「オフレコ問題」であらためてわかった
無能なのに事実を隠蔽する経産官僚の体質は「原発問題」と同根

 菅直人首相の退陣騒動を追いかけていて一時、中断したが、経済産業省の問題を忘れていたわけではない。先々週まで当コラムで4回にわたって書き続けた資源エネルギー庁長官のオフレコ発言と、それに端を発した経産省の記者締め出し問題である。

 ざっと経緯を振り返ろう。

 東京電力・福島第一原発事故をめぐって、政府が被災者への賠償案をまとめた。株式は100%減資せず、金融機関の債権カットもないので、結局は電力料金値上げの形で国民負担になる。本質は東電救済案だ。

 枝野幸男官房長官は政府案決定後の会見で銀行に債権放棄を求める考えを示した。すると、細野哲弘資源エネ庁長官がマスコミ各社の論説委員を集めた懇談会で、枝野発言について「オフレコですが、いまさら官房長官がそんなことを言うなら、これまでの私たちの苦労はいったい、なんだったのか」と感想を述べた。

 私が細野発言を5月14日付当コラムで紹介すると、経産省は私の上司に抗議してきた。それも17日付当コラムで報じると、今度は経産省クラブ詰めの東京新聞記者を懇談出入り禁止処分にした。それもまた20日付コラムで報じた。

 私は見解を質すために経産省の官房広報室長に何度か接触を試みたが、室長は逃げ回るばかりで、これまで私自身にはなんの抗議も説明もしていない。

 一連のコラムはツイッターやメールで多くの反響を呼んだ。

 私は知らなかったが、新党日本の田中康夫代表は6月2日、ニコニコ生放送の政局特番で同席した際、資料を私に手渡しながら「黙っていて悪かったけど、実は衆議院の予算委員会で長谷川さんのコラムを使わせてもらいました」と笑顔で教えてくれた。

 田中は5月16日の衆院予算委で枝野を次のように直撃していた。

 田中: 「(枝野長官は)東電とステークホルダー、いわゆる株主と銀行の自助努力の範囲で賠償資金を出す、こう発言された。それでよろしいか」

 枝野: 「ご指摘いただいたように、電気料金等に転嫁せずに一定の年月をかけて負担をステークホルダーのご協力を含めて出すことができると考えている」

 田中: 「枝野さんが発言した翌13日に細野資源エネ庁長官は『そんなことを言うなら、なんのために今回の賠償スキームを作ったのかという気分だ』と言っている。出席した論説委員が証言している。つまり『我々(資源エネ庁)は東京電力と株主、銀行の利益を守るために今回のスキームを作った』と述べているに等しい」

 枝野: 「電気料金や税金等に、少なくともそれに相当する金額を企業そしてステークホルダーの努力によって出すことはできると考えている」

 以上がやりとりの一部である。

 田中の所属する新党日本は国民新党とともに民主党と連立を組み、与党の一角を形成している。田中は与党でありながらも、政府の賠償案は国民に負担を転嫁させる仕組みになっており、おかしいと問題点を追及していた。

 こうした質疑が国会で繰り広げられただけでも、私のコラムは意味があった。オフレコ発言を報じることで枝野と細野の食い違いをあきらかにし、賠償案の問題点を浮き彫りにする効果があったと思う。

オフレコはただの情報操作

 東京新聞記者の懇談出入り禁止を受けて、私は広報室長から事実経過を聞いたうえで私の考えを説明し、処分撤回を求めようとした。

 まず問題の論説委員懇談会は経産省の記者クラブとなんの関係もない。私は記者クラブに加盟もしていない。また多数の論説委員が出席している場で、官僚が一方的に「これはオフレコで」と宣言したところで、オフレコは成立しない。

 オフレコがありうるのは、基本的に他の第三者がいない場で両者が明示的に同意した場合だ。多数が出席する公開の場では、だれかがオフレコ内容を匿名で外に漏らしたとして、だれが「犯人」と分かるのか。初めから守られない可能性があると知ったうえでのオフレコは、官僚が一方的に匿名で相場観を広める手段にすぎない。

 しかもコラムを書いた本人である私には一切、接触しようとせず、上司に抗議しただけでなく、なんの関係もない現場の取材記者の活動を制限したのは、まったく容認できない。

 論説と編集は言論活動と報道活動の無用な相互干渉を防ぐために互いに独立している。これは広報にかかわる人間の常識である。政府であればなおさらだ。

 そんな事情を承知のうえで、記者に取材制限を課したのは言論活動に対する圧力にほかならない。上司や(広い意味で)同僚記者を通じて、私に無言のプレッシャーをかけようとしたのである。

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