立花隆「小沢一郎は国家主席になったのか」
異様な権力構造、無力な鳩山総理
<日本はついに小沢の出現によって、擬似共産主義国家のような異様な権力構造(党が政権のずっと上に立つ)の国家になってしまったのだ>――立花隆氏は鳩山政権をこう看破した。この国はこれからどうなってしまうのか。

「信頼」はかくして失われた

「すでに民主党は機能不全状態」という立花氏

 鳩山内閣の支持率が「つるべ落とし」といっていいほどの勢いで、一挙に落ちつつある。直近の朝日新聞の調査(12月21日付)では、ついに「支持48%」と50%を割ってしまった。ついこの間まで支持が70%を超えていたことを思うと、まるでウソみたいな落ち込みだ。時事通信の調べではそれより3日も早く、46.8%と、50%を切っていた。他のメディアの調査でも鳩山の支持率は急激な落ち込みを示している。

 スポーツ新聞や夕刊紙の中には、早くも鳩山政権の前途は危ういと見て、「鳩山Xデー」などの表現すらとびだしてきた。政治というのは、動くときには急激に動くものだから、長い休暇があるときには、本当のところ、休暇明けに何が起きるかわかったものではない。この原稿は、12月25日発売の号に載り、そのまま年を越すことになるが、とりあえず、もう少し鳩山のクビはつながったままだろうという見立てのもとに書いていく。

 鳩山の人気凋落の最大の原因は、大事なことを何も決められない優柔不断ぶりにある。それは見ているだけでイライラしてきて、「どっちでもいいから早く決めろよ!」といいたくなるくらいひどい。

 結局、暫定税率と子ども手当については、なんとかギリギリの決断を下したが、米軍普天間基地の移設に関しては、ついに何も決められず全部放り出して、コペンハーゲンのCOP15に出かけていってしまった。

 コペンハーゲンには、アメリカのオバマ大統領もきていた。鳩山はかねて普天間基地移設の問題で、「トラスト・ミー」といってオバマの信頼をかち得ておきながら、なんの解決策も実現できなかったことについて説明したいと申し出たが、オバマ大統領の側から、そんな口先だけの男に会うのは時間のムダとニベもなく断られてしまった。鳩山は言葉の重みの大切さを知らない男だったが故に、オバマの信頼を完全に失ってしまったのだ。

超権力者として首相の上に立つ小沢一郎幹事長

 日本の総理大臣というポジションにある政治家にとっていちばん大切な信用は、超大国アメリカの首脳から得られた信用だろうが、鳩山は幸運にも初の首脳会談でオバマから得られた好意と信用を、普天間基地問題の安請け合いとその解決策放棄によってほとんど弊履(へいり)のごとく捨て去ってしまったことになる。

 鳩山はこの一連の過程で、どれほど多くのものを失ってしまったのか、これから長い時間をかけて学ばなければならないだろう(あるいは、それ以前に総理大臣のポストを失って、学ぶ必要がなくなってしまうかもしれない)。

 鳩山のもうひとつの失敗は、速断の失敗である。もう少し時間をかけて慎重に考えてから行動すればよかったのに、一挙に行動して失敗したのは温暖化問題で世界のイニシアチブを取ろうとして打ち上げた鳩山イニシアチブの失敗だ。

 鳩山は政権を取るなり国連総会に出かけていって、CO2を'20年までに25%削減('90年比)すると大風呂敷を広げ、それを「鳩山イニシアチブ」と名付けた。そして冬のCOP15では、日本が世界をリードするのだと張り切ってみせたが、現実のCOP15では、日本は世界のイニシアチブなど全くとれなかった。日本の主張は世界の多くの国々の多様な意見に埋没するだけで終わった。日本の25%削減という国家目標は、世界の先進国の中で日本だけが一方的で過大な義務を背負いこむ貧乏クジに終わっていた可能性すらあったのである。

 なぜこれほど、鳩山政権がやることなすこと看板倒れの失敗ばかりで終わっているのか。官僚を使いこなしていないからである。官僚を働かせていないからである。