企業・経営
日本風力開発の“危機”が証明する新興市場の粉飾体質

不祥事続出で株価はストップ安

 クリーンエネルギーの代表と目されている風力発電――。

 地平のかなたに巨大なプロペラが整然と立ち並ぶ風景は、環境にやさしいイメージだが、実は、騒音、低周波、鳥類の激突死などで近隣住民とのトラブルが絶えないうえ、「風任せ」で出力が安定せず、「風力発電を事業として成り立たせるのは難しい」(電力会社幹部)というのが、電力業界の常識だった。

 そこに果敢に挑戦したのが日本風力開発だ。三井物産で風力発電を手がけていた塚脇正幸氏が、1999年7月に起業、風力発電機の「代理店販売事業」と設置した発電所の電力を電力会社に販売する「売電事業」の二つを柱に成長、今では国内風力発電量3位の独立系として電力業界に認知され、東証マザーズに上場している。

 その日本風力開発が、先週来、証券市場の信頼を失わせる不祥事の連続で、株価はストップ安を繰り返し、市場からの退場はもちろん、企業の存続すら危ぶまれている。

 発端は、6月14日、意見の合わない会計監査人の新日本有限責任監査法人(新日本監査法人)を解任、新たにやよい監査法人を選任したと発表したことだった。原因は、日本風力開発の従業員が、取引先従業員と交わした「覚書」にある。新日本監査法人は「覚書」が09年3月期決算の「収益」に影響を与えたとして決算の修正を要求、日本風力開発はこれを拒否、解任に至った。

 IR(投資家向け広報)では、「覚書」の中身にまでは踏み込んでいない。しかし、新日本監査法人が販売手数料の収益計上に問題があると指摘したのだから、たとえば「買い戻し特約」のようなものがをつけて風力発電機の売買が成立するといったような“工作”をしたのだろう。

 3月期決算の会社が、この時期に会計監査人を解任、監査が未了なのだから、当然、有価証券報告書は作成できない。東京証券取引所は6月14日、日本風力開発を監理銘柄に指定、翌日は前日比4万円安の14万3600円まで売り込まれた。イメージが先行する「環境銘柄」は、期待のメッキが剥げると、投資家の逃げ足も速い。同社株は、以降も売りが売りを呼ぶ展開となって下げ続けた。

 さらに証券市場の落胆を誘ったのは、6月21日、IRで「主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」を出したことだった。創業オーナーの塚脇社長が、日本風力開発株で金融機関から「株担保融資」を受けていたところ、株価の急落で金融機関が担保権を実行して株を売却していたことが判明した。

 もともとの塚脇氏の保有割合は、約11%の1万6500株。この日の発表は7080株だったが、残りの株も担保に入っているので担保権行使は確実。当然、「売り材料」で、22日はストップ安の5万5400円まで下げた。

 上場を機に“成功者”の仲間入りをしたと勘違いした創業社長が陥った「株価頼み経営」――ステレオタイプのそんな社長像が浮かび上がってくるが、実は、同社の「粉飾体質」は、既に周知のものだった。

 私は、日本風力開発を「『神風』決算の怪」というタイトルで、昨年8月20日発売の会員制月刊誌『FACTA』に執筆した。動機は単純だった。09年3月期の決算で、同社は「風力発電機115基分の代理店収入を得た」と、発表したのである。

 これは、「ありえない数字」だった。

 08年度末の時点で日本の風力発電の総設置基数は1517基である。1980年に初めて設置され、00年以降は急速に増えたが、それでも1517基。しかも、近年はペースが鈍化、国内機の設置数は、06年度61基、07年度5基、08年度25基に過ぎない。どう逆立ちしても、115基の販売手数料を得るのは無理だろう。

 そうした疑念をもとに取材、記事にしたのだが、日本風力開発の説明は要領を得ないものだった。

「115基分の代理店販売はあまりに多いのではないか」 という質問に、管理部・財務IRグループはこう答えた。

「建設会社は日本製鋼所と日立製作所から直接、仕入れるので115基分の内については、当社は関知していません」

 日本風力発電は、「販売代理店」として、日本製鋼所と日立製作所の製作する風力発電機を扱う。購入するのは工事を請け負ったゼネコン。ゼネコン―発電機メーカーの間に入っているだけなので、契約の内容には関知していないというのだが、これはいかにも苦しい説明だった。

 一基あたりの代理店手数料は約3000万円。それだけの手数料が得られるのは、日本風力開発グループの発電所だからで、全部把握してしかるべきだ。「関知しない」といったのは、多年度にわたる利益の“先取り”を知られたくなかったからだろう。

 それだけ同社は苦しい状況に置かれていたわけで、「神風決算」と皮肉を込めて記事にしたのだが、その時は“工作”を認めた新日本監査法人も、無理な収益計上を可能にする「覚書」が複数、出てきたのでは、修正を強硬に申し入れるしかなかった。

公表売り上げ118億円でも実態は3億円

 日本風力開発は株価が急落、信用が失墜しただけではない。今年の期末には、マレーシアの無名企業から「200億円を受注」と発表した。これも“眉唾”の決算対策だったが、計上を新日本監査法人に拒否された。つまり国内でごまかしが効かず、海外に逃げた印象で、それが塚脇社長の「自己株対策」でもあったとなると、この会社の将来は危うい。

 それにしても無理を重ねる新興市場企業は、日本風力開発だけではない。

 今年5月、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反の疑いで強制調査を入れたエフオーアイは、09年3月期の売上高を約118億円と公表していたが、実際の売上高は3億円程度。なんと97%を水増ししていたというひどさだった。

 半導体製造装置メーカーとして、一時は業績が良かったものの、ベンチャーキャピタル向けについたウソが恒常化、業績は右肩下がりなのに、作られた数字だけは好調で、09年11月にマザーズに上場を果たす。が、さすがに見破られて半年で正体が割れた。

 それにしても、こんな杜撰なウソをつき通す神経とはどのようなものなのか。

 日本風力開発やエフオーアイだけではない。マザーズには、事業規模が小さい分、「ごまかしは効く」といった証券市場をなめたような経営者が少なくない。

 新興市場経営者のコンプライアンスをどう確保するか。悲しいことに、99年末の市場開設以来の課題がまだ残っている。
 

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら