雑誌
さぁ6月「放射能と梅雨」にはこう立ち向かえ
雨に濡れたらどうなる?洗濯物は?
入梅直前の今、知らなければならない

 福島原発の事故から2ヵ月半。5月23日、九州南部では梅雨入りを迎えた。関東地方は6月8日頃、福島県など東北南部は12日頃の入梅が見込まれている。

 梅雨と聞いて頭をよぎるのは、大気中に飛散している放射性物質を含んだ雨が我々の頭上に降り注ぐのではないか---という恐怖である。

 放射性物質による人間や環境への影響を調査研究している日本大学歯学部アイソトープ共同利用施設専任講師・野口邦和氏はこう語る。

「現時点で空気中を飛んでいる放射性物質はほとんどありません。文部科学省が発表した5月23日時点の数字で言えば、

 東京都文京区や神奈川県横浜市で0・04マイクロシーベルト。ほぼ人体に影響を与えないレベルなので〝放射能の雨〟に対して神経質になる必要はないです」

 むしろ問題なのは、すでに地表に落ちてしまった放射性物質のほうだと野口氏は指摘する。

「特にセシウム137は半減期が30年と長く、なかなか消えない。福島県郡山市(福島原発から約60km)は市独自の基準を定め、小中学校の校庭の表土を1~3cm除去して放射線量を5分の1にまで減らしたのですが、こうした試みが全国的に広がるかもしれません」

 福島県から関東地方にかけて、福島原発がまき散らした放射性降下物(フォールアウト)が地表に溜まっている。その分布の南端は、5月11日に南足柄市産の茶葉から暫定基準値を超える550~570ベクレルの放射性セシウムが検出されたことからも分かるように、約300km離れた神奈川県西部にまで及んでいる。

 さらに、気象業務支援センターの村山貢司専任主任技師の気象予測によると、

「今年の梅雨の特徴は、晴れの日と土砂降りの日がハッキリすること。集中豪雨が発生する危険性も平年よりも高い」

 それだけに、土砂災害や河川の氾濫などが起これば汚染された地域はますます拡大し、甚大な被害が生じることは想像に難くないだろう。

 また、放射能問題に詳しい北里大学獣医学部の伊藤伸彦教授は、より身近なレベルでの注意を喚起する。

「ジメジメとした湿地や水たまりには、雨水と一緒に流れてきた放射性物質が溜まっている危険性があります。近づかないほうが賢明でしょう」

〝現実〟を語らぬ測定値

「公的機関が発表した数値を鵜呑みにしていては自分の身は守れません。そもそも計測地点が少なかったり、ピント外れの場所で計測している場合が往々にしてあるんです」

 と解説するのは、土壌汚染問題に詳しい日本環境学会理事の坂巻幸雄氏だ。

サーベイメーター(放射線測定器)を用いて放射線量を測定する野口氏。センサーの位置により異なる数値が〔PHOTO〕片野茂樹

「例えば、東京都の外郭団体である健康安全研究センターが発表している空間線量率は、ビルの屋上で測定されているので値は低めに出ているんです。

 文科省が発表している放射線量も『周辺に遮蔽物がなく正確な測定が可能となる』という理由で、地上10m~20mの範囲で測定されていることが多い。

 それによって高所では放射性物質が飛散していないことは証明できたかもしれない。けれども人体への影響を調べるならば、地上1m程度の地点で計測しなければならないんです」

 本誌は前出の野口氏の協力を仰ぎ、実際に放射線量の測定を試みた。

 5月23日、雨。場所は文科省の計測地と同じ文京区内。その測定結果は地上1m地点で0・12マイクロシーベルト、地表すれすれの地点で0・15マイクロシーベルト。ところが文科省が発表した同日の文京区の値は0・04マイクロシーベルト。実に3倍以上の開きがあった。

「地面に近かったり通気性の悪い場所は高い数値が出ます。よって大人よりも背丈の低い子供は要注意。入梅後はより多くの放射線データに気を配る敏感さが必要になってきます」(坂巻氏)

 そこで本誌は文科省に対し、観測地点を増やすなど、より正確で現実に即したデータを取り揃える予定はあるのかを尋ねたが、

「観測点の場所などは最終的に各自治体に任せているため、都道府県によってバラつきがあります。観測場所はボランティアで大学などに設置してもらっていることもあり、現段階では増やす予定はありません」(原子力災害対策支援本部)

 という、素っ気ない回答が返ってきた。

 自治体も同様だ。

「地上約18mの高さにモニタリングポストを設置して調査しています。文部科学省からの委託事業なので、現在、測定場所を追加、変更する予定はありません」(東京都健康安全研究センター)

 いつから人類は地上18mで生活するようになったのか。理解不能な調査結果に振り回されて生きることはできない。国民は自衛するしかなさそうだ。それでは我々はどうやって自分の身を守るべきなのか。ここからは梅雨時の具体的な対策を考えてみたい。

Q雨に濡れても大丈夫なのか?

「肌が濡れた場合、放射性物質が肌に付着し、微量とはいえ被曝することになります。傘の他にも念には念を入れレインコートを用いるなど、雨に直接触れない予防をするべき」(琉球大学名誉教授・矢ヶ崎克馬氏)

「放射性物質は特に髪の毛に付着しやすい。雨に濡れた場合は、帰宅後すぐに髪を洗ったほうがいいでしょう。特に子供は背が低いため、放射能にさらされやすいので、雨に濡れなくても洗髪するなど注意が必要です」(野口氏)

Q急な夕立などで洗濯物が濡れてしまった場合は?

「服の繊維の中に放射性物質が残ってしまうので、被曝する可能性がある。もう一度洗うべきでしょう」(矢ヶ崎氏)

「雨の降り始めは空気中の放射性物質が一気に落ちてくるので、放射線量が高くなります。念のために洗い直すのが賢明かもしれません」(伊藤氏)

Q水道水や井戸水は飲んでも大丈夫か?

「飲食物の摂取制限に関する国の基準は1kgあたり放射性ヨウ素300ベクレル、放射性セシウム200ベクレルです。3月に東京都葛飾区の浄水場から210ベクレルのヨウ素131が検出され国民の動揺を招きましたが、それ以来は『不検出』の発表が続いています。5月20日に埼玉県さいたま市の浄水場から0・22ベクレルの放射性セシウムが検出されていますが、この程度の数値であれば健康を害する心配はありません。水道水は飲み続けても健康に影響はないでしょう」(野口氏)

「マンションなどで屋上に貯留タンクが設置されている場合は水道水にも注意が必要です。タンクの中に雨水が混入していないか確認しておきましょう。井戸水に関しては、地表に積もった放射性セシウムは雨によって地中に染み込むものの地表から数十cmの粘土層に付着するので、地中深くから汲み上げた井戸水に関しては問題ないでしょう」(伊藤氏)

Q梅雨時に近づいてはいけない場所は?

「まず第一に水たまり。それと、明らかに雨水が混入している所には注意が必要です。例えば噴水。放射性物質を上昇させ撒き散らす恐れもあるので、近づかないほうが無難でしょう」(矢ヶ崎氏)

「芝生や茂った草むらなど、飛散した放射性セシウムが風などで拡散しにくい場所はホットスポット(高濃度放射線量地帯)なので避けるべきです」(野口氏)

 平年では、梅雨は1ヵ月半ほど続く。決して短くないこの期間、放射能から身を守る努力を怠ってはならない。

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