成仏できない小沢一郎が動くほど結束する菅直人陣営の皮肉
いよいよ政権党らしい権力闘争に

「権力を握っているときとそうでないときでは、政党内の権力闘争の質は自ずと違う。政権党内の権力闘争は、勝てば政権の主導権を握れるのだから、し烈になって当たり前だ。民主党もようやく政権党らしくなってきたということですよ」

 民主党の政務3役の一人はこう言って、前幹事長・小沢一郎の度重なる執行部批判をこう分析してみせた。

 たしかに、民主党内の対決が日増しに激しくなり、権力闘争がお家芸だった自民党の対立が迫力に欠けるのは政権を担っているかどうかによるのだろう。

「政権与党だから責任を持ってやらないといけない。野党時代のように党内政局をやっている場合ではない」

「静かにしていろと言われたから静かにしている。一兵卒で頑張る」

 小沢は6月17日、都内で開いた自身の政治資金パーティーでこう語っていた。

 ところが、最近の小沢はまったく「静かに」していない。「野党時代のように党内政局」にひた走っている。

 小沢が"君子豹変" したのは24日の参院選公示日からだ。参院選候補の応援のため訪れた山梨県身延町で記者団に次のように語り、首相・菅直人の消費税率引き上げ発言を批判した。

「3年前の参院選も昨年の衆院選も、『すぐ増税はしない。無駄を徹底的に省き、財源を捻出する。
  それでも財源が不足する時は消費税の論議をする』というのが我々の主張だった。(そうした認識は)変わっていない」

 その後、発言の機会があるたびに、菅や執行部批判を繰り広げている。

「菅首相が(消費税率引き上げを)しきりと話しているようだが、地方経済は都会以上に深刻だ。特に鳩山内閣は(昨年の)総選挙の時も、4年間は上げないという話をしてきた。そういう点も含めて、非常に心配している」
(25日、青森県弘前市で)

「約束は実行しなきゃ駄目だ。政権取ったら金がないからできませんなんて、そんなバカなことあるかというのが私の主張だ。私が微力を尽くして、約束通り実現できるようにする」
(28日、愛媛県今治市での会合で)

「皆さんと選挙を通じて約束したことは、どんなにしんどいことであってもやり遂げるんだということでなければ、皆さんの信頼を勝ち取ることはできない」
(29日、山形県鶴岡市で街頭演説)

論理的におかしい小沢の主張

 民主党の公約撤回は昨年12月、廃止を公約したガソリン税の暫定税率維持を小沢の主導で決めたことに始まった。

 また、子ども手当の満額支給見送りが首相・鳩山由紀夫、幹事長・小沢の「小鳩体制」の下で決定されたことを思い起こせば、小沢が昨夏の衆院選マニフェストを守れと主張するのは論理的にかなりおかしい。

 だが、小沢が自らの過去の言動にまったくとらわれずに、堂々と振る舞うのは何度も繰り返してきたことで、驚くに当たらない。より重要なのは、小沢がこれほど批判され、幹事長を辞任したことで実権を失っても、へこたれていないことだ。

 小沢が今月4日、岩手県花巻市で、自身の後援会会長の自宅を弔問した際、関係者に「自分の思いを通しながら、これからも頑張っていく」と語ったように、成仏するどころか、復権に意欲満々である。

 小沢は復権を目指し、9月の民主党代表選で菅に対抗する候補を擁立するとみられている。小沢陣営は党員・サポーター票の過半を制しているとされ、代表選になれば非小沢陣営と小沢陣営がしのぎを削ることになろう。

 だが、小沢が活発に動けば動くほど、非小沢系の結束が固まるという効果も見逃せない。

 いま、菅を支えている官房長官・仙谷由人、幹事長・枝野幸男はかつて菅に批判的だった。外相・岡田克也、国土交通相・前原誠司、財務相・野田佳彦らの相互の人間関係も微妙だ。彼らが唯一結束できるのは、小沢と敵対した時だけである。

 そういう意味において、小沢は菅サイドにとって有用な人材と言える。

(敬称略)

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら