山崎元「ニュースの深層」
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「モラルハザード銀行」になった日本振興銀行

「評論家はもういらない」と言い切った「秀才」
木村剛はなぜ転落したか

2010年06月16日(水) 山崎 元
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 日本振興銀行に警視庁の家宅捜索が入り、先に会長を辞任した木村剛氏にも任意の事情聴取があったと報じられている。目下の嫌疑は検査妨害で、重要案件に関わる社内メールの大量削除などがあったらしい。メールの削除があったことについては、西野社長が認めている。但し、木村氏は今のところこの件への関与を否定しているという。

 振興銀行への金融庁検査は、異例の長期間にわたって続いていた。加えて、先の決算は51億円の赤字で、これはSFCGによる債権の二重譲渡問題の影響を含まない業績だ。

 ビジネス的には傍目からも変調と見える状況だった。木村氏は、先般、この決算の責任を取る形で会長を辞任した。

 加えて、報道を見る限り、出資法違反の疑いが濃い。SFCGから買い取った債権を1ヵ月後にSFCGに買い戻させる実質的に融資になる取引で、この際の手数料は経済的には金利に外ならない。

 手数料を利回りに換算すると年利45.7%にもなり、出資法の上限金利29.2%を上回っているとされる問題だ。

 当時会長で行内随一の権力者だったはずの木村氏が、こうした重要案件について認識していなかったとは想像しにくい。

 これらの問題がどの程度の拡がりを見せるか、現時点では分からないが、振興銀行は、木村氏にとって大きな「挫折」であることは間違いない。

 筆者が木村氏に最初に会ったのは、村上龍氏が主宰するメールマガジン「JMM」(Japan Mail Media)の座談会の席上だった。当時、木村氏は、竹中経済財政担当大臣のブレーンとして、不良債権処理のアドバイスで活躍していた。座談会でも弁舌爽やかで、終了後に村上龍編集長も感心していた。

「木村さんという人は、最終的に、ご本人としては何をやりたいのでしょうか。政治家になろうとしているのかな。そうでもないのかな?」と仰っていたのが、記憶に残っている。以後、「木村剛(氏)は、何をしたいのか?」という問いが、筆者の頭の中にずっと引っ掛かっている。

 木村氏は、その後「竹中プラン」の中心人物の一人として日本の銀行の不良債権問題に当たり、金融庁の顧問も務めた。同時に、精力的に著作を発表し、自身のコンサルティング会社も業容を拡大して行った(業績が本当に順調であったのかどうかは分からないが、活動は多岐にわたっていた)。

 この頃、筆者が、確か二度目か三度目に木村氏にお会いした時に、「いいですか、ヤマザキさん、日本には評論家はもういらないのです。必要なのは実践家だ」と仰っていたのを記憶している。

「論を正しく論じるなら、評論家にも『一人前』程度の存在意義はあるのではないか」と反論したいのをぐっと堪えつつ、弁も筆も立つ論客であった木村氏が、評論家を捨ててこれから何をしたいのか、筆者は注目していた。

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