内閣官房参与に抜擢された「国際協力銀行部長」は菅・仙谷の「知恵袋」
ターゲットは新幹線、リニアの対米売り込み

 菅直人首相は6月22日午前官邸で、本コラム(3月27日付「菅財務相が漏らした国際協力銀行 「再・分離、独立」論への疑問」)で言及した国際協力銀行(JBIC)の前田匡史国際経営企画部長(52)に内閣官房参与の辞令を交付した。

 奇しくも同日の『日本経済新聞』は一面トップで「東電、ベトナムで大型投資---国営大手と火力発電 数百億円規模」という記事を掲載していた。

 なぜ、「奇しくも」なのか。

 最近になってメディアを賑わすようになった"オールジャパン"による新幹線、原子力・火力発電所の対ベトナム売り込みの仕掛け人が、他ならぬ前田氏なのである。

 実は、JR東海と東日本を中心とする高速鉄道(新幹線)とリニアモーターカー技術の対米売り込みにも前田氏が深く関わっているのだ。

 これまた以前のコラムで触れた仙谷由人国家戦略担当相(現官房長官)の5月のベトナム訪問についても(「仙石・前原のベトナム『官民一体セールス・ツアー』への期待」)、前田氏が前触れ訪問し、仙谷氏の同国ナンバー5、チュオン・タン・サン共産党中央書記局常任委員との会談をはじめ、すべてのお膳立てをしていたのである。

 仙谷氏はハノイ滞在中、現地で合流した前原誠司国土交通相、葛西敬之JR東海会長、清野智JR東日本社長らとともにハイ副首相(経済分野担当)、ズン交通相、フック計画投資相ら同国のインフラ関連の閣僚と会談した。

 もちろん、ベトナム政府がすでに発表していた総事業費5兆2000億円かけて2012年に着工予定のハノイ---ホーチミン高速鉄道(約1570キロ)建設に新幹線方式採用を働きかけるためだった。

 ところが、ベトナム国会が6月19日に同建設決議案を否決したことから、この新幹線売り込みに暗雲が立ち込めることとなった。

 それでも越日友好議員連盟会長を務めるホー・ドク・ベト党中央組織委員長(序列第7位)が裏面で動き、今週になって新幹線方式による高速鉄道計画について、国会に修正案を再提出することが決まり、わが国の関係者は胸をなでおろしたという。

ワシントン---ボルチモア間にリニアを

 というのも、政府が同じ19日に閣議決定した『新成長戦略』の中に「21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」という1項目がある。そこには「特に、パッケージ型インフラ海外展開推進会議の検討を踏まえ、先進国向け投資金融においても、国際協力銀行(JBIC)が民間と連携して支援できる分野を拡充する」とあるからだ。

 この「先進国向け投資金融」は、明らかに米国の高速鉄道とリニアモーターカー技術売込みを意識したものである。フロリダ州タンパ---マイアミ間など4路線で新幹線N700系の受注を、そしてワシントンDC---ボルティモア間でリニアをシステムごと官民一体で売り込むことを目指しているのである。

 途上国のベトナム向けにはJBICの投融資は問題ない。

 こうした"オールジャパン"による対ベトナム、米国向けの新幹線や原子力・火力発電所建設の売り込み計画の原案作りだけでなく、相手国の政府中枢や元高官へのアクセスにも前田氏は深くコミットしているのだ。

 一例だけ挙げる。新幹線とリニアの対米売り込みのため米国側の窓口として発足させた現地法人のトップにリチャード・ローレス元国防副次官が就任している。前田氏の永年の知己であるローレス氏はブッシュ政権時代に国防総省(ペンタゴン)の実務責任者として普天間飛行場の辺野古沖移設合意を担った人物だ。

 それはともかく、財務省と経済産業省にも太いパイプを持つ前田氏は長きに渡って仙谷官房長官のアドバイザーであるだけでない。

 菅直人首相が副総理・行政刷新相時代の昨年秋に立ち上げた「中国江蘇省・連雲港エコタウン・プロジェクト」に関する勉強会のコーディネーターも務めている。つまり、政権のツートップの「知恵袋」なのだ。内閣官房参与任命は当然と言えば、当然なのである。まさに人材の「官民一体」の好例である。

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