田原総一朗「菅直人と小沢一郎、本当の力関係」

 6月8日に誕生した菅内閣は、その徹底した小沢外しが国民の支持を得て、内閣支持率をV字回復させた。わずか9日後にバタバタと国会は閉会。いよいよ参院選に突入したものの、振り返れば肝心の普天間、消費税、年金など鳩山前政権が残した問題の解決に向けて新政権はなんの展望も打ち出さなかった。

 国民の生活も一向によくなる気配がない。菅政権もまた、なにひとつ課題を解決できないまま短命に終わってしまうのか。そして参院選を戦い終えた後、現在"一兵卒"に甘んじている小沢一郎前幹事長はどう動くのか。田原総一朗氏が分析する。

 鳩山由紀夫前首相が辞任を表明する数日前のことだ。菅直人副総理・財務相(当時)に、私の番組(BS朝日『激論! クロスファイア』)への出演を打診したところ、彼は「田原さん、申し訳ない。いま私はなにも発言したくない」と断ってきた。

 いまにして思えば、彼は次の総理は自分であり、その実現を間近に控えた時期に発言するのは、なんにせよ得にならないと判断していたわけだ。

 このように損得勘定ができるかどうかが、前首相と現首相の最大の相違点である。鳩山前首相があまりにも損得を考えない「夢見る人」であったのに対し、菅首相はきっちりその計算ができる「超リアリスト」なのだ。

小沢からカネと情報を奪還

 ちなみに、この番組には6月12日、内閣総辞職後8日目の鳩山前首相が登場している。鳩山さんは番組内で「(小沢さんが嫌われるのは)メディアの影響も大きいと思うが、やはりおカネの問題に関して、小沢さんへの嫌悪感というものが、国民の中に鬱積していたのは事実でしょう」という旨の発言をするなど、大胆に話をしてくれた。

 聞けば、秘書全員が出演に反対したというが、もっともなことだ。退任記者会見さえ拒否した人が、よく出てきてくれたものだと思うが、彼はリアリストではなかったということが、ここにも表れている。

 誰に対しても思ったことをズバズバ口にする私は、首相時代の鳩山氏に2度、「小沢幹事長を切ったほうが得だ」と進言したことがある。

 しかし、鳩山さんの答えは決まって「私にはそれはできません」だった。選挙で民主党を連戦連勝に導いたのも、代表の座を譲ってくれたのも小沢さん。

 つまり小沢さんのお陰で自分は総理になれたのだからと、常に"損得"よりも"恩義"を重んじていたのである。

 対照的なのが菅首相で、早速そのリアリストぶりをフルに発揮している。周知のとおり、彼が真っ先に決めたのが、「反小沢」の仙谷由人官房長官、その弟分の枝野幸男幹事長という布陣だった。

 小沢前幹事長が嫌って廃止に至っていた「政策調査会」もさっさと復活させて、その会長には反小沢集会を何度も開いてきた玄葉光一郎氏を抜擢したうえに、大臣(公務員制度改革・「新しい公共」枝野幸男少子化対策枝野幸男男女共同参画担当)にも任命している。選挙対策委員長も「反小沢」の安住淳氏を起用した。

 さらに注目すべきは、党の金庫番である財務委員長に小宮山洋子氏を据えたことである。小宮山氏こそは、西松建設事件発覚後も党代表続投を表明した小沢氏を糾弾し、辞任を迫った「反小沢」の急先鋒だ。

 一連の人事が意味するのは、小沢前幹事長からの"情報"と"カネ"の奪還である。というのも、そもそも小沢一郎の力の源泉は"情報"と"カネ"を一手に掌握していたことであった。

 "情報"については、従来、政策を策定するための機関である「政策調査会」にあらゆる情報が集まっていたが、小沢前幹事長がこれを廃止し、情報のすべてが幹事長に集まるシステムにしていた。党が行う世論調査の結果も、選挙対策として幹事長が独占した。

 一方の"カネ"については、政党助成金を管理するのは、党を問わず幹事長の役目である。

 ただし、小沢代表---鳩山幹事長時代は例外であった。当時、私は鳩山幹事長とこんなやり取りを交わしている。

「鳩山さん、党のカネを持っているでしょ」
「私はまったく持っていません」
「じゃ、誰が持っているの?」
「代表です・・・」
「えーっ」

 鳩山さんは母親から潤沢な資金を提供されていたから無頓着だったのかもしれないが、しかし、代表自ら政党助成金を握っている政党なんて聞いたこともない。私もずいぶん驚いた。

 枝野新幹事長は、カネの扱いを小宮山財務委員長に任せる方針だ。

 しかし、自民党政権が政権交代前に内閣官房機密費を使いまくったように、政党助成金なんて既に、小沢前幹事長が使い切ってしまったのではないか---新政権ではそんなことも心配されたが、民主党幹部によれば、助成金は1年分が4回に分けて支給されるのであり、「金庫が空っぽになっているかと思ったら、6月支給分はまだ来ていないので無事」とのことだ。

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