高橋洋一「ニュースの深層」
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「賢い」官僚が成長産業を決める「新成長戦略」は過去の遺物だ

これが成功すればノーベル賞もの!?

2010年06月21日(月) 高橋 洋一
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 6月17日、民主党のマニフェストが公表された。翌18日、菅政権は「新成長戦略」を閣議決定した。マニフェストの裏書きのようなものだ。

 このコラムで前回(菅直人「所信表明演説」から浮かび上がる「第三の道=増税指向」)と前々回(菅直人首相「第三の道」政策では経済成長も円安もムリ)、すでに増税議論のバカバカしさを書いたので、今回は「新成長戦略」を取り上げよう。

 この「新成長戦略」はマスコミに好評のようである。その理由は、各産業についての将来の数字を含めデータが豊富であることのようだ。なんのことはない記事にしやすいだけなのだ。

 しかし記事にするのは簡単だが、実際に成長をさせるのは実際には難しい。ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授(プリンストン大学)は、かつて筆者にこういったことがある。

「経済成長を確実にできる方法を発見すれば、ノーベル賞は確実だね。だって、世界中から貧困問題がなくなるじゃないか。経済学なんて学問もいらなくなってしまうよ」

 それでは、経済学はまったく無力かというと、そうでもない。成長に良さそうなことはだいたいわかっている。大雑把にコンセンサスができているところは、競争政策、規制緩和、貿易自由化、教育投資、技術開発、マクロ経済の安定などが成長に重要だということであろう。

 この観点から、新成長戦略を読み直してみると、「競争」という言葉はほとんど「競争力強化」として使われている。ここでいう競争力強化とは、成長と同じ意味で使われているに過ぎない。肝心の競争政策にはほとんど言及がない。

 規制緩和については、「第二の道」が「行き過ぎた市場原理主義」だったとして、規制緩和がやり玉に挙げられている。前回、コラムで指摘したように、最近10年間での日本で規制緩和は先進国の中で突出したモノではなく、平均的なレベルである。

 ブレア政権のブレーンとして、本家本元の「第三の道」を提唱したアンソニー・ギデンズは、その著書で、「日本はイギリスのようなレッセ・フェール(自由放任主義)的な市場改革も経験していない」と断じている。菅総理の「第三の道」には、さぞかしびっくりしていることだろう。

 新成長戦略では、規制緩和の記述は意外と多い。これなしでは、成長ができないというのはもう誰でも知っているからだ。また、貿易自由化、教育投資、技術開発もそこそこ書いてある。(マクロ経済の安定は最後の書く)

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