危機の中で響いた選手たちの「言葉」
[スポーツ]「見せましょう、底力を」「生かされている命に感謝」

東日本大震災後初の本拠地試合であいさつする楽天・選手会長の嶋基宏選手=仙台市のクリネックススタジアム宮城で4月29日

 未曽有の大被害をもたらした東日本大震災から3カ月。被災地の復興を願い、連帯を呼び掛ける多くのメッセージが今も全世界から送られ続けている。その中で意外といっては失礼かもしれないが、スポーツ選手のメッセージが心に強く残る。多くの人たちへの発信力の強いスポーツだけに、影響の大きさも違うのだろうか。ぜひとも記録に残しておきたい3本のメッセージ---。

 大震災後、最も印象に残る言葉のランキングを付けるとしたらプロ野球東北楽天の嶋基宏選手会長の「見せましょう、底力を」が第1位ではないだろうか。

 嶋選手はこの共通するフレーズを2度使っている。最初は4月2日、12球団チャリティーゲームで札幌に遠征した時だ。試合前、大きな被害を受けた東北の球団を代表して札幌ドームに詰めかけた約6600人のファンに呼び掛けた。大被害に被災地の人たちが苦しんでいるさ中に、自分たちは野球をしていていいのか。野球人としての率直な思いがつづられている。

 2度目は楽天が本拠地のKスタ宮城で初めて公式戦を行った同29日だ。地元・仙台のファンの前に立った嶋選手は「絶対に乗り越えましょう、この時を」と、これまた感動的なスピーチを披露した。

 嶋選手は中京大中京高から国学院大を経て楽天入りしたプロ5年目の26歳。捕手出身の野村克也前監督の叱られ役として鍛えられたこともあり、昨年は初めて打率3割を超え、ベストナイン、ゴールデングラブ賞にも輝いた。

星野仙一新監督が就任し、嶋選手は選手会長に就任した。札幌でのスピーチでは、星野監督も思わず目頭を熱くした。嶋選手への信頼感を強めたに違いない。

嶋選手の2度のスピーチに共通しているのは、けっして難しい表現を使うことなく、素直に自分の心情を訴えていることだ。しかもキーワードを繰り返すことで効果を盛り上げている。

 震災直後で、開催自体が危ぶまれた選抜高校野球も開会式での見事な選手宣誓がスタンドや、テレビで見守った全国の高校野球ファンを感心させた。

 野球部創部1年目で甲子園出場という快挙を達成した岡山・創志学園。部員全員が3月の時点では1年生という、とびきりの若いチームだった。阪神大震災(96年)の年に生まれた世代の野山慎介主将が「頑張ろう!日本。生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います」と高らかに発した選手宣誓も、心にしみとおる素晴らしい出来栄えだった。

 閉会式では奥島孝康・高野連会長が「You'll never walk alone(君は一人じゃない)」と英語で呼び掛けた。このフレーズは震災直後、イタリアで活躍するサッカーの長友佑都選手も使って日本でもおなじみとなった。

 スポーツ選手の言葉が強い印象を残しているのに引き換え、政治家が発するメッセージが何と軽く、印象に残らないことか・・・。

楽天・嶋基宏選手のメッセージ(4月2日、札幌ドーム)

 あの大災害、本当にあったことなのか、今でも信じられません。僕たちの本拠地であり、住んでいる仙台、東北が今回の地震、津波によって大きな被害を受けました。地震が起きた時、僕らは兵庫県で試合をしていました。家がある仙台にはもう1カ月も帰れず、横浜、名古屋、神戸、博多、そしてこの札幌など全国各地を転々としています。

 先日、私たちが神戸で募金活動をしたときに「前は私たちが助けられたから、今度は私たちが助ける」と声をかけてくださった方がいました。今、日本中が東北をはじめとして、震災にあわれた方を応援し、みんなで支え合おうとしています。

 地震が起きてから眠れない夜を過ごしていましたが、選手みんなで「自分たちに何ができるか」「自分たちは何をすべきか」を議論し、考え抜きました。

 今、スポーツの域を超えた野球の真価が問われています。見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を。ともに頑張ろう東北。支えあおう日本。僕たちも野球の底力を信じて、精一杯プレーします。被災地のために、ご協力をお願いします。

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