佐々木俊尚×長谷川幸洋vol.2
「小沢か、反小沢か」にしか興味がない新聞ジャーナリズムの限界

vol.1 はこちらをご覧ください。

佐々木(ITジャーナリスト):菅直人政権が誕生したとき、新聞は各紙一面に政治部長のコラムが載っていたじゃないですか。軒並み、「菅政権は反小沢か、親小沢か」などといった話ばかり書いている。

 そんな記事を読んでいると、財政破綻一歩手前で、また格差社会もここに極まれりみたいな社会状況になっている中で、そんなことが政治の一番の中心軸になっているので本当にいいのかっていう思いがしていました。

 私だけではなく読んでいる側は、そんなことが関心事ではないですよ。

 たとえば、僕が取材しているIT業界では、これまで議論されてきた「光の道」とか電子教科書、電子カルテなどといったIT政策が、菅首相に代わったことでどう変わるのかに興味があるわけですよ。

 世の中全体としても、菅さんがどういう格差社会対策、景気浮揚対策をやってくれるのかというところに、みんな関心を持っています。実は「小沢か、反小沢か」というのは、あまり多くの人の興味対象ではないと思うんです。

長谷川(東京新聞論説委員):まったくそのとおりですね。国民の多くがそうだろうし、僕自身もそうなんだけど、菅政権はいったい何をしてくれるんだろうかが最大の関心事です。

 もっと具体的に言うとマニフェストで積み残した分はどうされるんだろうか、これが大きな軸だと僕は思っているわけです。

 予算の制約があるのでマニフェストをやろうとすると10兆円以上足りないと言われてます。とても予算的には難しい。難しい中で、菅さんは国債発行額を44兆円以下に抑えると仰っています。そうするといったい何をするんだろうか。おそらくマニフェストの残り分はもうできないかも知れない。

 そうすると「あれだけマニフェスト選挙を言ってきて、マニフェストが達成できない民主党っていったい何?」ということになる。民主党のアイデンティティそのものが失われてゆくんじゃないかと思っているんです。

佐々木:ええ。

コンテンツの中身に踏み込んだ報道を

長谷川:それでは枝野幸男幹事長は就任後の記者会見で、それについて何と言ったか。党運営を透明にする、ただそれだけしか言っていない。政策の中身、コンテンツはいっさいふれていない。

 長妻昭厚生労働大臣は、こども手当の満額実施はちょっと無理かもと仰った。そこでちょっとだけコンテンツが出ました。それから玄葉さんが、消費税のことを書いたほうがいいんじゃないかと。そこでコンテンツがちらっと出た。

 でも僕がザッと見てる限りではそれだけです。

 「透明化」だけで見出しをつくっているのではなく、こうしたコンテンツの中身にこそ、政治ジャーナリズムがもっとも報じるべきことだと思うのです。

佐々木:清潔な政治とか透明性のある政治って、しょせんアンチテーゼでしかないわけです。建設的な議論とは違うわけです。

 例えば原口総務大臣が就任したときに、どれだけの公約があったかというと、実はIT政策に関してはほとんど真っ白だった。真っ白な状況の中で有識者をよんでタスクフォースを立ち上げた。

 今までは霞が関が作った政策について、ゴーサインを出していいかどうかを小さく議論するのが有識者会議でした。今度のタスクフォースは真っ白な中から新しい政策を有識者に考えてくださいというんです。今回のタスクフォースの定義はそうだった。

 結果的に見ると、例えばソフトバンクの孫正義さんと原口さんは仲がいいので、そこで裏側でいろんな政策について意見交換が行われ、そこから原口さんの気持ちが固まって、じゃ、こういう方針にしますよ、ということが知らないうちに決まってしまったりとか、ある意味、ブラックボックス化している部分があるのはありました。

 一方で、原口さんはどういうふうに政策を決め、それに対してどういう議論が行われているのか、そういうところがある程度可視化された。政策決定プロセスの一部が若干外部化されて見えるようになってきている。そういうメリットはありました。

 こうして透明化していくというのは非常に重要なことだとは思います。

 しかし、さらにいえば透明化していく中で、どこに軸を置くのかということをもう少し提示しないといけないですね。

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