき多重債務者のたらいまわしや、元本を返済させず、「生かさず殺さずに金利を収奪」など行き過ぎの側面はあった。だが、それを上回る需要があったから消費者ローン各社は大きく発展、10万人を超える雇用を確保する業界となった。

 「明日のカネ」に汲々とする層は、いつの時代にも存在する。不況下ではさらに増える。、「貸さない親切」という言葉は、下層社会を生きる信用のない人たちにとって、生存権を奪うに等しい。

 橋下府知事は政治家としての嗅覚に優れた人である。中央集権の「机上の論理」の欠落を見抜き、早速、打って出た。

「改正法は安易な規制で知恵がない。今は小口で借りたい人にも貸せないようになっている。金利は市場に委ねるべきだと思う。債務整理は行政が機関を作り、前面に出てやっていけばいい」

 会見でこう述べた橋下府知事は、前述の自見金融相の発言にある困難は承知のうえで、あえて一石を投じた。大阪の「金融都市」としての再生を見据え、政府が「金融特区」の可否を示す9月末までに、したたかに"落とし所"を探る作戦である。

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