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電撃提携 トヨタ&テスラ提携の狙い
EVメーカーとして独特の存在感を発揮していたテスラが
トヨタと電撃提携! 両社の戦略が交錯する!

 5月21日(現地時間)、トヨタ自動車と米国のベンチャー企業テスラ・モーターズが資本提携を発表した。

カリフォルニアで実施された記者会見には豊田章男社長、イーロン・マスクCEOのほかに、(テスラの本社とNUMMI工場がある)カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガー氏も出席

 本企画ではその提携の経緯と両社の狙い、そして今後どのような協力関係になっていくのかを調査・考察していきたい。

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 自動車メディアだけでなく経済専門誌も一般メディアも寝耳に水で、それもそのはず、豊田章男社長の会見コメントによれば、この提携交渉がスタートしたのは本年4月だという。

「(GMとの合弁工場であった)NUMMIの元社長から紹介があり、テスラのイーロン・マスク会長と初めて会いました。ふたりでEVに乗って話をしたのが(提携の)キッカケです」

 とは会見時の章男社長。いっぽうテスラのイーロン会長も、

「(章男社長と)実際に話をして意見が合い、一緒に何かやろうということになった。真摯なパートナーシップを築くにはどうすればいいのか考え、それが意味のある戦略的な提携のキックオフとなった」

 と同会見で語っている。

 今回トヨタはテスラ社に5000万ドル(約45億円)出資して同社の株を保有する。今後両社は専門チームを組織して具体的な提携業務の内容や対象範囲などについて検討を開始する。

「今期黒字化したことで大胆な提携に踏み切れた」と豊田社長

 この電撃的な提携について、トヨタ関係者に話を伺うと、

「章男社長はずいぶん前からテスラに興味を持っていました。今回はNUMMIの元社長の仲介でイーロン会長と会うことになり、EVの将来性について盛り上がったことが提携のキッカケのひとつになっています。もちろん狙いはそれだけではなく、いろいろあるでしょうけどね」

 とのこと。トヨタは2012年から自社開発のEVを市場投入するとかねてより公言しているが、この時期にEVのベンチャー企業と資本提携を結ぶのはどのような狙いがあるのか?

 前述のトヨタ関係者が語る「いろいろ」とはどのようなことか?

テスラの何がトヨタにとって魅力的だったのか? NUMMIとの関連は?

「今回の提携でトヨタにとって一番重要なのは、米国の、特に富裕層ユーザーのイメージアップです。そのためにすでにロードスターを1000台以上販売したテスラと提携したんです」

 と語ってくれたのは外資系証券アナリスト。これまでエコカーといえばトヨタというイメージがあったが、昨年来からのアクセル制御問題で「トヨタ車=危ない」というイメージを一部では持たれてしまっている。

今年4月、多くの従業員に見守られながら、最後の「カローラ」を送り出し、生産活動を中止したと発表したNUMMI。今回の提携がスムーズに進み、さらに市場に受け入れられればEV工場として復活することになる

 そのうえGMとの合弁会社であるNUMMIを閉鎖したことによる、米国民のネガティブ感情を沈静化する意味合いも大きい。GMが経営破綻をキッカケに手を引き、それが原因となってトヨタもNUMMIから撤退したとはいえ、工場閉鎖の最後の決断をしたのはトヨタ経営陣。

 最後まで残った4700人の従業員と、その報道を見た米国民たちはNUMMIの閉鎖を決めたトヨタに複雑な思いを持っていた。

 しかしテスラは先日、このNUMMIの施設を使ってEVを生産すると発表した。上場を目指すテスラは米証券取引委員会(SEC)に購入資産内容を報告する義務がある。

 その提出書類によるとテスラはNUMMIの敷地約55%と建物の一部を4200万ドル(約38億円)で購入している。これはトヨタからの出資費用(約45億円)と近い金額だが、購入物品のなかに車両の生産設備は含まれていないとのこと。

イーロン・マスクCEO(1971年6月生)
南アフリカ共和国生まれの経営者。
10歳でプログラム言語を覚え、12歳で商業ソフトを開発。その後、スタンフォード大の大学院に進むも在学中に出版ソフトや金融サービスソフトを開発し、3億ドル以上のキャッシュを手に入れる。
その後、テスラの起業に関わり同社の市販モデル一号車を所有。
'08年10月より同社の会長兼CEOに就任

 テスラはトヨタのほかに米エネルギー省から4億6500万ドル(約420億円)の融資を受けることになっており、この資金で生産設備などを整えることになりそうだ。

「NUMMIの施設をどこが購入するのかというのは、米国民だけでなく米政府、そして(工場のある)カリフォルニア州も注目していました。いずれも米国内EVベンチャーであるフィスカーやオーリカ・モータースといった小さな会社がこれまで名乗りをあげてきましたが、いずれも契約までには至っていません。

 これらのなかで最も資金力があり実績も大きいのがテスラ。そこがNUMMIの工場を引き受け、それをさらにトヨタがバックアップするというのは、オバマ大統領にとってもシュワルツェネッガー知事にとっても御の字の戦略なのです」

 とは前述のアナリスト氏。

 米国のセレブたちにとって最新のエコカーに乗ることはステイタス。レオナルド・ディカプリオやブラッド・ピット、ジョージ・クルーニーらハリウッドスターが奇しくも昨年、プリウスからテスラロードスターに乗り換えている。

 トヨタにとって重要なのは、彼らセレブの目を再びトヨタに向かせることでもある。

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