「枝野VS.小沢」内ゲバが行き着く先は「民主党分裂」
学生運動の末路が繰り返されるのか

 民主党の小沢一郎前幹事長と枝野幸男幹事長のさや当てが先鋭化している。

 菅直人首相の消費税引き上げ路線について、小沢が「約束したことを守らなければ、国民にうそをついたことになる」と批判の狼煙を上げると、枝野は小沢発言を「無責任な大衆迎合」とののしった。

 小沢は「正しいことを主張するのが政治家の役目」と反撃に出て、戦う姿勢を鮮明にしている。

 参院選の真っ最中だというのに、どうやら民主党内は小沢派と反小沢派に分かれて大げんかという展開である。選挙の行方もさることながら、民主党の内ゲバ(内部抗争)からも目が離せなくなってきた。

 今回の対立は単なる党内の主導権争いではない。消費税引き上げや政権公約の中身という「政策をめぐる路線対立」が根本にある。いわば、民主党という政党の本質にかかわっているだけに深刻である。

 民主党に限らず、あらゆる政治集団の結集軸は実現すべき政策目標である。

 政策目標=結集軸を見失ってしまえば、集団を構成する党員たちは一致団結どころか、てんでバラバラに走りだす。互いに非難の応酬になって、行き着く先は内部抗争の泥沼だ。

 一言で言えば、民主党は実現すべき政策目標を見失った、あるいは実現しようにもできない現実に直面したために「アイデンティティ・クライシス(自己喪失の危機)」に陥りつつある。政党として、もっとも大事な「旗」を失いつつあるのだ。

 そもそも民主党には綱領がない。

 いまの民主党が結成された1998年4月に綱領の代わりともいえる基本理念をまとめている。それによると「透明・公平・公正なルールに基づく社会」とか「共生社会」「分権社会」をめざし「自立と共生の友愛精神に基づいた国際関係を確立する」などという文言が並んでいる。抽象的なのは理念なのだから、やむをえない。

 基本理念と合わせて決めた基本政策をみると、もう少し具体的だ。

 たとえば「中央政府の役割をスリム化して外交防衛、司法、ナショナルミニマムの確保などに限定する」「国から地方への包括交付金制度をただちに導入する」「国家公務員人事制度を抜本的に改革する」「税と社会保険料の役割分担を見直し、インボイス制導入など消費税改革を進める」「納税者番号制を導入する」などと革新的な目標を掲げている。

 基本政策をさらに一歩進めた政策パッケージが総選挙や参院選での公約(マニフェスト)という構造になっている。民主党員にとっては、これら全体の理念・政策体系こそが結集軸と言っていい。

 いま起きている事態は、これらの政策体系が党内外から激しい抵抗に加えて、財政の厳しい現状にも直面して実現できないという現実である。

 たとえば、公務員制度改革はいざ政権をとってみると、支援母体の官公庁の労働組合が反対して骨抜きになった。給与引き下げも定員削減もできないから、マニフェストに掲げた国家公務員人件費の2割削減ができない。

 地方への一括交付金制度は各省庁の政務三役が官僚の羽交い締めに遭って、ほとんど進んでいない。脱官僚依存どころか官僚との融和路線に切り換えたので、中央政府のスリム化など夢のまた夢である。

 先の総選挙で掲げた子ども手当や高速道路無料化などは当初方針を縮小して、いまも公約に掲げてはいるが、財源のめどが立たず事実上、風前の灯火になっている。

 予算組み換えで財源を生み出すどころか、菅首相がぶち上げたのは消費税引き上げだった。約束違反を糊塗するのに、もっと大きな約束違反を重ねるようなものだ。

「消費税」を口に出せない民主党候補

 つまり基本政策からマニフェストに至るまで、いまや民主党の旗はボロボロである。

 小沢が唱える「消費税引き上げは国民への約束違反」という指摘は「旗が破れている」という現実をありのままに語ったにすぎない。その小沢にしても、だからといって約束を実行できる術をもっているわけではない。昨年12月にガソリン税暫定税率廃止の先送りという約束違反を決めたのは、まさに小沢だったのだ。

 一方、枝野の「小沢は大衆迎合」という批判にしても、言い換えれば「かつての約束は達成できないから修正する」と開き直っている。つまり、小沢も枝野も厳しい予算制約に直面していることを承知しつつ、空念仏を唱え続けるか居直るかの違いにすぎない。

 小沢がもしも本当に約束を実行しようとするなら、修正路線に走った反小沢派とは袂を分かちざるをえないだろう。それが小沢にとっての原理原則である。つまり民主党は分裂する。

 菅首相はといえば、もはや基本政策も先の総選挙マニフェストも忘れたかのように、ひたすら消費税引き上げに突き進んでいる。これでは普通の党員たちがとまどうのも当然だ。いまや参院選の民主党候補者たちの多くが消費税から口をつぐんでしまっている。

 旗を失った政治集団が内ゲバに走るのは、かつて仙谷由人官房長官をはじめ民主党の闘士たちが深くかかわった学生運動の結末でもあった。それから40年を経て、民主党もまた同じ内部崩壊への道を辿るのだろうか。

(文中敬称略)

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