雑誌
いい加減にしろ! 全国「撮り鉄」事件簿
線路内侵入・器物破損・窃盗・・・
はては一般利用者に罵声!

 言うまでもなく「電車」とは、極めて公共性の高い乗り物だ。それを愛していると言いながら、公共性ゼロの輩が、今日も一般乗客の安全を脅かしている!

「田んぼなどの私有地や、鉄道会社の敷地内に無許可でズカズカ入り込むのは、日常茶飯事です。中には撮影の邪魔になるからと、民家の木の枝を勝手に切り落としたり、危険防止のフェンスをニッパーで切ってしまう者さえいます。注意しても、大抵は無視されるし、ひどい場合は『あんた、鉄道会社の人間じゃないだろうっ!』と逆ギレされることさえある。もはや彼らは鉄道ファンとは言えませんよ」

 そう苦々しげに語るのは「撮り鉄」キャリア10年という30代の鉄道ファンだ。

 今では「鉄ちゃん」の愛称で世間から認知されるようになった鉄道ファン。その楽しみ方も写真を撮ったり、鉄道模型を作ったり、列車ダイヤを研究したりと様々で、年代層も子供から高齢者まで幅広い。最近では「鉄子」こと女性の愛好家も急増中だ。

 だが、いいことばかりではない。昨今の鉄道ブームの背後では「マナーなんてクソ食らえ」とばかりに平気で迷惑行為を繰り返す鉄道ファンが、やたらと目立つようになってきたのである。とりわけ問題とされるのは鉄道車輌の撮影に至上の喜びを見出す、通称「撮り鉄」たちだ。

 鉄道ブームが高まるにつれて、この「撮り鉄」たちが引き起こす事件がマスコミをにぎわす機会も次第に多くなってきた。

 今年5月には、鉄道ファンの会社員男性(47)がJR上越線の沿線で撮影スポットを探しているうちに誤って崖下に転落死するという痛ましい事故まで起きてしまったのだ。地元の渋川警察署が説明する。

「死因は外傷性ショック死です。現場はトンネル付近で、鉄道ファンの間では絶好の撮影ポイントだったという話ですが事故の発生は初めてですね」

 死亡事故まで発生---。この緊急事態を受けて、本誌は今回、急増する「撮り鉄」事件を調査し、別表にまとめた。

 詳細は表をご覧いただきたいが、14並んだトラブル案件をながめると、身勝手な行動がいかに多くの運行障害を発生させているかが分かる。

 例えば、今年5月にJR関西線の王寺---法隆寺間踏切で起こった事件では、50代の男性が線路内に侵入して堂々と三脚とカメラを設置。列車は緊急停止して、後続の列車7本に遅延が発生。約1300人の足に影響が出た。

 また、傍若無人ぶりが目に余ったのは、今年1月24日に起きた「鉄オタ電車ジャック」事件だ。当日は京浜東北線・根岸線209系電車の最終運行日で「引退」する車輌の最後の勇姿を見届けようと多くの鉄道ファンが集まった。その中で一部のファンが、事実上、車輌を占拠するという暴挙に出たのだ。

「この列車は通常運行だったので一般の乗客も乗っていたのですが、彼らは一般客を無視して車内で大声を上げたり、電車が駅に止まると一斉にホームに走り出て写真を撮ったりのやりたい放題。ついには何も知らない一般客に対して、『これは鉄オタ専用で〜す』『一般人は乗れませ〜ん』と乗車を拒否する行為に出たんです」(全国紙社会部記者)

 それにしても、一体なぜ「撮り鉄」たちは、これほど電車に熱を上げるのか?

 ある40代の「撮り鉄」はこう言う。

「やはり純粋に電車が好きだから。できれば人間が映り込んでな写真を撮りたいから場所取りでは負けられません」

 彼らの実態を探るべく、記者は6月12日、JR横須賀駅などで催された「YYわい わいのりものフェスタ」なる鉄道イベントを覗いてみた。

 展示車輌の周辺は、ほとんどが親子連れで、予想したほど殺伐とした雰囲気はない---と思っていたら、突如、背後から聞こえてきたのは「撮影の邪魔だ!」という怒気まじりの声。振り向くと、そこにはカメラを構えた男性がまとわりつく我が子を睨みつけていた。どうやら父親が筋金入りの「撮り鉄」だったようだ。

 さらに熱気を感じたのは展示車輌が動き出す直前だ。数十人が一斉にカメラを向けると、数mおきに並んでいる職員が「白線まで下がってください」と怒鳴り声をあげる。最近の「撮り鉄」トラブルで、かなり神経質になっているようだ。

昔と今と・・・異なる気質

 もちろん、暴走する「撮り鉄」たちはマジメな鉄道ファンの中のほんの一部。それだけに、多くの心ある鉄道ファンは彼らの無軌道な振る舞いを、悔しい思いで見つめているようだ。冒頭の30代鉄道ファンが話す。

「昔の鉄道ファンたちは、みんな、いい意味でコソコソ写真を撮っていた。それが、今は図々しく無神経で身勝手な人が増えている。特に、一般の乗客を排除しようとするのは大問題です。一部の『撮り鉄』のせいで、大部分の鉄道ファンが彼らと同類に見られてしまうのは辛いですね」

 彼らの対応に苦慮しているのは鉄道会社も同様のようだ。ある鉄道関係者はこう語る。

「迷惑行為をしているといっても、正規の料金を払った"お客様"である以上、こちらとしても強くは出られないという面もあります。とはいえ、もちろん一般のお客様の利便が最優先です」

 鉄道アナリストの川島令三氏(59)は鉄道ファンの変化を指摘し、こう話す。

「鉄道写真のプロは人様に迷惑をかけずして撮る。一般の愛好家にも、そうあってほしい。けれど、ネットの普及にともない鉄道趣味の世界も"ヨコ社会"になってしまった。当たり前の注意をしてくれる先輩が消えてしまったのにも問題があるのでしょう」

 一般客に迷惑をかけてまで貫いていい趣味などあるはずがない。暴走する「撮り鉄」たちは、今こそ、自らの行為が自分たちの首を絞め、鉄道ファン全体に世間の冷たい目を集めているという事実をしっかり自覚すべきだ。

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