菅総理、「天下り根絶」の方針はどこへ行ったんですか?
官僚の勝ち逃げを許す「退職管理基本方針」を閣議決定
原 英史

 実は、こうした声は、前・公務員制度改革推進本部事務局審議官(現・経済産業省官房付)で、現役の筋金入り改革派官僚である古賀茂明氏が、エコノミスト6月21日発売号でも紹介している。

 古賀氏は、本来ならば局長ポストに就いていてもおかしくない人物だが、その改革姿勢が政権の路線と合わなかったのか、昨年末、仙谷由人大臣により公務員制度改革推進本部事務局を追われ、それ以降、経済産業省でまともなポストにつけられていない。

 古賀氏は、この論考で、現役官僚としては異例のことだが、天下り法人等への「出向」拡大という政権の方針を強く批判している。あくまで推測だが、菅政権は、こうした改革派異分子を封殺するため、敢えて、古賀氏自身に「出向」人事を提示するのでなかろうか。

 同氏が「出向」を受け入れれば、中央官庁の枢要ポストから厄介払いできる上、これ以上の政権批判を封じることもできる。もしそうなれば、早速「退職管理基本方針」を活用した「出向」人事の発動というわけだ。

都合の悪いことは「別添2」に

 「退職管理基本方針」では、もうひとつ、「別添」がついており、幹部官僚の高給窓際ポストを作ることも書かれている。局長・部長用の高給専門スタッフ職を新設するという。霞が関でよく使われる詐欺的手口である。都合の悪いことは「別添2」ぐらいにしておくのだ。

 このポストは、局長・部長の給与よりは少し低く設定するようだが、とはいえ、現行の専門スタッフ職よりは「上位」と明記してあるので、年収千数百万円のポストだ。こんなポストを新設しながら、マニフェストに掲げた「国家公務員人件費2割削減」をどうやって実現するつもりなのか、まったく分からない。

 こういう「官僚の既得権維持」を閣議決定しているのが、菅内閣の実像。これでは、もはや、民主党に「公務員制度改革」を唱える資格があるのかさえ疑問だ。

 そんな中で飛び出した、枝野幸男幹事長の「公務員制度改革や行政改革はかなりの部分でみんなの党と一致しており、一緒にやれる」との発言に対し、みんなの党の渡辺喜美代表が「顔を洗って出直せ」と怒ったのも無理はないだろう。

 民主党は、今一度、かつて唱えていた「脱官僚」「天下り根絶」などをどうするのか、よく考え直し、国民にきちんと説明すべきだ。捨て去るのか。あるいは、今度こそ実行するというなら、具体的に何をやるのか。例えば「退職管理基本方針」は撤回するのか。

 選挙前はただ「やります」「やります」と言うだけでは、もう許されない。選挙後に再び迷走を繰り返すことが明らかだ。

原英史/はら・えいじ
1966年東京都生まれ。
東京大学法学部卒、米シカゴ大学ロースクール修了。1989年通商産業省(現・経済産業省)入省。
内閣安全保障・危機管理室などを経て、2007年 から安倍・福田内閣で渡辺喜美行政改革担当大臣の補佐官を務める。
その後、国家公務員制度改革推進本部事務局を経て、2009年7月退官。
株式会社政策工 房を設立し、政策コンサルティング業を営む。
大阪府人事委員会特別顧問、政策研究大学院大学客員准教授も務めている。