企業・経営
東京電力もトヨタも菅政権も患う「現場を知らないリーダー」に蔓延する「作業着病」
記者会見でも本社でも、なぜかあの格好
東京電力の清水正孝社長も、作業着を着ている場面が多い。

 筆者の独断だが、日本には今、「作業着病」が蔓延している。その「病」は、「アリバイ作り菌」「仕事をしたふり菌」によって起こる。

 東日本大震災の直後、菅首相も枝野官房長官も作業着姿で記者会見をしていた。ファッションセンスがよろしい大臣の中には、作業着の襟を立てて着ている方もいらした。

 ちなみに筆者は記者になる前、大手メーカーの半導体工場勤労部で「安全衛生」担当というのを2年やっていたので、作業着の意味を少しは理解しているつもりだ。生産現場に出て仕事をする際に、機械などに巻き込まれにくいような作りになっているので、本来襟を立てて着るものではない。

 原発事故の責任を取って退任する東京電力の清水正孝社長も、作業着を着ている場面が多い。清水社長以外の東京電力の役員や幹部社員も記者会見などでは作業着を着ている。

 ある大手新聞社でも、震災直後、東京本社編集局長室で、社内で最も処世術に長けていると言われている編集局長が作業着姿で執務する姿が目撃されている。

工場でのない本社で「作業着」を着る理由

 実は震災前から「作業着病」が流行っていた企業がある。それはトヨタ自動車だ。東京都文京区にある東京本社を訪れた際、生産現場があるわけでもないのに、ある役員が作業着姿で歩いているのを目撃した。

 トヨタでは作業着のことを「ナッパ服」と呼ぶ。2年前に就任した豊田章男社長が「現場第一主義」を唱え、一時期華美に走った社風を質実剛健な雰囲気に戻そうという狙いから「ナッパ服」の着用を推奨しているため、作業着を着る風潮が広まった。社長に決裁を取りに行く際には、わざわざ「ナッパ服」を着用する幹部もいるという。昨年の入社式からは全新入社員に「ナッパ服」を着せるようにもなった。

 しかし、よく考えてみると、政治家にしても、東京電力役員・幹部にしても、編集局長にしても、トヨタ役員にしても、震災現場でもなく、工場があるわけでもない東京にいるのに、作業着を着ていることが興味深い。これはどう考えても、仕事をしているふりを見せようということにしか筆者には映らない。ずばり言ってしまえば、現場の実情を知らず、ろくな仕事をしていないくせに汗をかいている姿を演じているのである。

 トヨタも決算業績は今一つであるし、大市場の中国では現地の消費者の嗜好に合った車の開発が遅れ、米ゼネラルモーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)、韓国現代自動車との競争で劣勢に立っている。現地の情報が開発に生かされていないように見える。東電も原発復旧対応でもたもたしているし、放射能汚染に怯える市民救済よりも、自社の生き残りの方が大切のように感じさせる行動を取っている。

 そして政治は、1000年に一度の大震災という国難への対処もおぼつかない。仮設住宅の建設が遅れている状況ひとつを見ても、政治のもたつき具合が分かる。仮設住宅の建設が遅れているのは、材料不足などではなく、「こういう事態だからコストを無視しても材料と人をかき集めてすぐに用意できる体制を取っているが、どこに建てるかという明確な指示がないから仕事が進まないだけ」(大手住宅メーカー幹部)なのだ。

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