「市民運動家出身」菅直人新首相に求められる「大久保利通の目」
「蟻の目」ではなく「鳥の目」が必要

 先週末から、政局の大きな転換が行われている。

 6月4日の金曜日、国会に出かけたら、参議院の本会議が民主党の議員総会のために流会。一政党の内輪の会議のために、本会議を犠牲にするなど、国会軽視も甚だしく、これ自体が許されることではない。そして、鳩山総理の突然の辞任である。

 結局は、総理の資質のない政治家がトップリーダーになった悲劇であるが、唯一評価できるのは、小沢幹事長も道連れに辞任させたことだ。

 最後になって初めて、任命権者・非任命権者という本来の建前を現実に実行したのである。これで、政治とカネの問題で批判されてきた二人のトップが背後に退いた。 

 この効果はてきめんであった。週末の各社の世論調査で、民主党の支持率は一気に回復し、調査によっては、2位の自民党をダブルスコアで引き離し、菅新首相に期待する比率も過半数を超えている。しかも、菅氏は、仙谷由人氏を官房長官に、枝野幸男氏を幹事長に起用するなど、反小沢色の濃い政権にしようとしている。

 鳩山氏が退陣演説で、小沢氏を辞任させクリーンな民主党にすると言ったことを反映させた人事である。かつて中選挙区制下で、自民党が政権を担っていたとき、派閥のたらい回しをして権力を維持したことがあった。たとえば、田中角栄が金権政治で批判されたとき、「クリーン三木」が登場して、一気に自民党の支持率を向上させた。

 今回の民主党内の政権交代劇は、このエピソードを彷彿とさせる。

 この世論の動向が続けば、来るべき参議院選挙で、民主党には順風、自民党には逆風が起こる可能性がある。自民党は執行部の刷新すらできず、その旧態依然ぶりがクローズアップされるからだ。

 しかしながら、菅新政権もまた、多くの問題をかかえている。

 第一は、小沢氏の影響力をどこまで排除できるかということである。小沢陣営を代表して代表選挙に立候補した樽床伸二氏が129票を獲得したことは、けして軽視できることではない。樽床氏を国会対策委員長に就任させることで党内結束がはかられるのか。参議院選挙後に小沢氏の逆襲が始まるのではないか。

 第二は、政策である。昨年の総選挙で国民に約束したマニフェストは随所にほころびを見せているが、これをどう修正するのか。子ども手当などのばらまき政策を続けるのかどうか。過度の社会主義的政策を変更しないのなら、鳩山政権と何ら変わらない。菅政権で、政策のどこが変わったのかを明らかにしてもらいたい。

「蟻の目」ではすぐに行き詰まる

 第三は、権力の作法についてである。菅氏は、市民運動出身で草の根民主主義の立場から、権力を監視してきた。

 したがって、野党であることがふさわしい政治家である。かつて厚生大臣だったとき、薬害エイズ問題の解決に努力して高い評価を得たが、厚生省や労働省(今は二つが一緒になって厚生労働省)のような役所は、市民の側に立つことの多い、いわば野党的官庁である。だから、菅氏のような政治家でも大臣が可能である。

 しかし、最も与党的な財務省となると、そうはいかない。専門知識の欠如ということがあるのかもしれない。財務大臣になってからは、菅氏は静かにして目立たなかった。その間に権力の作法を学んでいたら、幸いである。

 しかし、財政の立て直しをどうするのか。消費税をいつ、どのような形で増税するのか。まだ明確な方針が示されたわけではない。そしてまた、外交安全保障にしても、専門ではない。普天間移設問題をどう解決するのか、これまた市民運動家の立場のみでは難しいであろう。

 経済政策にしても、鳩山政権下の新成長戦略は、役人の作文の寄せ集めで、何をやろうとしているのか、よく分からない。どのようにして、日本を再び成長の軌道に乗せるのであろうか。

 明治の元勲、大久保利通は、自己と国家とを同一視して、鳥瞰的に国のかたちを考えてきた。国会経営には鳥の目が必要である。しかし、菅氏は、どちらかというと蟻の目タイプである。これだと早晩行き詰まる。

 私たち、新党改革は、そのような観点から、正々堂々と参議院選挙を戦っていきたい。

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