"策士"菅直人が「9月再選後」に狙う「消費税10%増税」選挙
衆参ダブルの奇襲作戦は土壇場で断念

 菅直人首相が週明けの6月14日頃までは「消費増税」を前面に押し立てて乾坤一擲の「7月11日衆参院同日選挙」に踏み切ることを検討していたのはほぼ間違いない。民主党の安住淳選対委員長が「衆参ダブル」を進言していたのも事実である。

 菅氏は原理原則を重視する政治家である。近著『大臣-増補版』(岩波新書)に次のように書いている。

< 政策的に行き詰まったり、スキャンダルによって総理が内閣総辞職を決めた場合は、与党内で政権のたらいまわしをするのではなく、与党は次の総理候補を明確にしたうえで総選挙に挑むべきだろう >

 この「政策的行き詰まり」は鳩山由紀夫前首相の下での普天間問題迷走であり、「スキャンダル」を鳩山氏と小沢一郎前幹事長の「政治とカネ」問題と考えれば、筋論から言っても菅首相は直ちに衆院解散・総選挙で国民に信を問わねばならない。

 それだけではない。現時点で自民党は衆院300小選挙区のうち3分の1で候補者擁立の見通しが立っていない。公明党と支持母体・創価学会にとっても「衆参ダブル」はワーストシナリオであった。

 加えて、昨年の8・30総選挙で初当選を果たした民主党の「小沢チルドレン」や「小沢ガールズ」も厳しい選択を迫られることになる。すなわち、これまでのように小沢氏に全面的に依存して衆院選を戦うのか、それとも枝野幸男幹事長率いる新執行部にすがるのかの「踏み絵」を踏まされることになるのだ。

 菅首相からすれば、現有の衆院309議席がたとえ270議席前後に減少したとしても、「ダブル」による相乗効果で参院が単独過半数確実になるのであれば、「衆参院同日選挙」に賭ける意味がある。衆参院ねじれ解消による安定政権が期待できるからだ。

 もちろん、「数の横暴だ」「権力志向だ」との批判が巻き起こることは必至だった。そして「ダブル」に仙谷由人官房長官と枝野幹事長が強く反対、最後は菅首相も断念したというのである。

 と考えてみると、菅首相が17日の「参院選マニフェスト(公約)」発表の際の記者会見で発言した「消費税10%」の意図も透けて見えてくる。同発言は以下の通り。

「すでに消費税について政府税調の方で議論を始めていただいておりますけれど、2010年度内にそのあるべき税率や、あるいは逆進性対策を含む、この消費税に関する改革案を取りまとめていきたいと考えております。合わせて超党派での幅広い同意を目指す努力を行っていきたいと思います。

 尚、当面の税率については、自民党が提案されている10%をひとつの参考にさせていただいきたいと考えております」

98年の「金融国会」を再現

 菅直人という政治家は、なかなかの策士である。

 参院選がいま指摘されているような「民主党は改選議席54には届かない50台前半、自民党も改選議席37を若干上回る40前後」という結果に終われば、それこそ消費税を含む税制の抜本改革を首相が言う「与野党協議機関」で話し合うことになるはずだ。

 その場合、想起されるのは98年の小渕恵三政権下の「金融国会」である。

 アジア金融危機の直撃を受けたわが国の金融機関救済のため自民党政権が目指した金融再生法は、党派を超えて「政策新人類」と言われた枝野、仙谷両氏と石原伸晃元自民党政調会長、塩崎恭久元官房長官、渡辺喜美元行革担当相(現みんなの党代表)ら当時の3回生、2回生議員が尽力してまとめ、成立させたものだ。

 そして当時の小渕首相の役回りを菅首相が、そして野中弘務官房長官の立場を仙谷官房長官が担っているのではないか。その頃の「経世会支配」の担い手だった野中氏だけでなく梶山静六元官房長官も、民主党論客の仙谷、枝野両氏を「現実主義者」として高く評価していたのは周知のことである。

 菅首相は恐らく、参院選で「惨敗」しなければ9月の民主党代表選で再選され、その後、そう遠くない時期に「消費増税」を争点にして衆院解散・総選挙を断行するはずだ。「消費税10%」は発言が、参院選後政局のトリガー(引き金)となると言っていい。

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