田原総一朗×上杉隆Vol.2「私が見た『機密費』と鳩山マネー」
「政界とメディア」最大のタブーをすべて話す

vol.1 はこちらをご覧ください。

田原:その次は安倍晋太郎さんでした。だから、官房機密費じゃなかったかもしれません。

上杉:そうですね、外交機密費もありますね。

田原:安倍晋太郎さんの城代家老というおじいさんがわざわざ下関からやってきて、「安倍がお世話になります、よろしくお願いします」と。下関から来てるでしょ、そこで突き返したら彼が死んじゃうんじゃないかと思ってね。

上杉:(笑)

田原:それでそこは受け取った。でも受け取るわけにいかないんで、安倍さんの部下に返したんです。森喜朗さんです。まだ総理大臣になる前です。森さんは、「俺、運び屋か」と言ったんだけど、「悪いけど返してよ」とお願いしました。

上杉:田原さん、必ずもらった人と違う人に返してるんですけど、なんでですか?

田原:返すって難しいんですよ。つまり、突き返したらケンカですからね。

 その場で返したのは一人あります。これは官房機密費じゃないけど、笹川良一さんです。取材に行ったら、「ちょっと田原さん、相談があるんだ。次の部屋に来てくれ」という。臭いなと思った。

 そしたらね、封筒に入って、これはたぶん半分だな、50万だと思うけど、渡してきた。「田中さんからもらったときも返したので、笹川さんからもらうわけにいかない」と言ったら、笹川さんすごいですね。顔色も変えず、「あんたはえらい、俺のカネを返したのはあんたが初めてだ」と褒められた(笑)。

上杉:渡すほうも受け取りやすいようにいろいろ考えるんです。私も秘書やってたんで、あまりここでは言えませんけど、渡すほうの役割をやってたんです。そういうときは相手が取りやすいように、会食をして、「今日はいろいろありがとうございました」とお土産を渡しながら、そこに御車代とポンと入れておく。

 あとは結婚記念日だとか調べて、そのときに渡したり。これは官房機密費じゃないですよ、子ども手当ですね、鳩山家の。これはまずいかな(笑)。

田原:ハハハ。

上杉:受け取る側としても、取材してるとそういう場面はあります。今はあいつは受け取らないとなっています。でも最初のうちはペーペーですから額は小さいですけど、政治家と会食したとき、官房長官も元官房長官もいた席で、帰りにやっぱりお土産を渡されたんですよ。

 会食のときには、今インターネットもあるし、それに秘書をやっていたのでだいたいどこの料理屋だといくらとわかるので、同額返しの感覚でした。

 割り勘にするという不粋なことはできないから、一人1万5000円くらいかなと思ったら、八重洲の富士屋ホテル行って、同じくらいの商品券とかお土産をこっちも持っていって渡す。足りなかったら次の日に、お土産を買って、事務所や議員会館行って「昨日はご馳走さまでした」とやってたんです。

 ある日、向こうがお土産を出したんですよ。こっちも、そのお土産分も含めたものを出して渡した。帰って来て、家について見たら、底に入ってたんですよ。たぶん50万円ですね。白い封筒に。すぐ秘書に電話して、「すみません、職業上受け取れないんですけど」と言ったら、「いやいや違うんだ、今日はいろいろ教えてもらったから気持ちだ」と。

 「気持ちって言われても、これやられると、次ゴハン食べられなくなるじゃないですか、楽しいゴハンを。だから返しに行きます」と言ったんです。「いいよ、またゆっくり」と言われたんですけど、すぐ返さないとなあなあになるので、その日のうちにもう一回タクシーに乗って、秘書に返しに行きました。

 次の日に性格上はっきりさせないと思って行ったんですよ、政治家のところに。それで「昨日はありがとうございました。職業上そういうのもらえないんですよ」と説明しに行ったら、「はっ?」と。

田原:わかってないわけね。

上杉:渡したことも認識してないのか、とぼけたのかもしれないし、あるいは秘書が気を使ったのかもしれない。ちゃんと本人に返さないと、間で抜いてたりされると誤解がどんどん広がりますね。

ホテルに現れた着物の女性

田原:もうひとつは、野中(広務)さんです。

上杉:まさに、私が官房機密費のことを書き始めたきっかけが、4月19日のTBS「ニュース23クロス」での松原キャスターとのあの対談ですね。

田原:これは怖かった。小渕さんが倒れたすぐあとですよ。総理大臣は森さんになってました。だけど小渕さんからだと言ってましたね。

 最初は、野中さんから電話がかかってきて、いいお茶が入ったと言うんです。あの人は京都ですからね。そのお茶を持って行きたいと、受け取ってほしいと。僕はいつもホテルのロビーの喫茶店にいますから、そこへお願いしますと言ったんです。そしたら、部屋を取ってくれと言う。僕はちょっとおかしいと思ったんで、いや、喫茶店で結構ですと。

上杉:人の目があったほうがいいですよ。

田原:多分、料亭の女将だと思う、着物を着た女性が紙袋を持っていた。「ちょっと重いですね。お金なら返さなきゃならないから、受け取らない」、「いや、西陣の生地が入りまして」とか押し返す。「でも、お金なら返さなきゃいけない」というと、「いや、絶対違います」と。で、最後は受け取った。隣にトイレがあるんで、そこですぐ確認しました。

 入ってるんですよ、おカネが。こうなると返し方が難しいんです、とっても。

 これね、現役の人だから、いいにくいんで名前はいいませんけど、僕のとっても親しい政治家に「こんなの受け取っちゃったから返したいけど」と(相談した)。返し方がとっても難しいんですよ、本人とケンカしたくないと思うから。「あなた返してくれないか」と頼んだら、「そんなことしたら俺は政治生命が無くなる。冗談じゃない」と逃げる。

 「誰なら返してくれるかな」と聞くと、「日本でいちばん力がある人なら返せるんじゃないか」と。「誰だろう」と聞くと、「日本でいちばん力がある政治家は約1名しかない」と。

上杉:森さんですか?

田原:まあね。約1名しかない。前に安倍さんのときにも返してもらっていますからね。電話すると「俺、運び屋じゃないぜ」と断られた。「とにかく頼む」と言っても、「田原さん、そんなことしたら俺、政治生命無くなる」と。

 で、しょうがない、野中さんの事務所へ電話したら、選挙の前でいないんです。それで、京都まで返しに行きました。丁寧な手紙書いて、「お気持ちはありがたい。野中さんの気持ちを傷つける気はまったくありません。ただ、こういうものを受け取るわけにはいかない、田中さんのときも返してる。申し訳ないけども」ということを言い添えて、置いてきました。

 そしたらその晩かな、野中さんから電話が来て、「田原さん、選挙終わったら神楽坂で一杯の飲もうや」と。で、食事しました。で、終わり。

上杉:終わりですか。

田原:一切そのことは言わない。返しに行くときに野中さんに電話したんですよ、「返したい」と。「いや、これは実は田原さんが、小渕さんにとってもいいインタビューをしてくれたお礼なんです」と言う。実際、小渕さんが倒れる直前に沖縄でインタビューをしました。「小渕がそれを感謝してる。竹下(登)も感謝してる。その気持ちなんだ」と。

上杉:でも、小渕さんはそのころ意識はないですよね。渡しやすいように、渡しやすいようにいってるのは野中さんのすごいところです。

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