仕事始めが翌日に迫った1月3日のこと。鳩山由紀夫内閣は、同政権として早くも2度目となる日本航空(JAL)に対する資金繰り支援策を講じると発表した。
国民として、見逃すことができないのは、こうした弥繕策を連発せざるをえなくなった昨年末のJALの信用不安の原因が、内閣と企業再生支援機構(再生機構)の杜撰な再生支援計画や甘い情報管理だったということだ。最大2000億円に膨れ上がった支援融資の回収は容易ではない。いずれ国民の血税で穴埋めせざるを得ないリスクもある。前原誠司国土交通大臣ら関係閣僚の政治責任は重大だ。
発表によると、前原大臣らが3日に首相官邸で開かれた会議でまとめた「申し合わせ」は、(1)再生機構に、支援の早期決定を期待する、(2)決定までの間の繋ぎとして、日本政策投資銀行(政投銀)は、これまで1000億円が上限だったJALに対する融資枠を2000億円に拡大する、(3)(金融機関のJAL向け融資について、政府が信用を補完することを約した)昨年11月10日の5大臣申し合わせが引き続き有効であることを確認する、(4)安全・安定的運航の継続確保と、国民目線に立った確実な再建のため(関係閣僚が)連携していく―の4点だ。
わかりやすく言えば、抜本的な再建の支援はいずれ再生機構が決めるものだと機構に下駄を預けたうえで、JALが倒産して飛行機が飛ばないという事態をさけるため債務保証をするので、政投銀はカネを貸してやってくれ、というのである。つまり、JALを重傷患者に例えるなら、傷の治療方針は何も決まっていないし、そもそも治療ができるかどうかわからないが、出血多量で死亡することがないよう、とりあえず輸血をしておこうという話に過ぎない。融資するカネは、政投銀が貸すのを嫌がるほど回収が難しいので政府が保証するというわけだから、将来の税金投入が強く懸念される。
だが、そうしたリスク以上に容認しがたいのは、一連の前原大臣の対応ではないだろうか。9月に就任した途端、JAL自身が自民、公明連立政権時代から策定を進めていた再建案を「生温い」と決めつけた。「腹案がある」といい、自己責任という資本主義や民間企業経営の大原則を無視して、政府が丸抱えして再建する方針を打ち出した。そして、なんら法的権限がないのに旧産業再生機構出身者を中心にした私的チームに再建を委ねた。
しかし、それが上手くいかないとなると、本来は中小企業の再建が使命であり、その手段としては私的再生ADR(民間の任意の再建カットを主体とした企業再建手法)しか持ち合わせない再生機構に、JAL再建という難題を押し付けたのだ。
ところが、関係者によると、再生機構は12月下旬になって、突如、「JALが1月22日付で会社更生法を申請してはどうか」と法的整理案を代診してきたという。裁判所の権威を用いて強引かつ大胆に負債の処理を進める法的整理の準備は、本来なら、厳格な情報管理の下で極秘裏に進められるべきものである。機構の本音は、私的整理を進めるための駆け引きだったのかもしれない。しかし、安易な打診によって、情報は「燎原の火」のように駆け巡ってしまった。
それゆえ、年末の株式市場におけるJAL株の4日連続安を始めとした信用不安が勃発した。しかも、昨年の大納会(売買最終日)の終値は67円と企業の破たんが近いとされる株価のメド(100円)を大きく下回った。放置すれば、年明けの4日以降もJAL株は急落を続け、「株式市場はおろか、日本経済全体に暗い影を投げ掛けかねない」(市場関係者)状況に陥った。前原大臣らはわずか2カ月足らずの間に2度目のJALの資金繰り支援に乗り出さざるを得なかったのだ。
政府としては慎重であるべき民間企業支援に安易に乗り出し、国民の血税をこれほど危うくした前原大臣の政治責任は計り知れない。しかも、こうした安易さは、民主党の信用を著しく傷つけた、あの偽メール事件から、前原大臣が何も学んでいなかったことの明白な証左である。鳩山首相は、ただちに、同大臣の更迭など早急なけじめをつけたうえで、まともな対応をできる政治家を担当閣僚に据え直すべきである。
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