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 愛知県警を中心として、全国の警察で「弘道会壊滅戦略」が進行している。弘道会は日本最大の広域暴力団山口組の中核組織で、構成員は4000人と目されている。勢力は30以上の都道府県に及び、山口組六代目の司忍組長もこの弘道会の出身である。

 本誌は、愛知県警が作成したこの戦略のための資料となる文書を入手した。そこには、弘道会有数の資金力を誇る組長の名前が書かれている。

〈黒岩組 黒岩紀旨 弘道会でも有数の資金源を有する黒岩組の首領で、組織の資金面を支える構成員・攻撃戦略=首領にターゲットを絞った事件検挙〉

 愛知県警は6月10日、この黒岩紀旨組長(40歳)ら3人を逮捕した。

「黒岩容疑者らは、名古屋市昭和区内で『大黒屋』の看板を掲げ、法定利息を上回る利息でカネを貸し付ける違法な貸金業を営んでいた」(愛知県警担当記者)

 県警が黒岩組事務所に踏み込んだとき、組幹部の遠藤孝容疑者(42歳)が突然、証拠書類を飲み込もうとして暴れ、その場で取り押さえられ公務執行妨害で逮捕されたという。

 警察庁・安藤隆春長官は昨年から、繰り返し「弘道会撲滅」を口にし、全国の警察組織に指示を出していた。

「山口組の司忍組長は現在服役中ですが、来年4月には満期出所する見込みです。そのときまでに、司組長の出身母体であり、全国で勢力を急伸させている弘道会を弱体化させておこうという狙いがある。この文書は、愛知県警が作成したもので、全国の都道府県警察に配布されている」(警視庁刑事)

 文書は「弘道会壊滅戦略」と題され、チャート式の詳細な組織図と、関係企業・経済人などの名前、捜査の進展状況などを細かく記した文書の2枚で構成されている。愛知県内のある企業については、次のような記述がある。

〈商社として、砂・砂利・採石等の販売及び運搬を行っているほか、建設資材である生コンクリート等を中心に売り込みを掛けている。営業活動は、いずれも弘道会の威力を背景としたペーパー参入である〉

 この会社に対する捜査としては、〈ペーパーカンパニーの実態解明とその資金移動担当者の割出及び追跡捜査〉〈国税と連携した裏金作りの解明〉などとされている。別の土木会社は〈工事施行能力は全くなく、暴力団を背景に強引に下請けに参入させている〉という。

 弘道会の「シノギ」(資金集め)の大きな柱のひとつは、名古屋の繁華街にあるフーゾク店の「みかじめ料」である。

〈弘道会は、名古屋最大の繁華街である栄地区を縄張りとしており、栄地区には、許可届出風俗店約1700店、無許可無届風俗店約1500店、飲食店500店が営業している〉

 これらフーゾク店の多くが弘道会の影響下にあると見られているが、愛知県警の捜査はいまひとつ不徹底だった。

〈資料に基づき暴対ローラーを実施したものの、みかじめ料を払っている店舗を確認することはできなかった〉

 ほかにも違法カジノや、土木業、学校法人、ビルオーナー、弁護士らと弘道会の関係者・関連団体がそれぞれ実名を挙げて詳細につづられている。ある弁護士は、〈捜査に対する抗議、けん制、妨害活動。接見を利用した組織との連絡役〉を務めていると認定されている。

「この文書を見ると愛知県警がかなり手広く情報を収集し、捜査に着手しているように見えますが、実際に摘発できたのはほんの一部にすぎない。弘道会は以前から警察との付き合いには非常に慎重で、なかなか端緒を掴ませないんです。安藤長官も、焦っているのではないでしょうか」(全国紙警察庁担当記者)

 警察と巨大暴力組織の戦いは、始まったばかりだ。



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