独裁者・菅直人 「霞が関の愛犬」とは情けない
官僚たちに「歓待」されている場合ですか

 霞が関への接近という"禁断の実"に手を伸ばす菅総理。「一兵卒」となり、虎視眈々と復権の機を窺う小沢前幹事長。内閣を飛び出し、生き残りの道を探る亀井前大臣---。未来を誰に託すべきなのか。

あなたは財務省の代弁者

「これぞ"菅落ち"(完落ち)ってやつかな」

 菅直人首相を"落とした"と頬を緩めているのは、霞が関の最高峰・財務省のキャリアたちである。

「2010年度内に、消費税の改革案をとりまとめたい。税率は10%を参考とする」

 首相が記者会見でこう話した際、身内の民主党議員も、閣僚たちでさえも驚愕した。「10%」という具体的な税率目標は、寝耳に水だったからだ。

 ところがこの発言を、財務官僚たちは「してやったり」と、ほくそ笑みながら聞いていた。1%で2.5兆円の税収増---。消費税のアップは、財政規律至上主義をとる財務省にとって、長年の悲願だったからだ。

「かつて菅さんのような優秀な総理がいただろうか。菅さんは歴史に残る名宰相になる」(財務省キャリア)

 財務省は万歳三唱。この世の春を謳歌せんばかり。

 しかし、こんな簡単に完落ちしていいはずがない。民主党政権は、「行政のムダを徹底的に排除する」と宣言。公務員の人数や給与を削減し、官僚機構の既得権益にメスを入れることで、増税なしに10兆円規模の財源を作ってみせると豪語していたのではないか。

 なのに、その公約は菅首相の一言でいきなり反故にされた。国庫にカネはなかったので、年金や社会福祉が欲しければ、国民一人ひとりがもっと負担をしろという。まさに財務省の論理そのものだ。

「最初のアップ幅は3%くらい、つまり8%が限界かなと思っていた。それがいきなり10%とは、+2%のおまけ付き。これも菅首相のおかげで、棚ボタみたいな気分」
(財務省関係者)

 プライドが高い菅首相は、「自分は日本の未来のため、困難な決断ができる男だ」などと、自画自賛していることだろう。だが、今回の「10%」は菅首相が決断したようでいて、そうではない。財務省のシナリオ通り、つまり首相はまんまと、財務省の掌の上で転がされてしまったのだ。

 「財務官僚たちはこの数ヵ月間、菅氏を"歓待"してきた。勝栄二郎主計局長らをはじめ、時には丹呉泰健事務次官までもが加わり、毎朝せっせと財政レクチャーを行い、資料を届け、徐々にその思想を"財務省色"に染めてきたのです」(全国紙政治部デスク)

 その結果、菅氏の思想は劇的に変わった。政権交代直後は、「財務省の役人はとんでもない。平気で政治家をダマす。気をつけないと、簡単に取り込まれる」と罵倒していたのに、最近は、「財務省の役人はやっぱりモノが違う。痒いところに手が届くとは、ああいうことを指して言うんだ」などと、畏敬の念を込めて話すようになった。要するに取り込まれてしまったのだ。

「増税して景気が良くなった国など、聞いたことがありません。菅総理の"菅"という字から、草の根の心を取り去れば"官"になる。結局、そういうことです」
(みんなの党政調会長・浅尾慶一郎氏)

 かつて菅首相は、役人と見ればすぐに噛み付く、霞が関にとっては危険で厄介な存在だった。しかし、専門知識の提供で自尊心をくすぐる財務省の巧妙な愛玩により、その野性は失われてしまった。国民の利益を守るため吠え続けてきた男は、いつしか、官僚なしではやっていけない"霞が関の愛犬"に成り果てたのだ。

 脱官僚どころか、"官僚温泉"にどっぷり浸かるという、国民に対する重大な裏切り行為。しかし、本人はそれに気づかず、ひたすら増長していくだけだ。

 首相の「変節」は、メディア対応にも表れている。

 野党時代、首相は多くの報道機関と協力関係を築き、自民党政権と霞が関の癒着を追及してきた。ところが最近は、些細なことで報道陣と衝突し、険悪な空気を醸し出す。というより、もはやメディアを「敵視している」と言ってもいい。

 たとえば6月18日、首相官邸での「ぶら下がり会見」でのやり取りだ。

記者 消費税率について、民主党内からも、「議論が十分でない」という声があがっているが・・・。

菅首相 あの、(党内で)かなり議論して、今回の場合は(玄葉光一郎)政調会長とか、主だったメンバーには相談しておりまして。私の会見の後、皆さんからきちんとフォローしていただいたものと思っています。

秘書官 はい。ここで会見を終わります。

記者 昨日も総理はぶら下がり会見を受けなかった。もう1問、答えてください。

菅首相 ・・・。(無視)

記者 総理!

菅首相 ・・・。(無視して立ち去る)

 この日、記者団が首相に申し入れていた代表質問は3問。しかし、会見の開始自体が約1時間も遅れた上、消費税についての質問がお気に召さなかったのか、一方的に2問で会見を打ち切ってしまった。

 もともと短気で知られる首相は"イラ菅"と呼ばれていたが、こうしたメディアとの関係悪化により、元の異名はそのままに、このところは"ダマ菅"(だんまり)、"菅黙"(完黙)など、新たなアダ名が関係者の間で飛び交っている。

「報道各社の幹部との懇談でも、『言質を取らせない』という態度がありあり。自分だけでなく閣僚にも、『自己判断で勝手な発言をしないように』と釘を刺しています。しゃべり過ぎて墓穴を掘った鳩山前首相を反面教師にしているのでしょうが、これはやり過ぎです」(別の全国紙デスク)

 菅首相の情報管制は徹底しており、恒例だった朝一番の公邸玄関でのぶら下がり取材も中止になった。首相曰く、「どうせ何も話すことはない」のだとか。トップがこの有り様のため、官邸のスタッフも貝と化した。それどころか、6月中旬に行われた秘書官クラスと各社記者との懇談では、

「発言内容を外部に漏らしたことが判明したら、その記者は出入り禁止にする。菅政権は信義に違反する者とは一切、付き合わない」

 との前代未聞の通告までがなされている。「開かれた政府」を標榜していた民主党の基本精神は、いったいどこに消えたのか。

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