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インターネットが普及し、ユーザー数も当初とは比較にならないくらい爆発的に増大した。
あらゆる場所と人々がつながったいま、インターネットを利用するということは、ただ検索や買い物、情報発信のためだけではなく、社会そのものを変える可能性にも満ちている。
実際に、新しい産業が生まれ、旧来の産業のなかには価値転換を迫られているものもある。あまりにも変化の速度が激しいため、我々自身がその状態に適合する術を知らない。

本連載ではインターネットを介在させることで、これまで見過ごされてきた価値や経験などのヘリテージ(財産)を、新しい未来へとどう接続し直していくのか、コミュニケーションやメディアの変遷を通じて探ってみたい。
例えば、それは筆者のフィールドであるメディア産業を軸に、金融、製造など、多岐にわたる分野で起きつつあることを取り上げながら、新しい環境に我々が適合するためのヒントを探っていきたい。

 5月25日、26日の二日間、カナダのトロントで開催されたメッシュ・カンファレンスというウェブの最新トレンドについて企業や識者、個人ブロガーが集まる国際的な会議に参加した。

 本会議は、カナダでもっとも成功しているウェブ・カンファレンスのひとつであり、2006年から開催されている。カナダのインターネット接続業者のCAコム、大手PRエージェンシーのエデルマンなどが主要スポンサーとして名を連ね、マイクロソフト、シボレー、モトローラほかが今回の展示スポンサーとしてブースを展示し、活況を呈していた。

 開催場所のオールストリームセンターは、トロント市街の南西・オンタリオ湖畔にある国際展示会場だ。荘厳かつ光をたくさん取り入れたルーミーなデザインが印象的で、近くには風力発電機があり、環境にも配慮されている。

 メッシュ・カンファレンスはかなり大がかりなイベントである一方、北米のカンファレンスと違って、どこかローカルな雰囲気を醸し、とてもアットホームな印象。歩いていたら、このカンファレンスの創始者から話しかけられた。この気さくさがメッシュ的なんだろう。セッションの合間にはジャズ・バンドが場内を練り歩き、参加者たちを和ませていた。

 講演時には、公式ハッシュタグによるツィッター活用のみならず、バックチャンネルと呼ばれる専用のウェブサイトで投稿を表示させ、登壇者に質問、またその投票を行い、終始会場に映し出すなど、参加者とのインタラクションを強く意識したカンファレンスであることが窺われる。驚いたことに、スケジュールを調べたり、ツィッターによる投稿を容易にするためのiPhoneアプリまで配布されているではないか。

 初日に行われた基調講演の一回目は、「メディアの未来」と題されたものだ。登壇したのは、英ガーディアン紙でディレクターを務めた経験をもつエミリー・ベル氏。現在は2010年に新設されたコロンビア大学大学院のトゥー・センター・フォー・デジタルジャーナリズムでディレクターを務めている。ガーディアン時代の彼女は、クラウドの力を使って調査報道を行うなど、老舗メディアのデジタル化をリードした。

 基調講演前に、司会者から会場への問いかけが「このなかで紙の新聞を購読している人は?」だった。挙手したのはおよそ半数。そんなマスメディアを取り巻く環境はどのように激変したのだろうか。ベル氏は「まるで高度3万フィート上から落っこちたようなもの」と形容する。

 2003年から始まったグーグルニュース 【註1】を引きつつ、「あなたがた(旧来メディア業界人)に告げるのは残念ですが、アグリゲート(収集の意)しないなら死ぬでしょう」と手厳しい。新聞社ほかがけっして他社や参考サイトへのリンクを認めないことに対し、"ウォールド・ガーデン・シンドローム(囲まれた塀症候群)"との批判があるが、それを含めての発言であろう。

【註1】 グーグルニュース
プログラムによる自動生成型のニュース・アグリゲーション(収集)・サイト。ひとつのトピックについて複数のニュースソースから自動収集。読者は自分の関心にあわせてカスタマイズすることができる。
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