田原総一朗×上杉隆Vol.2「私が見た『機密費』と鳩山マネー」
「政界とメディア」最大のタブーをすべて話す
田原 総一朗

田原:だからね。

上杉:先輩が取ったときに、その記者って、これはもうジレンマですね。

田原:絶対に困るよ。

上杉:先輩が取って、先輩の目の前で「私はもらえません」と返して、「いいんだ、取れ」となると、先輩に歯向かったことになっちゃう。普通だったら断るのが当たり前なんだけど、政治部の記者クラブのルールだと、上司に歯向かった瞬間にどうなるかというと、基本的には終わりですよ。

田原:終わりです。仲間はずれにされます。他の社にしたら裏切り行為ですから。

上杉:調べたら、朝日新聞の記者は途中から受け取らなくなっているんですよ。そしたら朝日はおかしいってなってるんですよね。あれ、不思議ですよ。

田原:僕がひとつ知っているのは、ある地方紙の東京支局長が本社に帰ることになったので、田中角栄さんのところに挨拶に行ったらカネを渡されたんです。彼は勇気のある記者で断ってきた。返しちゃった。

 そしたら本社の社長が怒鳴って電話してきた。「なんて失礼なことするんだ。冗談じゃない。行って謝罪して受け取ってこい」と。結局、受け取ってきて、彼の送別会のパーティーに使ったんですね。

ニューヨークタイムズの"2ドル・ルール"

上杉:知らないうちに名前を使われている記者もいっぱいいます。その一方で本当に受け取らないで辞めちゃった記者も何人もいます。でも、受け取らないで辞めるっていうのもおかしな話で、普通、世界中のジャーナリストなら受け取らないのが当たり前のことですね。

 今回、野中さんが、田原さんは受け取っていないといったんですが、日本のマスコミの中で田原さんはすごいなと思うんです。

田原:すごいっていうより、フリーだからできたんです。

上杉:ただ、それも世界で見ると当たり前のことなんですよね。僕はニューヨークタイムズに1999年から2001年までいたんですが、当時ですら、"取材対象者から2ドル以上を超えて物品金銭、便宜供与等を受けてはならない"という"2ドル・ルール"があったんですよ。2ドルといったらスターバックスのコーヒーがぎりぎり入るくらい。

 カフェラテになったらダメなんです。エクストラショットはまずダメ(笑)。それくらい気を遣うんです。 それを超えるとどうなるか。賄賂を受け取ったとされて一発で解雇です。これも70年代からどんどん作ってきたもので、今は1ドルくらいになっているらしいんです。その感覚が日本の記者クラブでは逆になっちゃってますよね。

田原:逆っていうか、先輩を裏切れない仲間を裏切れないと、こういうことになっているんじゃないかな。

上杉:いまテレビに出ている政治部出身のコメンテイターや、論説委員の方、解説委員の方に、いま片っ端からどんどん当たっています。全部ほとんど同じ回答ですね。 まず「そんなものはない」と否定するんですよ。話していると「確かにあるけど、自分は受け取っていない」と言う。

 いろいろ喋って「なぜ知っているのに、それを受け取っていないというんですか」と質問すると、最後は「もう君とは二度と仕事ができない」「こんなことを書くんだったら、君の今後の活動も、これまでの活動に対しても、いっさい信用を与えることはできない」。

 そして「俺の名前は出すな。出した瞬間にどうなるか覚えてろ」「このインタビューはなかったことにする。二度と付き合わない」と。そういう中でフリーの人も全部含めて、受け取っていませんといって出てきたのは田原さんだけですよ。