「沖縄式交渉術」が分からなければ菅直人政権でも「普天間問題」は解決しない

東京の政治エリートは楽観し過ぎている
佐藤 優 プロフィール
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楽観視する外務官僚の「謀略シナリオ」

 仲井真知事の「『少なくとも県外』と言った民主党に対する県民の期待は失望に変わった。日米合意は遺憾で、(辺野古移設の)実現は極めて厳しい」という発言を菅総理がどう受け止めたかは不明だ。しかし、外務官僚は、「何とかなる」と考え、次のような戦略(謀略)を考えていると思う。

1.本件を名護市、特に辺野古周辺地区だけが関係する軍事問題であると土俵を限定する。

2.普天間飛行場の危険を除去することができるので、沖縄全体の利益のためにこの決定は必ずしもマイナスでないというプロパガンダ(宣伝)を行う。

3.辺野古移設への反対闘争に「疲れ」が出るのを待つ。

4.東京から「沖縄のほんとうの友人」なる複数の民間人を派遣する。これらの民間人は、首相官邸、外務省、防衛省と独自のパイプをもっている。沖縄人と酒を酌み交わし、いっしょに肩を組んでカラオケを歌う。

 そして、最初は聞き役に徹する。辺野古への移設を受け入れさせるために沖縄で鍵を握るのが誰かを物色するために、善人のふりをしているのだ。しかし、その本質は東京のエリートの利益を体現した工作員だ。

5.そして、利益誘導で、辺野古地区への移設を受け入れさせる。

 いわゆる「アメとムチ」の政策だ。菅政権が、優れた民間工作員を雇い、数億の内閣官房機密費(報償費)を投入すれば、この謀略は成功するかもしれない。しかし、筆者はそのための「機会の窓」は、ほぼ閉じかけていると見ている。

 なぜなら、機密費に対する国民の監視の目が厳しくなっており、自国民である沖縄県民にこのような「裏のカネ」を投入するリスクが大きくなっているからだ。機密費なくして、名護市や辺野古周辺地区での切り崩し工作は不可能である。

 また、政府の工作に協力しても、それが露見した場合、非難されることを恐れて、このようなリスク負担の高い秘密工作を引き受ける能力の高い民間人を見つけることが難しくなっているからだ。

 普天間問題の突破口をどう見つければよいかについては、入念な研究が必要だ。6月4日、衆参両院で内閣総理大臣に指名された後の記者会見で菅氏は、「数日前から『琉球処分』という本を読んでいるが、沖縄の歴史を私なりに理解を深めていこうとも思っている」(6月5日東京新聞朝刊)と述べた。

沖縄返還直前に政府高官が分析した「特別な小説」

 筆者は、菅総理が言及した本は、沖縄初の芥川賞作家・大城立裕氏の名著『小説琉球処分』(講談社、1968年)であろうと推定している。1991年の再版に際して、大城氏は、沖縄返還にあたった日本政府の官僚が本書から沖縄との交渉術を学んだという話を披露している。

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