JALの「追加支援」血税で銀行の債権回収を保証するのか
2次破綻も視野に議論せよ

 今年1月に会社更生法の適用を申請した日本航空(JAL)とその管財人をつとめる企業再生支援機構が、主要銀行に対し、8月末に東京地裁への提出期限を迎える更生(再建)計画を策定するため、今一度、支援策を拡大するよう要請したことが明らかになった。

 銀行団はこれまでの計画も、これからの計画も、甘過ぎて実現できる可能性はないとみて、両者の申し入れに強く反発、協力に難色を示している模様だ。「政府保証」でも付かない限り、これ以上の支援はできないという姿勢なのだという。

 だが、両者の交渉では、最も肝心の議論が抜け落ちている。すでに投入された公的資金(税金)の保全・回収や、これ以上、公的資金を安易に投入しない、という視点が抜け落ちている議論である。

 付言すれば、国民の血税を危うくする"大事件"が起きているのに、なぜ、与野党は、現下の参議院議員選挙の争点に据えてきちんと議論しないのだろうか。これは政治家の国民への重大な背信行為といわざるを得ない。

 報道や筆者の取材を総合すると、JALと機構が追加支援の要請を始めたのは、6月半ばのこと。両者は7月初めにかけて、銀行各行と断続的に交渉し、約900億円の追加支援を要請した。

 その内訳は、
(1)銀行団がすでに実施に応じていた再建カットの金額を、400億円拡大して5400億円程度に増やす、
(2)機構からJALへの出資を500億円増額して3500億円とする
  ---の2つという。

 追加支援が必要になった背景には、JALの「債務超過額」(負債が資本を上回る状況)が当初見込みより1000億円ほど多い9500億円に膨らんだことがある。債務超過が膨らんだ原因は、航空機の減損処理の拡大や、企業年金基金を廃止しなかったことが響いたという。早い話、当初の再建計画の見積もりが甘かったわけだ。

 また、この支援拡大のほかに、JALは、既存の融資の借り換えにあてるため、3600億円の融資も求めているという。

 一連の交渉の中で、JALと機構は再三、「再建は順調だ」と主張し、支援を求めている。特に、今年に入って、「営業損益が改善傾向にある」と強調して協力を迫っているらしい。

 その具体的な数字は、1月178億円の赤字(前年は208億円の赤字)、2月122億円の赤字(同208億円の赤字)、3月16億円の黒字(同26億円の赤字)、4月103億円の赤字(同328億円)というものだ。

 営業損益のお化粧など容易いことだから、なんとも言えないが、確かに、表面ヅラを見る限り、前年に比べれば状況は改善しているのかもしれない。

 しかし、JALや機構の説明を鵜呑みにするのは早計だ。

 というのは、比べている前年、つまり2009年の初頭は、その前年(2008年)秋のリーマンショックを受けて世界経済が金融危機に直面していた時期である。よほど特殊な業態でない限り、この前年の初頭と比べて、今年の初頭の業績が改善するのは当たり前だろう。

 むしろ、3月を除いて相変わらず営業赤字が続いており、出血体質が是正されていないことや、春休みで年間を通じた稼ぎ時である割に、今年3月の黒字額があまりに小さいことなど、JALや機構の説明には首を傾げざるを得ない問題が多過ぎる。

 また、6月30日の記者会見で、企業再生支援機構の瀬戸英雄委員長は、「日本航空インターナショナルの5月度の営業損益は、会社更生法による財産評定結果を反映させますと、減価償却の負担が軽減するなどにより、速報値ではありますが、37億円の営業黒字を達成したと見ております」と誇らしげに胸を張って見せた。

 しかし、株主優待券を使い切ろうと駆け込み使用があった5月までと違い、6月からは優待券が使用できなくなるため、「一段の利用客離れが起きるのではないか」(銀行関係者)との見方も根強い。

禁じ手も考える再生支援機構

 それゆえ、銀行団は、追加支援にも、新たな融資にも難色を示している。

 機構は、機構自身が銀行のJAL向け融資に債務保証を付与する案など、早期にエグジットしなければならない機構の性格からは禁じ手"に近いことを行ってでも、銀行から融資の約束を取り付けたい意向という。

 だが、主要行は、「長い目で見れば、設立根拠法が時限立法であり、存続期間が3年しかない機構の債務保証など何の役にも立たない。株主に対する経営責任もあり、政府保証でもないと応じるわけにはいかない」(同)と冷ややかな姿勢を崩していない。

 加えて、各行は「更生法申請のダメージの見積もりがまだまだ甘い」「JALの増収策は、厚化粧の賜物」「コスト削減策の実現性が乏しい」「こんな状態では、追加支援をしても、また債務超過に転落するのが確実だ」とJALの再建への取り組みにいら立ちを隠さない。

 確かに、客観的に見ても、ザルに水を溜めようというような再建策では、銀行が銀行の株主の理解を得られるとは思えない。

 すでに1月の会社更生法の申請により1000億円を超す血税を回収不能にしたのに続いて、今回、さらに銀行団の意向を汲んで政府保証を付与することによって、より多くの血税の回収を危うくすることは、あまりにも納税者を無視した議論と言わざるを得ない。

 そもそも、そのようなことは、JALや機構、銀行が内輪で論じるテーマではない。仮に本当に債務保証が必要ならば、政府が責任を持って国民に説明したうえで、国民に是非を問う必要のある話のはずである。まさに今、闘われている参議院議員選挙の争点としてきちんと論ずべきテーマなのだ。

 これまで、筆者が様々な媒体で指摘してきたように、民主党政権はその義務を怠ったまま、安易な政府主導のJAL再建策に踏み込んできた。

 昨年9月の連立政権の発足直後に、それまでの再建策を、いきなり「白紙撤回」したのを手始めに、「自主再建」と言いながら、「私的整理」『法的整理』とエスカレートし、投入する公金を膨らませてきたのである。

 そして、政府が今回の更生決定を安易に支持すれば、年中行事のように、公金で、JAL支援を繰り返す端緒になりかねない。

 自民党も野党時代の失政の露呈を恐れているわけではあるまいが、この問題の追及に消極的な姿勢をとってきた感は否めない。今こそ、税金の浪費を防ぐため、野党として政府にきちんと質す役割があるはずだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら