ソフトバンク孫社長が打ち出した「電田構想」は脱原発の福音か、
それとも補助金狙いの新規事業か

脆弱な電波状況と財務体質を抱えながら
町田 徹 プロフィール
ソフトバンクの孫正義社長〔PHOTO〕gettyimages

 ソフトバンクの孫正義社長が打ち出した大規模太陽光発電(メガソーラー)事業への参入計画(電田プロジェクト)が関心を集めている。全国各地の自治体にも賛意を示して協力する動きが増えている。

 東京電力の福島第1原子力発電所事故に収束の目途が立たず、国民の原子力への不安が高まっているときだけに、こうしたプロジェクトに対する期待が膨らむのは当然だ。ネット上には、まるで孫社長を救世主のように称える声もある。追い風を捉えて新たな事業計画を打ち出すところに、「機を見るに敏」な孫社長らしさが伺える・・・。

 しかし、その一方で、ソフトバンクという企業グループの台所が相変わらず火の車であることは見逃せない。孫社長の主張には、筆者が以前に厳しくリスクを指摘した「光の道」構想と同様に、我田引水の面もある。本当に、孫社長がその言葉通りの「安心な社会」を実現できるのか探ってみた。

投資不足による通信不良を解決するローミングを要求

 改めて、東日本大震災後、今日までの約3ヵ月間の孫社長の言動を整理すると、3つの時期に分けられる。

 第1期は、孫社長の言動が携帯電話業界で品格を問われ、冷ややかにみられていた時期だ。きっかけは、震災によって自社の通信サービスが不通となった地域などを対象に、他社の設備を使って通信する「ローミング」の拡大を要求したことだった。孫社長が表明した私財100億円の復興支援のための寄付という善行にさえ、ライバル会社からは「派手な寄付の裏で、自力で復旧する努力を怠り、タダ乗りを図る企業に、インフラビジネスを営む資格はない」と厳しい批判が起きた。

 ソフトバンクでは震災直後、孫社長が自ら総務省幹部を訪ね、それまで同社が競争を有利に進めるために繰り返して要求してきたローミングの拡大を、「復旧の早期実現に有効だ」と持ちかけた。同社広報部も「より多くの人命救助や被災者救済を可能とするため、それぞれの正常な基地局を一時的に相互に利用しあうことで、被災者の緊急通報や安否確認などの連絡を可能とすべきだという提案をさせていただいた」と認めている。

 しかし、ライバル各社は、そうした言葉を額面通りに受け止めようとしなかった。ボーダフォン買収による携帯電話事業参入以来、関係者の間で、ソフトバンクは必要な投資が不十分なため、音声、データ通信ともに通信可能なエリアや容量が小さいとみてきたからだ。この結果、通信が繋がりにくいうえ、繋がっても切れやすいと言うのである。

 さらに、「ソフトバンクの復旧能力は弱体だ」との見方もあった。根拠は外部の調査だ。例えば、フジテレビ系列の岩手めんこいテレビがホームページで提供した「ライフライン・生活情報」(3月18日分)によると、岩手県内12ヵ所の調査対象のうち全域で通信できない地域数が、auで1ヵ所、NTTドコモで2ヵ所だったのに対し、ソフトバンクのそれは10ヵ所に及んだという。

 「耐震性が弱いのではないか」と見る政府関係者もいた。根拠は、4月7日の深夜に起きた震度6強の余震でダウンした基地局が、ソフトバンクだけ238から2200と突出して増えたことだ。ドコモは520から1100に、auは185から490に増えたに過ぎなかった。

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